お散歩は命がけ2
「クラウス様、この後、私は何をしたらよいでしょうか? シャーリーをお風呂に入れますか?」
玄関にいるシャーリーの体には土ぼこりがついていた。
風呂とブラッシングは必要だろう。
犬は飼ったことがないが、シャーリーは散歩に出る前にきっちりブラッシングされていたから、お手入れは欠かせないはずだ。
シャーリーの毛並みの良さから、大切にされていることが伝わってくる。
クラウスはしばし悩んだあと口を開いた。
「君にそれができるのか?」
「もちろんです。介護で鍛えられていますから、おまかせください!」
それこそリネアの手があれている理由である。
「なるほど、君は本当に介護をしていたんだな。俺は領主としての仕事をしなくてはならない。シャーリーの扱いはセバスから聞いてくれ」
◇
リネアはその後、シャーリーのお風呂やお手入れについてセバスから教わった。
館のなかにシャーリー専用の部屋があり、そこには大きい湯殿があった。石鹸でごしごしと洗い、泡を流してから風呂に入れる。
まずはセバスと一緒にシャーリーの体をぬるめのお湯で流す。
それから石鹸でごしごしと洗い、泡を流してから風呂に入れる。
シャーリーはいい犬で風呂を嫌がらなかった。むしろ好きなようだ。
「いつもはセバスがお風呂に入れているのですか?」
「クラウス様と私で交代でございます」
(とてもかわいがられているのね)
その後、体を拭いてやる。
セバスは風魔法が使えるようで、シャーリーの体を乾かしてくれた。
リネアは魔法が使えることは言ってないので、心苦しい。
(実家にばれたら面倒だもの)
セバスからシャーリー専用のブラシをもらい、丁寧にブラッシングを始めた。
最初はリネアに怯えていたシャーリーだが、風呂に入ってリラックスしたせいか大人しい。
耳の後ろから付け根あたりをブラッシングしてやるとシャーリーは気持ちよさそうに目を細めた。
その後の流れはすべてセバスが教えてくれた。
風呂の次は昼食だ。
食事は彩りよく皿に盛られていて、犬の餌とは思えない。 もっといえば、人間の昼食と変わらなかった。
(塩分は大丈夫なのかしら? きっと見た目だけ盛り付けに気を使っているのよね?)
もちろん犬食いではあるが、汚れがつけばその都度拭いてやる。食後は歯ブラシだ。
シャーリーは歯ブラシも嫌がらず、素直に応じた。
さすがにフェンリルの歯を磨くのは怖かった。
歯はとがっていて噛まれたらリネアの手はあっさりと食いちぎられるだろう。
だが、怯えの色を浮かべているシャーリーの紫の瞳を見ると、こちらがシャーリーを怖がらせている気がしてくる。
「リネア様、お疲れ様でございました。このあとシャーリーはお昼寝のお時間となります。リネア様も午後はごゆっくりおやすみください」
「シャーリーのお世話はこれで終わりですか? 夕方のお散歩はしないでいいのですか?」
「はい、シャーリーはたいへん人見知りですので、夕方の散歩はクラウス様がなさるそうです」
「わかりました。私がずっと一緒にいるとかえってシャーリーが疲れてしまいますものね」
リネアは一階にあるシャーリーの部屋から三階に与えられた自室に戻る。
ただ午前中に散歩をしただけなのに妙に体が重く疲れていた。
(やっぱり、フェンリルのお散歩って気が張るわね。シャーリーがこの家でとても大切に扱われているのはわかった。それで肝心のお坊ちゃまの方はかわいがられているのかしら)
リネアは甥より先に、フェンリルを紹介するクラウスに引っかかりを覚えていた。
「お読みいただきありがとうございます!
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