穏やかな日常
その三日間は変化のない日々が続いた。
朝の勉強の後、アシュリーと散歩をして夕方再び二人で散歩をする。
リネアは適度な距離感を保ち、アシュリーがリラックスできるように努めた。
(ゆっくりと時間をかければきっと距離も縮むはず。焦る必要はないわ)
そんな時、最近ではすっかり見かけなくなった綿毛を久しぶりに見つけた。
アシュリーに知らせないわけにはいかない。
「アシュリー様、見て下さい。ブルーベルがきれいですよ。それに、あちらにはタンポポの綿毛がありますよ!」
リネアの呼びかけにアシュリーはピクリと反応して、綿毛を目指して走っていく。
アシュリーは摘み取ると、ふうっと吹いて綿毛をブルーベルが群生している茂みに飛ばすと、彼は無邪気な表情で綿毛を追いかけ始めた。
(シャーリーと行動が一緒ね。すごくかわいいわあ)
リネアはその光景に癒された。
そうしている間にもアシュリーは何かを見かけたようで、お城の古い見張り塔の裏の石段のあたりに入り込んでしまった。
リネアは少しずつアシュリーとの距離を詰めた。
彼の突発的な行動には慣れている。
とはいえ、さすがに小さな子供が視界に入らないのは不安だ。
リネアがそっと覗くとアシュリーは暗い黄緑色のアイビーの硬い葉をめくり、小さなノイチゴをみつけていた。
「アシュリー様、よく見つけましたね」
リネアが声をかけるとアシュリーは一瞬びくりとしたが、ふり返っておずおずと口を開く。
「ここに、野イチゴ……前もあったから」
「アシュリー様、よく覚えておいででしたね」
リネアが褒めるとアシュリーは照れたように、頬をそめた。
きっとアシュリーのその記憶は、まだ彼の両親が生きていた頃のものなのだろう。
その後、アシュリーと野イチゴを手に持てるだけ摘んで館に戻った。
翌日の散歩では籠を持って出かけて、アシュリーと野イチゴを探した。
やがて群生地を見つけて、籠にいっぱい摘んで持ち帰ることになった。
「あのね、ブルーベリーもあるんだよ」
アシュリーがぽつりと言う。
「アシュリー様、リネアはブルーベリーが大好きです」
「うん、今度リネアを案内してあげる」
なんとクラウスの留守がきっかけになり、アシュリーとの距離が縮まっていった。
次の日は野生のタイムやセージを見つけた。
それからカモミールの群生地も見つけて、アシュリーと一緒に花を摘んで持ち帰り、お茶にするために干した。
普段はセバスやクララがアシュリーに付き添っていたが、彼らはクラウスがいないことで忙しくなったようで、自然とアシュリーはリネアのそばにいることが増えてきた。
アシュリーは警戒心が強いだけで、かなり聞き分けのいい子だとわかった。
好奇心が旺盛で、見かけよりもずっと大人だということも。
アシュリーは大人の表情を読み、行動する。リネアは子供の頃の自分の姿を重ね、胸を痛めた。
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