同期する秒針
その日の夜親が帰ってきた。二人とも僕たち兄妹を抱きしめまるで何もなかったような温かさを装った晩餐が始まる。ぼくにとってはただの苦痛でしかなかった。そう認識して味のしない料理を食べて自室に戻った。その夜時計の針がずっと頭に響く。僕は今日の友人との会話を思い出した。ああそうか期待が捨てきれてないんだ。その結論が一番すっと胸に落ちていった。眠れなかったので台所で水を飲もうと思ったが親の話し声が聞こえた。それは衝撃的なものだった。妹がもっと遠くの田舎に入院しなければいけなくなった。そして僕を同行させるかという会話だった。僕はすぐさま上に行き自室のドアを閉めうずくるまった。さっきの話は決定だった。両親は僕の人生を何だと思ってるのだろうか。居ても立っても居られなかった。時計の針がずっと痛いほど鳴り響き僕の心臓はそれに同期するような速さで打っていた。もっと田舎に行くと完全にあそこには行けなくなる。だったら今…決めなければ。ふと友人が今日帰り際に僕に向かって叫んだことを思い出した。「なあ、もしお前がそんなことに悩んでるんだったら悩むな。おまえが思ってる親との血縁関係っていうのはな、そんな拘束力はない!自分がしたいようにしろ!」僕の胸にこだますると同時に覚悟が決まった。僕はすぐにお金、洋服をカバンに徐々に詰めていった。だが僕は少し不安だった。だから辛うじて教科書何冊も買わずに貯めたお金で買った携帯を使い祖母と妹が安全に入れるところをメモして僕が子供の頃母にもらった唯一の大きなお小遣い。元々祖母が倒れたら病院に払うお金としてもっていたお金を祖母の部屋に忍び込みテーブルに置いた。耳を澄まし両親が自室に向かったのを確認するとすぐさま家のドアを開けて走った。走って走った。僕は不思議だった。こんなに簡単なことだったんだ。しばらくして追いかけてこないのを確認して僕は携帯で住所を調べてそこまでの道のりを調べた。ここは田舎でもまだバスがある。そうしてバスを待ち、乗ってゆらゆらとボーっとする。なぜかとても高揚している。ああこんなに簡単だったんだ。この頃の僕は現実から目をそらし自由を手に入れた.....気になっていたのだ。そうして朝までバスに揺られ電車に乗り何回も繰り返して着いた東京。僕は初めて見る世界にとてもびっくりした。朝日に反射する高層ビル。僕があこがれてきた全てがあるように感じた。そう思うと落ち着かなくなってきた。僕が場違いな気がして。周りが僕を見てるような不安が肌にこびりついていく感覚。そうして住所を特定したあと僕は深刻な問題に気付いた。そうだそうげん。さんに返事を書いてないんだ。僕は頭を抱えた。なんでそんな馬鹿なことをしたのだろう。そう立ち往生してたらある優しそうな男性が驚いた様子で声をかけてきた。「君もしかしてルイ君かい?」




