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青に満ちる洞窟



 私は美しい海を横目にサンダルを持って海岸の砂浜を裸足で歩いていた……打ち寄せる波がひんやりとしていて気持ちがいい。

 心地よい風に帽子を取られそうになったので急いでつばの部分を押さえる。

 ああ、早朝の海って綺麗だ……まるで心が洗われるよう。



 「青藍……!!今の君、とっても素敵だよ!!なびく銀髪、美しい青い瞳!!まるで海に輝く宝石のようだ……ああっ、この瞬間を写真に収めたい!!」

 「君、どういう思考回路してるの!?私はただ歩いてるだけだから!!そんな恥ずかしい事言わないでくれる!?」



 早く目覚めてしまった私は、早朝の少し陽が覗かせている海に来ていた。

 声のする方を見るとそこには顔を紅潮させているリオールがいる――木の物陰からこちらを見ている姿は不審者そのものだ。

 呆れた目でリオールを見ていると、いつの間にか私の隣に来ていて腰に手を回してきて密着してくる。


 何とか離れようと苦戦している私と何が何でも離れないリオール――傍から見ると、嫌がる女を逃がさない様に捕まえている男のように見えるのかもしれない。



 その様子をじっと見ている男達の存在に私達は気づくことはできなかった。






 休暇を貰って4日が経過した……相変わらず、私に所にはリオールが訪ねてくる。

 私はもう穏やかな休日を過ごすことを諦めていた。



 「青藍、今日は何をしようか??海で遊ぶかお買い物……それとも近くの孤島まで船で行って探検する??」

 「孤島??そんなのあったっけ」

 「島の裏側の方にあるんだ。珍しい洞窟があってね、海の青さが反射して綺麗って有名なんだよ」

 「へぇ~、おもしろそうね」

 「じゃあ、島探検に行こうか」



 孤島がある事は知らなかった……だが、そこも有名な観光スポットで人気のようだ。

 私達は早速、孤島に行く為の船が出ている船着き場へ向かうことにした。


 船には他の客がすでに乗り込んでいて、あと数分で船が出るようだ。

 私達は慌てて船に乗り込み、2階に上がって海が見える場所に立つと船員の大きな声が聞こえてくる。



 「それでは出港致しますー。駆け込みは危険ですので、これ以降の乗船はお控えください」

 「ま、待ってくれ!!俺達も乗るぞ!!」

 「あ、ちょっと!!危険ですので次回の船に乗ってください!!」



 出向の合図がされたと思ったら、遅れてきた客が案内人の静止を聞かずに無理矢理船に乗ってきた。

 3人の男達はちらりと2階にいた私を数秒見た後、そそくさと船内に入っていく……こっちを見ていたのは気のせいかな??



