二章 プロローグ
待ってないかもしれませんが、仕事がほんの少し落ち着いたので更新を再開します
相変わらず亀の歩行のような進み具合ですが、よろしくお願いします
~ある地下室~
その部屋は八畳ほどの一室で小さい本棚が2つにテーブルと椅子だけという簡素な部屋だった
灯りは四隅に掲げられた燭台の蝋燭だけで、室内は微妙な薄暗さをかもしだしている
そしてテーブルには数人がすでに待機していた
暗がりでよく見えないが最初は蝋燭の灯りで影の揺らぎかと思われた
しかしテーブルに付いている人間と思しき人はそれ自体が揺らめいている実体がない状態のようだ
そこへ唯一ある扉から1人の男が入ってきた
ローブを着ているがフードは被っておらず、髪は黒か紺系だろうか、弱い蝋燭の灯りではわからなく、その紺系の髪は肩より若干長い
揺らめく人影達はその扉の方へ視線を向ける
「お待たせしましたか」
声質からして若そうな感じだが物腰からは熟年さを感じさせる程に落ち着いていた
「いや、我々もさっき来た所だ」
「うむ、して緊急の呼び出しと言う事だが」
こちらはこちらで年配を感じさせる声だが、声も揺らぎに合わせて些か不明瞭で正確にはわからなかったが、聞き取る分には問題ない程度だった
「まずはお座りください」
「影にそういう配慮は必要ないのだが」
「まぁそう言わずに」
言われて椅子に座る人影
それを確認した唯一の生身の男は一泊置いた後に話し出した
「・・ラグアニアに行っていたラルガス達とギアーレが死んだようです」
ふいに声を上げたのは揺らめいていた1人だ
「なに?ギアーレは下位と言えども滅びの魔族だぞ!生半可な人間なんぞものの数ではなかろう」
「ラルガス達も揃って敗れたのか?」
「--まさか奴が現れたのか?」
「いや、そのような報告は上がっていない。もう何十年も姿さえ見たものはいないのだから」
「くたばったのではないのか?」
「もしそうならどれほど有難い事か・・」
「いたらいたらで、対滅びの魔族相手なら周りは焦土になってるだろう」
それを皮切りに話を始める人型の影達
しばらく影達の話し合いが行われていたが、頃合を見てローブの男が口を開く
「報告ではヴァイシュラヴァナが出たらしいので、恐らくそのヴァイシュラヴァナに倒されたのでしょう。滅びの魔族の天敵ですから」
「「なに!?」」
「なのになぜ奴がいないのだ?ヴァイシュラヴァナは奴なしでは自力では出てこれんはずだ」
「報告はどうなっている」
「落ち着いてください、今読み上げます。--!?」
「どうした?」
「やはり奴がいたのではないか」
「いえ、彼はたしかにいなかったと書いてあります。が、ヴァイシュラヴァナを呼び出したのは別の人間のようです」
「なんだと!?」
「しかも子供ですね」
「馬鹿な!」
「奴が子供の姿に化けているのではないのか?」
「そうする理由がわからん」
「何にしろその子供は要注意だな。名や姿はわかるのか?」
「ーー名は、狐太郎。背は低く黒髪らしいですね」
「ふむ、コタロウ?変わった名だな。黒髪か、なら奴ではないな」
若干安堵の声をあげる1人
「呑気に言ってる場合か。奴の他にヴァイシュラヴァナを呼び出せる奴がでたのだぞ」
「慌てなくてもいいようですよ。まだその子供は未熟のようでヴァイシュラヴァナは十全の力を振るえなかったとあります」
「ならそこに付け入る隙はあると言うことか」
「それでも下位の滅びの魔族を滅する事ができるのは驚異であろう」
「もう1つ付け加えますと、滅びの魔族に憑依された人間が再び自我を取り戻したそうです」
「「「ーー!?」」」
その言葉に影たちは息を呑む
「それはーーますますあ奴の時と同じではないか」
