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小人の辞  作者: EndoArisa


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蜂が窓にぶつかっている


 蜂が窓にぶつかっている。夢の光景だ。私は快晴の窓際に座ってそれを眺めている。足長蜂が、引き返せばいいものを、しきりに窓ガラスにぶつかってくる。しつこくキスをせがむ酔っ払い男みたいだ。そのまま見えない壁に沿って、右側の窓に流れていった。そちらには網戸があって、私の不安と不快は和らいだ。私は蜂が大の苦手だったので、目をそらすことができなかった。蜂は網戸につかまっていた。

 誰かがちょっと網戸を開けた。その場には誰もいなかったはずだ。外から開けたのだろうか、あるいは私が開けたのかもしれない。その拳一個ほどの隙間から、抜け目なく蜂は入りこんだ。いつもそうなのだ。夢の中で虫たちは、いつも私にとって都合の悪い動きを、私を追い詰めるような動き方をする。蜂は窓と網戸の間で暴れ回ったのち、網戸の内側に落ち着いた。我が物顔でじっとしているので、ビクビクしている私の方が部外者のようだった。

 いつの間にか外の窓にもう一匹、蜂が飛んでいた。最初と同じように、やみくもに窓にぶつかっていた。私は足長蜂の方をどうにかしようと思って、そちらの窓を少し開けた。視界の端に映る蜂も網戸に止まる蜂も不愉快で堪らず、私の神経は削れていった。力いっぱい窓を閉めると、網戸の蜂は驚いてブンブン飛び回ったが、隙間から出て行ってはくれなかった。出かかった瞬間もあったのに、思い出したかのように網戸に戻ったのだった。

 私は何度も窓を開閉して、そのたびに大きな音が鳴った。きっと外から見れば、頭がどうかしてしまったように映ったことだろう。だが気にしていられなかった。足長蜂は一向に出ていってくれなかったし、窓にぶつかる蜂も、いつの間にか増えていた。中には冗談みたいに大きなスズメバチもいた。コレが何かの拍子に網戸の方に行ったらと思うと、気が気でなかった。

 また窓を開けた時、殺虫剤のことが頭をよぎった。そういえば手のすぐ届くところに置いてあることを思い出したのだ。だが、その殺虫剤がよくあるハエとかゴキブリ用のものなのを思い出して、私は落胆した。結局こうするほかないんだろうなぁ、そう思いながら、もう一度窓を閉めた。ゴォン、と重い音が鳴り、窓と網戸が震えた。驚いた足長蜂が飛び回ったが、すぐ網戸にくっついた。

 もう一方の窓を見ると、相変わらず大小さまざまな蜂が窓に体当たりしてコツコツ鳴っていた。蜂のゾッとするような羽音が、窓越しで微かに聞こえていた。


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