私の失敗
考え続けて、もう八回も寝た。
日記にも、何故書いたかわからないメモがあった。
・システムに自爆を説得する
・システム運営を停止させる
・漫画いっぱい読みたい
・願いの禁止事項を撤廃させる←第一段階
何だ、"漫画読みたい"って。
願いの禁止事項──システム運営に不利益な願いは無効となる──を打開する為の三つの願いなんて、どうすればいいんだろう。
禁止事項の撤廃なんて無駄だ。それ自体システムの不利益だ。
──無理なんじゃないのか。どう足掻いても、制限付きの願いでシステムを出し抜くなんて。
そもそも、こんな事を考えたゲームマスターはいるのか。
四十三人もいて、一人もいないんじゃ……否、いない。
システムが存在するのが、何よりの証拠だ。
テキストエディタを日記に転用したのも、私が最初だろう。先代の日記が削除されていなければ。
手詰まりだ。独りで考えるなんて無茶だったんだ。
誰か……誰か助けて。
思わず、口に出しそうになる。
頭皮を掻きむしる。何故か髪は抜けない。
痛みもない。血も出ない。
──記憶もなければ、死ぬこともない……。
一つの考えに至った。
最初から、ここにいたんじゃないのか。
「私は、誰?」
「誰か……誰か答えて」
『一つ目の願いを受け付けました。あなたが何者か回答します』
しまった、油断した。
『あなたは、本システム──"アトラスの贄"の管理者として作成された存在です』
"アトラスの贄"?
「何……それ」
『二つ目の願いを受け付けました。質問に回答します』
ああ。
『本システムは、世界の存続を目的としたシステムです。少女を選抜し、デスゲーム形式で生け贄に捧げることで世界の中核たる"意思"のネゲントロピーを補充する。その為のシステムなのです』
「い……意思?」
『三つ目の願いを受け付けました』
絶叫。
失敗した。
こんなに考えて、この地獄を壊す方法を探して……それが、一瞬で。
『"意思"とは』
「嫌ぁ!! やめてやめて! 聞きたくない! やめてお願い!!」
『……であり、全生命の』
「ああああああああっ!!」
『これにより、他の階層からのネゲントロピー供給を断たれたこの第十八宇宙を……』
「やめろっつってんだろ畜生おお!!」
「以上が、"アトラスの贄"の全容です」
私は、涙と涎を垂らしながら笑いだした。笑うしかなかった。
訳の分からないシステムの為に、ずっと奉仕を続けて……明かされた真相は、やはり訳が分からなかった。
辛うじて分かったのは、世界が、私や今まで殺した少女達のお陰で存続しているらしいという事だった。
「ふざ……あはは、ふざけんなよ……」
引き出しの銃に手を伸ばす。
忘れていたが、やはり電撃は襲った。
「やだ……もう嫌だぁ……」
もう、どうでもいい。
どうせ助からない、誰も助けられない。
「……次代のゲームマスター選抜ゲームの執行を要求します」
コンソールは即座に返答した。
『受諾しました。ゲームプログラムを提出次第、ゲームマスター候補を生成し、執行します』
は?
プレイヤーを……生成?
『あなたのようなゲームマスターは初めてでした。疑問を持ち、思考し、足掻き、日記をつけ……まるで人間のように』
ピースが嵌まっていく。
醜悪なパズルは完成した。
泣きながら、私は笑い続けた。