 「青藍、見てごらん。あそこにイルカがいるよ」

 「え??ああ、ホントだ。沢山いるね……それから、リオール」

 「なんだい??」

 「いつもいつも近いのよ!!腰に腕を回すな!!」

 「いいじゃないか。ほら、上にはカモメが飛んでるね」



 綺麗な景色に思わず手すりを掴んで身を乗り出していると、隣にいるリオールがぴったりと体を寄せてくる。

 何度言っても離してくれなかったので、私はずっと彼の腕をつねったまま話を聞いていた。

 そんな状態で10分ほど経つと船は小さな島に到着した。



 「船は10分間隔で運航していますが、最終便は17時となっております!!それを逃すと明日までこの島で待っていただくことになってしまいますのでご注意ください!!」



 「17時……あと2時間もあるし、余裕で周れるかな」

 「そこまで大きな島ではないしゆっくり歩いてみても間に合うはずだよ」

 「うん、じゃあ行こう」



 私達は他の観光客と同じように島を歩いていく。

 南国の花が沢山咲いている庭園、小さなカフェ、そして一番の見どころだという洞窟の中へと入る。

 入り組んだ道を進んでいくと、そこは海の浸食によってできた広い空間が広がっていた……太陽の光が青い海を照らしていて洞窟の中は神秘的な空間になっていた。



 「わぁ……すごい綺麗だ」

 「うん、とても美しいね。確か、夕方になると潮が満ちてこの洞窟の中は海水で一杯になるらしいよ。そして朝になると潮が引いていくんだって」



 澄み渡る青い海に見惚れていると、リオールが潮の満ち引きについて教えてくれた。

 相変わらず肩を抱かれて密着してきているが、もうめんどくさいからほっとこ。

 しばらくその景色を目に焼き付けて、私達は洞窟を出るために再び入り組んだ道を歩いていく。

 すると、洞窟の出口に3人の男達が私達を待ち構えていたように立っている――先ほど慌てて乗船していた3人組だ。



 「僕達に何かご用ですか??」

 「その女性をこちらに渡してもらおうか」

 「……なぜ??」

 「いいから早く彼女を解放しろ!!この貴族のボンボンが!!」

 「え??解放??あの、何か勘違いをしていませんか??」



 男達は少し興奮気味に私を解放するように言ってくる。

 私もリオールも訳が分からず、首をかしげていると男達は後ろ手に隠していた木の棒を構えた。

 リオールは咄嗟に私を背に庇い、男達を睨みつける。



 「大人しくいう事を聞かないのなら、力づくでも……!!」

 「ちょっと!!誤解ですよ!?私は別にこいつに捕らわれている訳じゃないです!!」

 「青藍、洞窟の中に逃げるよ。入り組んだ道を利用して撒こう」

 「いや、誤解を解けばいいじゃない!!……ちょっと、リオール!?」

 「追え!!逃がすなよ!!」



 男達の間を抜けて逃げる事もできず、私達の後ろには洞窟へ戻る道しかなかった。

 リオールに手を引かれ、私達は再び洞窟の中へと走る。

 洞窟には私達と男達の足音が響き渡っていた。



 「っ!!いったぁー」

 「青藍!?大丈夫??……ほら、背中に乗って」

 「うぐぐ……なんでこんなことにいい!!」

 「しっ!!見つかっちゃうよ!!」



 洞窟は薄暗くテコボコした地面につまずいて、私は転んでしまった。

 リオールが私の前でしゃがんだんで、仕方なくその広い背中に乗る。


 その背中はいつの間にか大きくなっていてびっくりした――子供の時は私がぴーぴー泣いてるリオールを背負ってたのに。


 のんきにそんな事を考えていると洞窟の奥の青い光が見えてきて、行き止まりにたどり着いた。

 リオールは周りを見渡すと大きな岩の後ろへと隠れ、私を抱きしめると唇に人差し指を当ててくる。



 「いい子だから、静かにしてね??」

 「うん……」



 身を潜めて入れると、2人の男がやってきた……が、私達が隠れている岩まではやってこなかった。

 しばらくすると、男達は来た道を戻っていき洞窟の中は静寂に包まれる。



 「なんとかやり過ごせたかな……でも、私を解放しろってどういうこと??」

 「わからないよ。まるで僕が青藍を誘拐しているみたいな言い方だったね」

 「どうしてそう思ったんだか――痛いっ!!……うわー、足がでろでろ」

 「さっき盛大に転んでたね。見せて」

 「平気だよ。これぐらいなら自分で治せるから」



 私は改めて怪我をした足を見る……広範囲にすり傷ができていて血があふれ出ている。

 どうして怪我って見る前は全然痛くないのに、しっかり見ちゃうとすごく痛く感じるんだろう……。

 ようやくどれほどの怪我をしていたのか認識した事で、凄まじい痛みと血の気が引いていく感覚がする。



 「そっか、青藍はほとんどの魔法は苦手だけど治癒の魔法は得意だったよね」

 「他の魔法はポンコツだけど、こういう地味ーな魔法は得意なの」

 「地味なんかじゃないよ。青藍の治癒魔法の光は暖かくて優しくて……とても気持ちいいんだから」

 「そんなに褒めても何も出ないよ……ん??気持ちいいってなに!?気持ち悪いこと言わないでくれない!?」



 自分の足に手を当てると、光が現れてあっという間に傷は治った。

 その光を見つめながらリオールは顔を赤らめて、その目はトロンとしている。

 気持ちいい、と言われて寒気がした。


 傷を治して一安心したところで、足元に冷たい感覚がした。

 ふと足元を見ると、足首のところまで海水が入ってきている。



 「……ねぇ、リオール。たしかここって満ち潮だかなんだかになるんだっけ??」

 「そうだよ。そろそろ満ち潮になる時間だ」

 「……あとさ、来た道に結構水が入ってきてるんだけど……これって私達閉じ込められてない??」

 「かもね。ここまでの道は少し上り坂になっていたから、下り坂の道はもう海水が満ちていて通れないだろうね」



 この洞窟は満ち潮の影響で、夜になると完全に海水に満たされるらしい。

 そして、来た道にはすでに海水が入り込み、泳いで行くにしろ息が続かないだろう。



 「え、もしかして私達……閉じ込められちゃったの!?」

 「そのようだね……困ったな」



 私は混乱して頭を抱えた……時計を見るとすでに17時――船の最終便は出てしまって、もうこの島には誰もいないかもしれない。

 そうしているうちにも海水は膝の下あたりまで入ってきていた……。




青い洞窟にいってみたい

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