第五十八話
サノス達が訓練をしているとそこに冒険者ギルドのギルドマスターが顔を出した。
「やぁ。頑張ってるね」
「お疲れ様です」
「若いというのに感心するねぇ。君達ぐらいだと成果を求めて無茶をするもんなんだが・・・」
「自分達はまだまだ未熟だと思っていますので」
「その心意気に感銘を受けた。私も手伝ってあげよう」
「よろしいのですか?」
冒険者ギルドのギルドマスターともなれば仕事が忙しいだろう。
「私もたまには体を動かしたいときもある。それにいいストレスの発散になりそうだからね」
「そういうことでしたらお願いします」
冒険者ギルドでは一般職員とは別に元、冒険者を雇用する場合も多い。
重役ともなれば高ランク冒険者だったということも少なくない。
「遠慮は無用だ。これでも元Sランクの冒険者だからね」
「まずは俺から行くぜ!」
そう言ってジントが前に出る。
「その心意気やよし」
ギルドマスターはそう言うと細い剣を構える。
あまり見たこともない武器だがその様は歴戦の勇士を思わせる凄味があった。
ジントは勇猛果敢に突撃していく。
正面から勝負を挑んだジントに対してギルドマスターはその攻撃を全て紙一重で回避する。
それでもジントは体が動く限り剣を振るい続けた。
「ふむ。動きも単調だし振りが大きい。君はまず、基礎をしっかり固めるべきだね」
「ぜぇぜぇ。ありがとうございました」
そう言ってジントは頭を下げる。
「お金は持っているのだから剣術道場に通うといい。推薦状を後で書いてあげよう。次だ!」
「では、僕が」
そう言ってサノスは前に出る。
「君か。前に会ったときと印象がずいぶん違うな」
「恐らくお酒を飲んでいた時ですね。別人だと思っておいてもらえると」
「なるほどな。酒を飲むと性格が変わるタイプか。あまり多くは知らないがそういう人もいるだろう」
「では、いきます!」
そう言ってサノスは自分の背中に風魔法を当てて一気に加速する。
そしてギルドマスターに対して渾身の突きを放つ。
「悪くない発想だが・・・。私には悪手だね」
ギルドマスターは軽々と渾身の突きを回避しバランスを崩したサノスに軽く触れる。
それだけで、サノスの体は1回転して地面に転がされる。
「くっは・・・」
サノスは肺から一気に空気を吐き出す。
「まだまだこんなものではないだろう?」
体は痛むがまだ動ける。
サノスは気合で立ち上がり風魔法を織り交ぜながらギルドマスターに挑んだ。
だが、その結果は惨敗だった。
「魔法を織り交ぜるのはいい戦法だよ。でもね、君は魔法を使い始めてまもないだろう?魔法を使うときに魔力が駄々洩れだ。それでは熟練の魔法使いには通用しない。そのことを覚えておくように」
「ありがとうございました」
「時間がある時に私が直々に鍛えてあげよう」
どうやらギルドマスターに気に入られたようだ。