「本当に奴はいなかったのだろうな?その報告は虚偽ではないのか?」
「それは有り得ませんよ」
「厄介なのには変わりない」
「そうだな・・・・しばらくはラグアニアからは手を引いた方が無難か。警戒されているだろうしな」
「監視は残しておけよ」
「うむ、してエルエリア地方はどうなっている?」
「かの地は黄泉の入口がある。うかつには手が出せんが・・」
「なに、あれを遣わせよ。それで問題ないだろう」
「ふむ、それなら大丈夫か。エルエリア地方は黄泉の入口がある為あまり人が出入りはしないからな。あれに対抗できる人間もおるまいて」
「それで大丈夫でしょう。何か異論はありますか?」
ローブの男の問に揺らぎ達は異論なしと返事をする
「ではラグアニアはしばらくは静観で余剰戦力はエルエリアに行かせましょう」
「うむ、エルエリアの方はこちらでやる」
「よろしくお願いします。後は--」
「ラッツェルは問題ないぞ」
「キラルディアは少し手間取っている」
「ではそちらにも応援を派遣しましょう」
「助かる」
「他には何か問題はありますか?なければ解散と言うことで」
ローブの男の言葉に揺らぎ達は問題ないと返事をする
「ではこれで解散いたします。また何かあれば連絡差し上げます」
「勇者アルスの加護があらんことを」
「「「「勇者アルスの加護があらんことを」」」」
そう言うとローブの男を残し揺らぎは次第に消えていき部屋にはローブの男だけになり部屋は静寂に包まれる
「ふむ、狐太郎ですか。この世界では珍しい名ですが転生者でしょうね・・これは楽しみが増えましたね」
表情は影になり伺いしれないが口元が僅かに歪んでいるのが見て取れる
部屋にはローブの男以外いなくなったが、彼はしばらくその部屋で佇んでいた
~ラグアニア王都~
ラグアニアの門の前にはちょっとした人だかりができていた
と言っても城下町から連なる門ではなく、王宮の裏口でその人だかりも国の要人やそれを警護する兵士だったりする
「気をつけて行くのだぞ」
『はい、数日間ありがとうございました』
「礼などいらん。国を救った英雄達を無下にするわけにはいかんしな」
そう言いながら現国王のシャルロス王は笑顔で語る
「コタロー殿、此度は本当に助かった。感謝にたえん」
車椅子で駆けつけていた元国王も何度も頭を下げる
ちなみに車椅子を押しているのはクリスティアである
「本来ならこのような送り方は本意ではないのだが・・国を上げてーー」
『頭を上げてください。もうその話は済んだはずですよ』
「しかしな・・礼を尽くしても足りんくらいだ、コタロー殿にならクリスティアを--」
王宮に留まってる間、会う度に礼を言い頭を下げてくる人達に狐太郎は少し疲れていたのは確かだ
毎回頭を下げられてはこちらも萎縮してしまうし気を使ってしまう
それを察したシャルロスは王宮の人達に、変な話だがこれ以上お礼を言うのを禁じた程だった
それは元国王にも当てはまるのだが
「--コタロー様!」
元国王が何を言おうとしたのか瞬時に察知したクリスティアは元国王の言葉をかぶせ気味に遮る
王宮にいる人達は元国王がクリスティアと狐太郎をくっつけたがっている事を知っていて、もちろんクリスティアの耳にも入っている
知らないのは狐太郎だけである
「コタロー様なら大丈夫だと信じてますが、道中お気を付けて・・」
『クリスティア様も巫女のお仕事頑張ってください』
「はい・・あの」
言葉が続かずにもじもじしているクリスティアに狐太郎は首をかしげるがフォローは別から入る
「いつでもいらしてくださいね。我ら王国、国を上げて歓迎いたしますわ」
『ありがとうございますルティーナ様』
「あまり間を開けるとクリスティアが寂しがるからな」
「--お兄様!?」
