表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エリート先輩の異世界でも大魔導士【エリート】様伝説  作者: 史重
第二章 続きは異世界で待っている
24/24

各務氏 「それをチートと言うんです」と言われる

 空きましてスミマセン!!もう、タイトル詐欺にはならないと思いますので・・・よろしくお願いいたします。


 吹き飛ばされて叩き付けられた衝撃は強烈で、俺は息を求めて喘ぐ。かはかはっと咳き込んでようやく落ち着くと、スーンを見遣る。

 スーンは地面に引っ繰り返り、正しく引っ繰り返された亀のように手足を震わせている?

「ス、スーン?無事か?」

 恐る恐る声を掛けるとどうやら半分目を回しているらしいスーンが居た。

「うん。痺れてる」

 あ~、うん。そうだよね、そう見えるよ俺も。

 多分大丈夫そうなので、この衝撃の震源地を見る。結界が張られていた丸い跡に抉られた土が盛り上がるようにして寄せられている。その中心に二人は居た。

 息も絶え絶えに大の字で倒れている勝田はこれも多分心配は要らない。TNTクラスの爆発にも耐えた男だし、心配するだけ損だ。それより各務さんだ。

 目視情報と状況証拠的にあの光は各務さんに間違いないだろう。その光に絡みついていた青い火花のようなものが勝田のものだと思う。差し詰め暴走しかけた各務さんの魔力を自分の覇気で押さえようとしたんだろう。まあ、成功したかしないかはまだ判断は付かないが。

「勝田。生きてるよな?」

 倒れたまま荒い息をしている勝田に声を掛ける。各務さんに聞いても無駄だろうあの様子じゃな。

 勝田は声の出せないのか、ゆるゆると腕を上げて親指を出す。これにはホッとするが、どういう状況だったのか、聞かないと言い訳も考えられないしな。

「で?どういう状況なんだ?」

「それは私も聞きたいわね」

「!!」

 ヒュッて声が出た!漫画だけかと思った。これがタマが縮むと言う感覚なのか?心臓まで縮んだぞ。

 固まった俺には用が無いのか、その声の主がカラーストーンが装飾されたミュールで勝田の額を踏んだー!?

 踏まれた勝田が藻掻いてもびくりともしない美脚は黒の総レースの部屋着の裾から出ていて扇情的なのに、ちっとも体は熱くならず気分は南極観測隊員だ。

「様子を鑑みるに、この騒ぎの元はそこの無知蒙昧な新顔にこの武道馬鹿、よね?」

 よね?と言う所でくるりと笑みを湛えられた迫力のある美貌がこちらを向いた。いつの間にか俺に取り縋っていたスーン共々首が千切れるくらい上下する。スーンが小さく『ちびった』と言う声にも返すことも出来やしない。

「わかったわ。貴方たち私の部屋にいらっしゃい。

 お話しましょう(・・・・・・・)?」

 くいくいと指を差し、差された二人は何処からか現れた男たちに担がれ運ばれていく。

「勿論、貴方もよ精霊王の友。証人が要るわ」

 あ、俺もちょっとちびっちゃった。




 これがスイートルームかあと感慨に耽ることも出来ずに直立不動。

 土足で立つのが恐ろしいくらいの高価な絨毯が敷かれている床には、このフロアから俺とスーンが片足ずつ持って引き摺って来た勝田が横たわり、現場から引き続いてアマンダさんの靴の背乗せと化している。許せ勝田。俺は俺が可愛い。スーンも同意と頷いている。

 そしてわれらが各務さんはと言えば、未だに忘我の境地で立ち尽くし、その手には聞くのが恐ろしいが抜き身の刀を下げている。

 刀ってなんだよ。もうアレか?チートって奴か?なんでもありの反則的なアレなのか?

 各務さんがこの世界に来てまだそれほど日数も経っていないし、そもそも膨大な魔力の始末に困ってここまで来たのに自分で解決したのか?

 刀も良く見れば刀身はやや反りの強い日本刀で波紋は芸術的に美しい。岩に叩き付けたら曲がるどころかすっぱり切り通せそうな凄みを持ってる。刀身彫りには炎を象った物が彫られている。鍔は剣に護られる桜。刀剣美術に明るくなくてもその精緻な美しさには魅了される。そんな刀を何故持っているんですかね各務さん。そしてスーン曰くなんでその刀には貴方の魔力が纏わり付いているんでしょうかね?

「それで?どうしたらああなったの?」

 ぐっとアマンダさんの靴先が勝田の後頭部に減り込む。毛足の長い絨毯に埋められた勝田が何かを訴えて藻掻くがぴくりとも足は動かせないでいる。

「貴方は見ていた?」

 こちらにお鉢が回って来た!見ていたが何故ああなったかは分からなかったという説明をしどろもどろにする。スーンはただの首振り人形だ。

「そ・・う。仕方が無いわねえ。誰も答えられないみたいねエ」

 残念そうに柳眉を寄せるけど、その美しい御身足さえどけて戴ければ勝田が説明できると思うんですけれど~って、迫田!そこで覗いてないで助けて?お願いします!

