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すべてに絶望した俺は転校して幼馴染の前から姿を消した。  作者: 孤独な蛇


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29話 絶たれる想い

「は?えっ……てん、こう……?」


 大和が転校した……?

 一体……どうなってるの……?


「それってどういうこと!?なんで大和が急に転校なんて!?」

「し、知らないよ!私たちもさっき噂になっているのを聞いたばかりだし」


 なんで……?

 なにがどうなってるの!?


 クラスメイト達に詳細なことを聞いてもこれ以上の情報はない。


 私は教室を飛び出して大和のクラスに向かった。

 そこでも大和のことが話題になっていた。


 そのクラスの人たちに大和のことを訪ねても、答えは同じで事情はよく知らないようだった。


「徹!や、大和が転校したって!」


 廊下を歩いていた徹を見つけて彼に詰め寄った。


「あ、あぁ……そうみたい、だな」

「なにがどうなってるの!? 私なにも聞いてないよ!」

「俺も……朝に担任からそう聞いて、初めて知ったから……」

「転校したっていうのは本当ってこと!?」

「先生がそう言ってるんだから……そうなんだろうな」

「そ、そんな……」


 あまりに突然のことで理解が追いつかない。


「な、なんで!?どうして急に転校!?なにも聞いてないのに!?」

「だから……俺だってなにも聞いてなくて……」


 徹は俯いていて、歯切れの悪い返答ばかりに聞こえた。


「なんで急にこんなことになってるのよ!説明してよ!」

「お、俺だって知らないって言ってるだろうが!なんで俺に強く当たってくるんだよ!」

「だって約束したじゃない!全部解決してくれるって!だからフォークダンスまで踊ったのに!」


 昼休みで沢山の生徒たちが行き交う廊下の中央で、人目も憚らなずに涙を流しながら叫んだ。


「こ、これからどうにかしようと思ってたんだよ!それなのに大和の方からいなくなったんだから仕方ないだろうが!」


 約束したのに……。

 納得がいかないことばかり……。


「もういいよ!!」


 私と徹の激しい口論を多くの生徒たちが距離を置いて傍観していた。

 生徒会役員である私たちが大っぴらに喧嘩をするなんてあってはならないこと。

 でも、今の私はそんなことを気にしている余裕は無かった。


 急いで職員室へ向かい、大和のクラスの担任教師に経緯を聞いたけれど。


「牧野大和が転校したのは本当だ。理由などはプライバシーなことだから教えるわけにはいかない」

「そんな……」


 わかったことは大和が本当に転校してしまって、もうこの学校の生徒ではないということ。


「あの!大和の転校先は!?」

「だからそれは教えらえれないと言っているだろう。もうすぐ昼休みも終わるし、早く教室に戻りなさい」


 結局何も教えてもらえなかった。

 先生の立場からすればそれは当然の対応だった。

 しかし平常心ではない私は居ても立ってもいられない。


「やまと……大和!」


 下駄箱で靴を履き替えることもなく私は駆け出した。

 教室に鞄を置きっぱなしで、午後からの授業もどうでもよくて。


「宮野さん、待ちなさい!」


 正門を出ようとした時、後方から声がした。

 私は振り返らない。

 誰の呼びかけであろうと今は構っている余裕は無い。


「止まりなさい、宮野さん!」


 しかし私は腕を掴まれて行く手を阻まれる。


「離してください!遠野先生、離して!」」

「落ち着きなさい!」


 呼び止めてきたのは教頭である遠野先生だった

 さっき職員室での私の言動を見て追いかけてきたのだろう。


「大和が!大和が!!」

「牧野大和くんはすでに転校手続きを済ませています!」

「だから大和に直接会いに行くんです!離して!」

「ですから!もう、彼は……」


 口籠りながらも私の腕を離さない遠野先生の制止をなんとか振り払いたかった。


「牧野大和くんの今の状況についてはお話することはできません。ですが……彼のこれまでの経緯については……」


 遠野先生は躊躇いながらもゆっくりと言葉を続けた。


「あなたは知る権利があると……私は考えます」


 大和の、これまでの経緯……?