危機は脱したとホッとしたクリスティアにシャルロスが追い打ちをかけた
『ここは良い場所なのでまた近いうちに寄らせてもらいます』
それを知ってか知らずか狐太郎は笑顔で答える
まぁ知らないだろうが・・
朴念仁ここに極まれりである
『自分の村からもすぐに来れるようになりましたから』
そうなのだ
狐太郎とミルワースの判断で王宮の一室に転移陣--所謂ゲートを設置させてもらい、精霊の村との行き来を可能にした
しかし誰でも行けると言うわけではなく、起動には精霊と契約した者--この場合はクリスティアが魔力を流す必要がある
なのでクリスティアが選んだ人達しか通れないと言うことだ
今の所は秘匿とされ王族と一部の人達、ウェルキン達しか知らされていない
少なくとも王宮内にでも知り渡れば、精霊を従えようという貴族たちがこぞって来る事は間違いない
「それについては今の所秘匿としてクリスティアに一任している。落ち着いたら伺わせてもらうかもしれんが」
『はい、多分退屈してると思うんで遊びに行ってやってください』
「コタローがなかなか帰ってこないからみんな寂しがってるわよ」
クリスティアの傍に佇むミルワースからそんな言葉が飛ぶと狐太郎はバツが悪そうにする
『うっ・・・・』
「ふふふ、あまり村を空けるとお爺様なんかはすねちゃうから早めに帰ってきてね」
『わかったよ』
【・・・まだなのか?】
それまで狐太郎の傍で黙って待っていた朱姫が堪えかねたように声を上げる
すでに毘沙門天ルックになっており、待ちくたびれたように三叉激をぶんぶん振るっている
レフィル達は先にシャルロス達に挨拶を済ませており、今は離れて待っている
「そうですな、あまり長々と引き止めるのも未練が溜まるだけだ」
『必ずまた来ます』
「その時を楽しみにしよう」
『はい、では失礼します。待たせたね朱姫、行こう』
【まったく、私を待たせるとは本当にあ奴に似てきおったな・・】
ぶつくさいう朱姫の言葉に狐太郎は顔を引き攣らせる
「朱姫!コタローを頼むわね」
【うむ、任せておくがよい】
そしてレフィル達と合流して王都を旅立って行った
王都組はその姿をしばらく見つめていた
「行ってしまったな」
「しかし感傷に浸っている時間はないぞ。次にコタロー殿が来た時に今より良い国にしとかなければな」
「シャルロスも王の顔になってきたな」
「それは父上、これだけ問題が山積みなら仕方ないでしょう」
「言うようになったではないか」
「私もお手伝いしますわ」
「私も微力ながら」
「ルティーナは早く嫁いでくれ。もう紹介できる貴族がいない」
「あら、別に貴族じゃなくてもいいですのよ」
「勘弁してくれ」
元国王と現国王ら家族が軽口を交わし合う
それはラグアニアが平和になった証拠である
「では中へ戻るか。これから大変だが皆よろしく頼むぞ」
「「はっ!」」
・・・・・・・・
「所で、その死者の大森林はどのくらいで着くのだ?」
「ちょっと待ってね」
しばらく歩いていた狐太郎達
ミレリアの言葉にレフィルは魔法袋に手を突っ込む
「あ、あったあった。えーと、とりあえず港町リザールまで行ってそこから船で3日、エルエリア大陸の港街インクからさらに徒歩で3日で死者の大森林の手前の街に着くみたい」
「--!?そんなにかかるのか?」
取り出されたメモを読みながら言うレフィルにミレリアは驚愕の声を上げる
【なんじゃ、知らなかったのか?】
「あ、いえ私は基本国から出たことがなかったもので・・」
「王族なら仕方ないだろうな。外出などは暗殺に絶好のチャンスだからな」
『野盗とかに変装して襲うって事?』
「よくわかってるじゃないか」
【相変わらず同族同士で争っとるのか・・愚かな。あ奴が関わりたくなる気持ちもわかるのぅ・・・】
