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五話

1stデュエットライブの最後で巻き起こした「押し倒し事故」の切抜き動画がSNSで大バズりし、チャンネル登録者数はついに60万人を突破した。

もはや「事故が起きない方が事故」とまで言われるようになった二人に、今度は事務所の枠を超えた【超大型オフラインイベント】への出演オファーが舞い込んだ。

「リアル会場でのファンミーティング……? それも幕張メッセで!?」

防音室で叫ぶ陸に、マネージャーがドヤ顔で頷く。

「そう! 巨大スクリーンの前で、現地に集まったファン数千人とリアルタイムで交流するイベントだよ。もちろん、中の人の姿は見せない完全アバター出演!……なんだけど」

マネージャーがすっと差し出してきた企画書には、嫌な予感しかしない文字が書かれていた。

『【特別企画】ファンからの質問にリアルタイムで嘘発見器をつけて答えよう!』

「……待ってください。嘘発見器って、心拍数とか皮膚抵抗を測る本物のやつですか?」

「もちろん! ファンが一番気になってる『二人は本当は付き合ってるの?』っていう質問、現地でドカンと投げてもらうから!」

「事務所、俺たちを炎上させて倒産する気か!?」

◇

イベント当日、幕張メッセ。

会場は満員御差し入れのサイリウムで埋め尽くされ、巨大スクリーンにはカナタとルナの3Dモデルが映し出されていた。

『カナター!!』『ルナちゃーん!!』『陸上部ー!!』

会場を揺らす歓声。裏方のコントロールルームでセンサーを装着した陸と結衣は、生きた心地がしていなかった。

「……ねえ陸、私、心拍数すでに130超えてるんだけど……」

「落ち着け結衣。俺もだよ。てか嘘発見器のグラフがすでに波浪警報出してるぞ」

ステージ(スクリーン上)のイベントが始まり、ついに恐怖の『嘘発見器コーナー』へ。

『最初の質問!【ぶっちゃけ、お互いのこと「異性として」好きですか?】』

会場が「おおお!?」と湧き立つ。

「質問の角度が直球すぎるだろ!」と心の中で叫びつつ、陸はマイクに向かった。

「えー……っと。……まあ、ライバルとして、大切なパートナーとしては好きですけど、そういう恋愛感情とかは……ないですね! はい!」

ブブーーーーーーーーッ!!!

巨大スクリーンに【判定:大嘘(心拍数急上昇)】の真っ赤な文字が踊った。

会場:『きゃああああああああああ!!』

コメント欄:『wwwwwwwwww』『隠せてなくて草』『嘘発見器は嘘をつかない』

「ちがっ!! これはステージの緊張で心拍数が上がっただけで!!」

必死に弁明する陸だったが、会場のテンションは最高潮に達する。

続いて結衣(ルナ)の番。

『【ルナちゃんは、カナタくんと付き合いたいと思ったことは一度もない?】』

「えっ……あ、えっと……! ないです! 1回も……思ったことないですにゃん!!」

ブブーーーーーーーーッ!!!(限界突破のアラーム音)

【判定:超・大嘘(心電図測定不能レベル)】

「……」

「……」

静まり返る会場。次の瞬間、幕張メッセが揺れるほどの地鳴りのような歓声が巻き起こった。

『てぇてぇぇぇぇぇ!!』

『やっぱり両片思いじゃねえか!!』

『もう今すぐここで結婚式挙げろ!!』

「ち、違うの! 今のは『陸と付き合ったら毎日ドタバタで大変そうだな』って妄想した時の動悸で……!!」

結衣の言い訳が苦しすぎて、もはや誰も信じていない。

パニックになった結衣は、パニックのあまり手元のアニメーションコントローラーを誤操作。

スクリーン上のルナのアバターが、感極まった表情でカナタのアバターに抱きつくモーションを発動させてしまった。

「あ」

抱き合わされた状態の3Dモデル。

鳴り響く嘘発見器のアラーム。

地鳴りのようなファンの歓声。

「……もう……どうにでもなれぇぇぇ!!」

限界を迎えた陸は、幕張メッセの巨大スピーカーを通して、魂の限界を超える爆音を解き放った。

「ヴォイイイイイイイイイ(幕張崩壊レベルの超爆音デスボ)!!」

『5話連続デスボwwwww』

『幕張メッセでデスボ出すVtuberwww』

『最高のファンミをありがとうwwww』

大爆笑と割れんばかりの拍手の中、伝説のファンミーティングは幕を閉じた。

◇

イベント終了後、楽屋裏の廊下。

機材を外した二人は、壁に背中を預けてへたり込んでいた。

「……はぁ。もう、完全に詰んだよね、私たち」

結衣が顔を真っ赤にしたまま、膝に顔をうずめる。

「……まあ、嘘発見器なんて科学的根拠があれだからな。ノーカンだ、ノーカン」

陸も強がりを言うが、自分の心臓が未だに早鐘を打っているのを隠せないでいた。

「……ねえ、陸」

「ん?」

結衣がゆっくりと顔を上げ、少し湿り気のある瞳で陸を見つめた。

「……さっきの嘘発見器、本当に『緊張だけ』だった?」

一瞬、息が止まる。

いつもはドタバタで誤魔化してきた二人の間の「空気」が、ふっと熱を帯びる。

陸は気まずそうに視線を泳がせ、それから小さく息を吐いた。

「……お前こそ、どうなんだよ」

結衣は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにいつもの、少しイタズラっぽい笑顔を浮かべた。

「……秘密。次の配信で、デスボイスで教えてあげる」

「お前なぁ……」

陸は呆れたように笑い、結衣の頭をぽんぽんと乱雑に撫でた。

画面の中でも、画面の外でも。

ドタバタで、勘違いで、ハプニングだらけの日常。

けれど、二人の絆は確実に、少しずつ、新しい形へと進み始めていた。

Twitterトレンド1位:『#幕張大爆発』

Twitterトレンド2位:『#両片思い確定』

「さあて……明日の配信、どうやって言い訳するか考えるか」

「うん! 最高の『大嘘』用意しておいてね、陸!」

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