 俺の必死の助けてアピールに迫田がやれやれと首を振る。が、助けには入ってくれるようだ。

「アマンダさん。この場で説明できるのは勝田君だけみたいだから、勝田君に事情を聴いてみません?」

「あら、本当にこの子たちは駄目ねエ。

 ミエが居なきゃ消し炭にしていたところよ。

 商人は利益が出れば(おもね)ってくるけれど侮られたり借りを作っちゃお終いよ。いくら私でも彼等に借りを作るのは困るのよ、覚えてい於いてね」

 迫田の言葉にアマンダさんは驚くほどあっさりと引いた。それはいつもの行動より俺たちに対しての恣意的なモノを感じる。迫田は寸の間固まると深々とアマンダさんに頭を下げた。

「ありがとうアマンダさん。みんなには私から伝えておきます。

 取り敢えず勝田君、生きてる?」

 身体を麻痺させ始めていた勝田に迫田は声を掛ける。その頭にはもうアマンダさんの圧力は消えているのに倒れたままだ。そこへ無音でアマンダさんの振り下ろしが入った。

「うごおおお?!」

 苦鳴を上げて勝田が転がり回る。アレは痛い。しかも肺の裏だから息も止まったんじゃないか?

「情けないわよ剣聖。さっさと起きなさい」

 いや、アレは昇天レベルですよ?何言ってるのか理解できない。

「い、痛くない。痛くない」

 掠れた声で勝田が何やら呪文を唱えている。大量の脂汗が蹲った床に落ちているぞ?大丈夫か。

 必死に立ち直ろうとしている勝田の顎が掴まれる。

「説明しなさい剣聖」

 息を整えるのに四苦八苦している勝田に容赦無いお言葉。ノーマルな俺には縮み上がるのが精々だ。肉体論と精神論が同意語な武道家の勝田は知らんが。

「えんがちょ?えんがちょ?」

 スーン・・声量は抑えてくれよ。精霊王とは契約と同時に繋がって(・・・・)いるからこそだが、ここは黙っていて欲しかった。剣聖の本気の『睨み』が痛い。まあ、変態=えんがちょと教えたのは俺だが。

「ふうっ。参った」

 漸く落ち着いたのか勝田が起き上がる。その間もアマンダさん殺人的な視線が痛いが、妙に胆の座っている奴だから(おもむろ)に水差しの水を飲んでいる。

「剣聖。状況を説明してくれるかしら?」

 質問と言う名の糾弾。それ位の力のこもった声に、勝田はやれやれと口を開いた。

「前日に各務さんから精神的なモノに左右されるような巨大(おお)きな力がどういうものなのか直接感じてみたいと言われたんだ」

 アマンダさんの眉が跳ね上がる。迫田が勝田の言に息を呑んで目を瞠っている。

「それがどういう意味だと知っていて了承し、実行したの?」

 処刑の命令書に自分から『諾』のサインをしやがった。俺は鳥肌が立つ思いで勝田を止めようか迷った。

「そんな自爆コースは御免ですよ。

 各務さんが今どういう状況に居るかは俺にも分かっています。

 いつ爆発してもおかしく無い状態で無遠慮に触ってしまったらどうなるかぐらい知っています」

 真摯な表情で勝田がアマンダさんを見返す。

「先ず、今の各務さんは体中を巡る血管の様な魔力の循環組織が上手に機能していない状態で、意識外でどんどん魔力を生成し溜めこんでいる状態だという事をレクチャーしました」

 これにはうんうんと全員が頷く。

 今の各務さんは見たことも触ったことも無い魔力が有ると、まるで病名を聞かされるように言われた状態で、具体的な、魔力やその循環させる技術などの伝達が成されていなかった状態だ。

 どうせ王都には思わず早く行けることになって、詳しくは専門家に聞いて貰えばと安易に考えてその問題は後回しにしていた。

 日々異世界に来たストレスと各務さん自身が持つ葛藤に各務さんは自分が人を巻き込むほどの大きな爆弾を抱えていることへの不安要素のストレスに晒されてきた。

 それは俺たちが敢えて見ないようにしていた案件だ。

 それがここに来てストレスによる感情の高揚や暴発で力を使ったら?と言う恐怖から、各務さんは勝田を頼ったのだと言う。

 なぜ勝田なのか。実は各務さんは受験期に気分転換になる上に集中力が上がることを期待して父親から合気道を習わされていたらしく、武道が精神修養に効果があると思い立ったらしい。

