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八話

100万人達成配信での「ガチ告白&両想い成就」から一ヶ月。

二人の関係は「公認カップルVtuber」としてネット中に知れ渡り、もはや隠すものなど何一つなくなった……はずだった。

「——というわけで、本日は【ご報告】配信です」

『ついに……!?』

『結婚か!? 入籍なのか!?』

『100万人達成の次はそれしかないよな!』

『陸上部(仮)、ついに年貢の納め時か……』

黒スーツ姿のアバターで並ぶカナタ(陸)とルナ(結衣)。

コメント欄の興奮が最高潮に達する中、陸は深々と頭を下げた。

「皆様の期待を裏切って大変恐縮なのですが……本日、両親に挨拶に行ってまいります」

『現実的すぎて草』

『挨拶段階かいwww』

『でもリアルでハラハラするやつ!』

「そうなんです!」と結衣(ルナ)がマイクに飛びつく。

「実は今日の配信、陸の実家に行く直前の新幹線の中からお届けしていますにゃん!」

「おい結衣、揺れるからマイクにぶつかるな! ……そう、今日は『配信者の彼氏』としてではなく、『佐藤陸』として彼女の実家……ではなく、俺の実家に二人で行くことになりました」

実は、100万人達成配信をリアタイで見ていた陸の母親から、「結衣ちゃんを連れて今すぐ帰ってきなさい!!」と激怒&大興奮の電話がかかってきたのだ。

「両親は俺がVtuberをやってることすら最近まで知らなかったんだぞ? なのに『画面越しのあの可愛い子が結衣ちゃんなのね!?』って完全にルナのファンになってて……」

「お母様、ルナのメンバーシップ(有料会員)に入ってくれてるもんね♪」

「リスナーかよ俺の親!!」

◇

数時間後。陸の実家。

「よく来たわね結衣ちゃん! さあ入って入って!」

玄関を開けるやいなや、陸の母親は陸をスルーして結衣の手を握りしめた。

「お、お邪魔します……! カナタ……じゃなくて、陸くんとお付き合いさせていただいています、結衣です……!」

ガチガチに緊張して頭を下げる結衣。

居間へ通されると、そこには厳格な父親が腕を組んで座っていた。

(やばい……親父は昔気質の堅物だ。「配信者」なんて職業、理解してくれるかどうか……)

陸の背中に嫌な汗が伝う。

「……座りなさい」

父親の低い声。結衣はビクッと肩を揺らした。

「結衣さん……と言ったな。陸から話は聞いている。ネットの中で二人で何やら喋っているそうだな」

「は、はい! あの、最初は事故から始まって……本名をバラしてしまったり、デスボイスを叫ばせたりして、本当に申し訳ありませんでした……!」

平身低頭で謝る結衣を見て、父親はゆっくりと立ち上がった。

そして、床に置かれていた大型テレビの電源を入れた。

画面に映し出されたのは——100万人達成記念配信の録画映像だった。

「父さん!? なんでそれを!?」

驚く陸を制し、父親は静かに画面を見つめる。

「……3年前、陸が大学を辞めて『やりたいことがある』と言い出した時、私は猛反対した。……だが、先日のこの配信を見た」

テレビ画面の中では、ゲームで負けた結衣が「陸、大好きだよ!」と叫び、陸が爆音デスボイスで照れ隠しをしている。

父親はふっと表情を緩め、結衣に向かって頭を下げた。

「あんなに情けない顔で照れる陸を見たのは、生まれて初めてだ。……下積み時代、誰もいない画面に向かって叫んでいた息子を、諦めずに隣で支えてくれて、本当にありがとう」

「お、お父様……っ」

「これからは家族として、あいつの爆音デスボイスを一緒に止めてやってくれ」

「はいっ……! 喜んで!!」

全開の笑顔を見せる結衣と、涙ぐむ母親。

頑固だった父親も、最後は優しく二人の背中を叩いてくれた。

(……なんだよ。心配して損したな)

陸は照れくさそうに頭をかき、隣で嬉しそうにジュースを飲む結衣を見つめた。

◇

その夜、陸の部屋。

二人で実家のベッドの縁に腰掛け、スマホでTwitterを眺めていた。

「無事に終わってよかったね、陸」

「ああ。まさか親父までファンになってるとは思わなかったけどな」

「ふふっ。ねえ陸……これからもっと忙しくなるね。200万人を目指すかもしれないし、リアルライブももっと増えるかもしれない」

結衣はそっと陸の肩に頭を預けた。

「でもね、どれだけ大きなステージに立っても、私にとっては『陸の隣』が一番落ち着く場所なんだよ」

陸は少し驚いたように目を見開いたが、すぐに柔らかく微笑み、結衣の肩を抱き寄せた。

「……俺もだよ。お前が隣にいない配信なんて、もう考えられない」

二人の距離が近づく。

部屋の明かりを落とし、静かな夜の空気が二人を包み込む。

——トントン。

突然、部屋のドアが勢いよく開いた。

「二人とも〜! お母さん特製の夜食持ってきたわよ〜……って、あらやだ! アラアラ〜〜〜!!」

「「おかあさん(お母様)!!!!」」

一瞬で真っ赤になる二人。

「ご、誤解ですお母さん! 今はただ肩を組んでいただけの健全な空気で……!!」

パニックになった陸は、実家の自分の部屋であることも忘れ、夜の住宅街に向けて魂の叫びを解放した。

「ヴォイイイイイイイイイ(実家爆発レベルの過去最高音デスボ)!!」

「近所迷惑だからやめなさい陸!!」

大爆笑のお母さんと、顔を真っ赤にして転げ回る結衣、そして響き渡るデスボイス。

画面の中でも、画面の外でも。

二人のハチャメチャで、愛おしくて、最高にてぇてぇ日々は、これからもずっとずっと続いていくのだった。

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