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挿絵(By みてみん)


王都内で暮らしているのだ。


冒険者ギルドと伯爵家とを行き来する時に気配隠蔽を使って、誰にも見咎められないように気をつけているとはいえ、冒険者ギルドでは気配隠蔽を解いている。


冒険者ギルドに出入りする人達からは普通に認識されるようになった。

下級回復ポーションはダンジョンでドロップしやすいので価格もお手頃で流通量も安定しているが、中級回復ポーションは手に入りづらい。

上級回復ポーションともなると更に入手困難。


更にはエリクサーだと

「本当にそんなのが存在するの?」

と言われるレベルで見かける事自体ない。


私が作る中級回復ポーションがジワジワ人気商品になりつつある。

毒消しポーションは「これまで無かったから」と、案外需要がない。


「下級毒消しポーションは二日酔いとかにも効くし、全然高くないし、何より私のポーションは浄化で徹底殺菌してるから長持ちするのに…」

と、少し不満に思っていた。


実は汎用性が高い毒消しポーションが売れずに在庫だけが増えていく…。


そんな中で、販路が広がる予感を感じさせてくれたのは…

この国の宰相オークウッド公爵だった。


オークウッド公爵家と言えば、バルシュミーデに支配下に置かれる以前のランドル王国内で王家以上に力をふるっていた筆頭公爵家。

現在の王家直属騎士団は、以前はオークウッド公爵家騎士団だった事はこの国でも皆の記憶に新しい。

悪虐の名を欲しいままにしたワイアット侯爵家の後ろ盾で黒幕。

それが旧オークウッド公爵家。


今現在はバルシュミーデ人の宰相に乗っ取られて無害化している家だ。


そのオークウッド公爵家から

「今度開く夜会で参加者へのお土産用に下級毒消しポーションを持たせたい」

という要望が届いた。


在庫はある。

ただ貴族用の粗品贈答品なので

「高級そうな箱に詰めなきゃね」

と思った。


のだが、その辺の作業も公爵家の使用人の皆様の方でやってくださるらしい。

こちらは在庫処分できて、ガッポリ現金化できたお陰で懐が暖かくなった。


(この際、お世話になってる皆様のためにちょっとした便利魔道具を作れないかな?)


利益は善意の人達へのお礼という形で周りに還元するべきだ。

本格的な魔道具作りは基本的に地属性と光属性が必要だが、例外として地属性魔物の素材を使えば魔力持ちなら誰でもちょっとした物が作れる事が分かっている。

そうした魔道具師適性がない人達の中では光属性持ちは圧倒的に有利だ。


(商品化まではできないだろうけど、あったら便利だ。きっとみんな快く使ってくれる筈…)


そう思って作ったのは

「靴の中を浄化する浄化石」

だ。

靴の中の雑菌を殺菌してくれる優れ物。


闇属性魔法が如何に便利で清潔な生活の役に立つか、善意の人達に実感していただこう、という訳である。

(闇属性魔法に変な偏見を持ってる人達が少しでも減れば良いけど…)

という打算も勿論あった。


******************


オークウッド公爵家の夜会以降、下級毒消しポーションの需要が劇的に伸びた。

は良いが、同じように「客人らへのお土産に」という大量発注をしてくるようになった人達に対してはギルマスがお断りしてくれている。


「世の中にはどんなクズがいるか知れねえだろ?お前の評判を落とすために大量発注して品物を劣悪品にすり替えて配る奴らも湧いてくるかも知れないんだ。信用できない人間からの大量発注は受けないのが商売の基本だ」

道理である。


「お一人様につき3本まで」

という制限を付けても売り切れる日々が続くようになった。

(みんなどれだけ二日酔いに苦しめられてたんでしょうね…)


「それはそうと、お前が作ってくれた浄化石なんだが…。嫁も自分用に欲しいと言い出しててな。ギルド内でも『家族も欲しがってる』という声が多い。

費用は出すから、また作ってくれないか?」

とギルマスから依頼を受けた。


「良いですよ。ただし、闇魔法の代表的魔法が浄化なんだって事実をちゃんと皆様にも広めてくださいね?

光属性ではせいぜい紫外線殺菌で、本当に、悪い物を根こそぎ消せる本物の浄化は闇魔法だけですよって」


「分かってるよ」


善意の味方がいるのは

頼もしいものだと思う。


諸々の心配を私自身がアレコレ考えても無駄なのだという事はもう分かった。

加害者がいて、自分が被害を受ける環境なら、そこには第三者の助けが必要なのだ。


善意の人達へ自分も善意を返して自分の有用さを知ってもらうことで、自分だけではどうしようもなかった事態が少しずつ好転してくれる。

それを実感した。


ただ、誰もが本当に善意の人達で味方になってくれる人達なのかというと、その判別が難しい。


高ランク冒険者の人達が私が作る中級回復ポーションと中級毒消しポーションを愛用してくれるようになっているとかで、魔法薬師としての信用は少しずつ積み立てられている。


しかし一方で

「いつもお世話になっている魔法薬師の女性にお会いしたい」

とか言い出してるらしいので…

その点では受付の人達に少し迷惑をかけている。


ギルマスは

「実は冒険者ギルド内の治安維持のために昔から用心棒を雇ってるんだ。だから冒険者達が無茶振りしようとして職員に被害が出る前に用心棒がなんとかしてくれてる」

と言って、気に留めていないらしいので安心ではある。


「用心棒?」


「傭兵ギルドは実は情報屋を兼ねてるんだぜ」


「…情報屋、ですか?」


「『冒険者の過去をほじくり返すのは御法度』なのは知ってるな」


「ええ。冒険者ギルドの発足は改心した元犯罪者に仕事を与える事でしたね?」


「ああ。だから冒険者登録は身元をあれこれ詮索はしない。だがギルドの発足理念に基づくならば冒険者ギルドは『冒険者の犯罪を抑止する』べきなんだ。

だから傭兵ギルドに依頼して冒険者の身元を調査している。

傭兵は護衛・対人戦闘のプロだからな、情報を漁って、それが原因でつけ狙われても対処できる。

意外かも知れないが情報屋は狙われやすいんで、それなりの戦闘力が無いと情報屋にはなれないんだよ」


そう言われてみれば、そうだなと判る…。



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