「一応スールに結界を頼んで、やったことと言えば素振りと黙想ぐらいなもんで、まさかあんなことになるとは思わなかった。

 感情のセーブを主目的に素振りで無心になることを誘導して、黙想で集中力をという方針で始めた」

 勝田は淡々と事実だけを語った。

 アマンダさんは穿った目をしていたが、底に嘘はない事を呑み込んだのか無言になっている。

「汗を拭いて二人で向き合って座禅をして黙想を始めて少し経ったときに、目の前の各務さんから魔力の放出がいきなり始まったんだ。

 咄嗟に抑えようとしたけれどもう既に臨界まで達しているようで、『覇気』をガス欠になるまで打って縛ろうとしたがアレが限界だった。

 その最中(さなか)に魔力の全てが(こご)りうねる様に生きた心地がしなかった。

 そしてその中心が各務さんだった」

 勝田は各務さんを見遣りそう言うと沈黙してしまった。勝田が言えるすべての事だったのだろう。

 全員の視線が各務さんに集まる。

 各務さんはただ茫然と手の中の抜き身の刀を見ていて、俺たちの事は眼中にないようだった。

 アマンダさんはつかつかと各務さんに歩み寄っていきなりその頬を音高く売った。

「ひゃっ」

 迫田が軽く飛びあがって悲鳴を上げる。

 俺たちと言えば情けなくも揃いも揃ってフリーズ状態だ。

「カガミ!いつまでボケているの。

 いい加減戻ってらっしゃい」

 ジンジンと言う音がしそうなほどに赤くなった頬を、各務さんは空いた手で押さえる。その視線の焦点がやがて目前のアマンダさんに合うと、きょろきょろと周囲を見回し俺たちが揃っていることにぎょっとしたように身を竦ませた。

「こ・・こは?」

 いつから意識が飛んでいたのか、各務さんは室内に、見知らぬ部屋にいることに心底驚いている。

「貴方がヤラカシタ事の重大さは後で精霊王にでもお尋きなさい。

 いまはそれよ、その剣はどうしたの?覚えていることを話して頂戴」

 あ、アマンダさんが譲歩した。それ位あれはやばい物なのか?みんなの視線も各務さんの手に集まった。

「剣?え?あ・・・これは?もしかしてあの時の?」

 剣と言われて初めて自分が刀を持っていることに気が付いたのか、狼狽え何か思い当たることがあるのか言い淀んだ。

「あの時って?」

 癇症にアマンダさんが続きを促すと、心許無さそうな顔をした(初めて見た!)各務さんが自信無さげに語り始めた。

「勝田君に頼んで、自分の中にある魔力というものとどう向き合うべきなのか知りたくて・・・。迷惑を掛けたようで申し訳ない」

 一息吐き続ける。

「素振りは授業以来で久し振りだったけれど、その内無心になっていって身の内の渦巻く何かの片鱗が見えたような気がした。それが何かを追い求め過ぎては不味いかもしれないと、意識を取り戻そうとしたんだ。

 胡坐を掻いて汗が引き息も整った頃に、ふと所謂丹田と呼ばれるヘソの辺りから何かが膨張してくるような気配がした。

 吹き上がる炎が見えた。その中を規則正しい槌音も聞いた。目を瞑っているのに幻覚と幻聴に私はどうすることも出来ずに支配されていた。

 それからは朧気に右手に何かが凝る感触がして、桜の匂いを感じたら記憶が吹っ飛んでしまったんだ」

 刀の柄を握りしめたまま、各務さんはそこまで語った。

「・・・その剣を望んだの?」

 アマンダさんは各務さんを伺うように問いかけた。

 各務さんは(かぶり)を振って、答える。

「その剣は何かを貴方に求めた?」

 不思議な問いに各務さんだけでなく皆の視線がアマンダさんに集まる。

 そんな視線を煩わしそうに撥ね退け、アマンダさんはわしわしと自分の頭を掻き毟って咆哮した。

「呆れた!呆れた!呆れた!この男は何なの?

 なあにも知らない甘ちゃんなのにこんな大技やってのける?冗談じゃないわ!」

 もしかして、あれですか?例のチートって奴ですかい?そりゃあやってらんないね俺も。激しく同意するわ。

「あの・・・どういうことなんだろうか?」

 あ~、うん。知らないもんね?仕方ないんだけど、俺の異世界でのキャリア(?)は何だったのか。勝手にライバル視して勝手に自爆していった各務さんの同期達(複数とか・・・)の姿が今現在の俺だ。

 勝田たちも苦笑さえ思い出せない顔色をしている。

 アマンダさんはそれ以上何かを言うのも腹立たしいのか、勢いのままソファにダイブして物理的に口を閉じた。

「あ~、誠二君。?」

 俺っすか?やさぐれることも許されねえっすか?

「各務さん」

「はい」

「それをチートと言うんです」

 それしか言えねえ。

 


 もうこれくらいで勘弁してください。


 今23時50分。トイレが詰まりました。最悪・・・。


 読んで戴き感謝感激!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