表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小人の辞  作者: EndoArisa


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/30

運命は躾をしない


 例えば、こんな話がある――

 男は運命に抗って生きてきた。どれほど運命に(もてあそ)ばれようと、想定外のトラブルや破綻、想像以上の困難や失敗が立ちはだかったときこそ、彼は尻込みするのではなく一層躍起になって運命に噛みついてきた。運命の女神が彼を小突こうとして迂闊にも差し出した手に、腕ごと噛みちぎらんばかりに飛びかかっていったのだった。猟犬がヒグマに食らいつくような勢いで彼は強大な運命と格闘してきた、そしていつも勝利してきた。やっつけられた運命の女神がそそくさと立ち去っていくのを見ると、肩で息をしながらも彼は達成感で満たされるのだった。


 運命の女神は人間で遊ぶのが好きだった。暇な時間はいつもそうやって、壊してしまわない程度に人間を弄んだ。その日も女神は、男がこちらをじっと見つめてくるので遊んでやることにした。いい反応をしてくれるので、彼のことは気に入っていた。いつものように手を差し出してやると、男はものすごい勢いで跳ね回り、どうにか彼女の手にかみつこうとした。女神はペットの小型犬と戯れる飼い主の気持ちだった。

 指を男の口に近づけて嚙みつこうとしたところでサッと引っこめる、その隙に空いている方の手で男の体をつつく、男が今度はそちらの手に嚙みつこうとする……そうやってからかっているうちに、とうとう男は女神の手に噛みついた。歯が深々と肉に刺さり、血が流れていた。しかし、女神は楽しそうだった。楽しそうにケタケタと笑って、男の頭や首筋を撫でまわすだけだった。

 そうしているうちに、仕事の連絡が来た。戯れでは済まない、人間を完全に破滅させる仕事だ。人間をなんの猶予も慈悲もなく、不幸な運命に突き落とさねばならない。今日は何をしなければならないのか、老人を交通事故に遭わせるのか、若い女を通り魔に遭遇させるのか、子供をガラスに突っこませるのか。女神は憂鬱な気持ちになった。

 運命の女神はすっかり興ざめして男を振り払い、急いでその場を立ち去った。

――そんなお話。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