「返す言葉もありません」
朱姫の言葉にミレリアは申し訳なさそうな表情をする
「それでこいつらも関係あるのか?」
不意にヴァージルが曲刀に手を掛けながら呟くとミレリアが否定する
「いや、こやつらはただの盗賊だろうな」
「王都から近い場所で現れるなんて治安が悪くなってるね」
レフィルは武器は帯剣していないが、慌てることなく周囲を探っている
【やれやれ物騒なもんじゃな】
朱姫が呟くのと同時くらいに、草むらからそれなりの装備を整えた盗賊がバラバラとこちらを囲むように現れた
「こりゃ久々の上玉だぜ」
「あの女を見ろよ。あの体、たまんねぇな」
「女以外は殺せ」
「何、女子供に優男は警戒するにあたらねぇ。曲刀持ちだけ警戒しろ」
「「「おう!」」」
リーダーらしき男の掛け声で盗賊達は得物の武器を手にジリジリ方位を狭めてくる
「優男・・」
「女子供は大した事ないと?」
盗賊の言葉にレフィルはショックを受けミレリアは頬を引き攣らせている
ヴァージルだけが愉快そうに口を歪めている
「くっくっく、仕方ない。俺がやろう」
「まてヴァージル」
「僕もやるよ」
「女と優男は黙っていろ!」
「なに?」
「くっ・・ヴァージルは殺気丸出しだったから警戒されてるだけじゃないか」
『---ぷっ』
3人のやりとりに狐太郎は笑ってはいけないと我慢している
朱姫を見れば表情が見えないように下を向いているが全身が震えているので笑いを堪えているのだろう
「コタロー笑ってる場合か!」
「コタロー君!君も子供扱いされてるんだよ」
『ーー!?』
「てめぇら何勝手に話し合ってんだ」
「こっちを無視すんじゃねぇ」
業を煮やした盗賊が声を荒らげるとヴァージル達はピタリと話すのをやめ、ヴァージルが盗賊のリーダーに向き直る
「今話終わった所だ」
「へっ。今更命乞いしてもてめぇら女以外は--」
「こうなったら早い者勝ちだよ」
「よかろう」
『子供じゃない子供じゃない子供じゃないーー』
レフィルとミレリアも得物を取り出し、狐太郎もポシェットから刀を取り出す
朱姫は笑いから立ち直りやれやれと溜め息をついている
「なっ!?この人数差で抵抗するつもりか!」
「てめぇら、やっちまーーぐはぁ!」
リーダーとおぼしき男の言葉は最後まで続かなかった
狐太郎が顔面に飛び蹴りを放ったのだ
「ああ!?お頭!」
「やっちまえ」
硬直から復活した盗賊達はようやく狐太郎達へ襲いかかった
そしてやはりと言うかものの数分もかからずに盗賊達を殲滅する
「ふん、準備運動にもならんな」
「しかし王都の近くでこんな輩が出るようでは治安は悪化してると見るべきか」
「お家騒動があったから仕方ないと言えば仕方ないけど」
「これから治安も回復するだろう。それでこいつらはどうする?」
「うーん、戻って報告するのも面倒だし縄で縛って転がして置けばいいんじゃない?うまく行けば日没までに誰か通りがかるだろうし」
と言うことで盗賊達は全員縄で縛られ近くの木に括りつけられた
道中そういった物取りか後数回続き、大人しくしていた朱姫が我慢できなくなり戦闘に参加し、全力を振るった為に不意をつかれた狐太郎が魔力切れで気絶すると言う出来事もあったが、概ね順調だった
ちなみに気絶した狐太郎は朱姫がおぶわれていて、魔力はすでにポーションで回復させているので問題ない事を書いておく
この5人の中では狐太郎が1番弱いですね
魔力量に関しては朱姫を召喚し続けているので増えていってます
と言っても燃費がまだ悪くて1日かなりのポーションを飲まなきゃいけないですが・・
今の状態なら精霊なら数十分単位で呼び出せます
次話は10日(日)の午前9時です
よろしくお願いします