「宮野さん……」


 冷静ではなかったけれど、遠野先生の声は不思議と心に響いた。


「彼は……牧野大和くんは……」


 昼休みの終わりを知らせるチャイムが学校中に鳴り響く中、遠野先生は語りだした。



 ♢


 

 初めて学校を抜け出してサボった。


 有名な進学校の生徒なのに……。

 生徒会長なのに……。


 関係ない。

 どうでもいい。


 そんなことは大和のことに比べたら、何の意味もないこと。


「牧野大和くんは……もうこの地域にはいません」


 大和のことについて語りだした遠野先生に声を荒げて質問をした。


 大和はもういない!?

 引っ越したってこと!?

 なんで転校なんてことになったの!?

 家庭の事情!?


 取り乱す私を尻目に先生は大和について僅かな情報しか言ってくれなかった。


「教えて先生!大和は今どこに!?一体なにが!?」

「宮野さん、教師の私がこれ以上は言えません。本来ならば生徒の個人情報を本人の同意なしに勝手に公開するなどあってはならないこと。ですから……これを」


 遠野先生は私に1枚のメモを手渡しきた。

 そこには聞き覚えの無いスーパーマーケットの店名と住所などが書かれている。


「そこに行けば……なにか彼に関するヒントが見つかるかもしれません」


 私はその紙切れを握りしめて学校の正門を出た。

 午後の授業を堂々とサボる私に遠野先生はなにも言わずに私の後姿を見送っていた。


 なぜ先生がこのメモを手渡してきたのか、よくわからない。

 今はとにかく大和のことしか頭になかった。



 ♢



 先生のメモに書かれていた住所は後回しにして、私は大和の自宅へ向かった。

 彼の部屋の前に到着してインターフォンを鳴らしたけど、前に訪れた時と同じで返事はない。


「そ、そんな……」


 よく見ると表札もない。


 もうすでに引っ越してしまった……!?

 ここにはいないということ……!?


「うそ……どうしたら……」


 握りこんだ手の中にあるさっき渡されたメモ。

 手掛かりはもうこれしかない。


 そこに書かれている住所の地域はほとんど行ったことがない場所だった。

 でも遠いところではない。

 電車に乗ればそこまで時間は掛からない。


 踵を返して急いで駅へと向かった。


 電車に乗って十数分……その時間がとても長く感じた。 


「早く着いて……」


 もしかして、今向かっているその場所に大和がいるの……?

 その場所が彼とどういう関係があるのかわからない私は淡い期待を持ちながら様々な思考を巡らせる。


「大和……大和……」


 目的の駅で電車を降りた。

 メモに書いてある通りの道のりを数分無我夢中で走った。


「ここに……大和がいる?」


 そしてたどり着いたスーパーマーケット。

 はやる気持ちが抑えなれない私は店内に駆け込んで彼を探す。


「どこ、大和……」


 彼はこんな場所にいるの?

 そんあ疑問はあるけれど、もうこの場所しか手がかりはない。

 あまり広くはない店内を隈なく見て回ったけど、大和の姿はなかった。


「いない……いないじゃない!」


 不満が漏れる。


 家にもいない……。

 学校にもいない……。

 ここにもいない……。


 いったい……どこへ行っちゃったの……?


「置いてかないでよ……」


 周囲にはスーパーの従業員やお客さんがいる。

 それなのに人目も憚られずに私は泣いた。


「どうしたの?大丈夫?」


 そんな私に声を掛けてきてくれた若い女性。


「……うっ…………」


 これ以上癇癪を起さないように感情を抑えるのに必死だった私は返事ができない。


「大丈夫よ、落ち着いて」


 私の震える肩にそっと手を置いたその人はとても優しい声だった。


「あ、あの……わ、わた、し……」


 涙で視界が歪む。


「うん、ちょっと落ち着ける所に行こうね」


 彼女はこれ以上はなにも聞かずに私に寄り添ってくれた。


 なぜこの人がここにいるのか、わからなかったけど。

 久しぶりに感じた声や笑顔。


「宮野さん、久しぶりだね」


 彼女の……速水先輩の優しさがとても温かかった。

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― 新着の感想 ―
ちょっと読み返してみたが速水パイセンは葵に好意は抱いてないような感じだし、修羅場ぽいな。 葵は実際、大和しか見てなくて他の人間全員を見てない上に見ていたはずの大和ですらフィルター掛かった像でしか見てな…
く、くる!!
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