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挿絵(By みてみん)


「…お義父様は『子育てに失敗した』感じの事を仰ってましたが、先に結婚の失敗があったんですね?」


「政略結婚に不満のある女を娶ると、『妻を絆す心理技術』を持っていない男は悉く結婚に失敗するもんだ」


「そう言えば国王陛下も不幸な結婚だったんですか?」


「その話も実は有名だよな。なんでも、正妃様はとんでもないアバズレで、陛下と婚約中だった頃から美男の侍従とデキてたらしくてな。

お陰で陛下は一時期男性機能が麻痺する病気になってたとか何とか。その後、成婚後もご夫婦が閨を共にする事はなかったって噂だ。

なのに正妃様は妊娠して『一体誰の子だ』と王城内の使用人間では醜聞がアレコレ飛び交っていた。

生まれた王子は病弱らしくて、人目に触れず、王城の侍医らが詰める医療棟で育ったらしい。

一方で正妃様は使用人達からの批判の目が精神的にキツくなった事で気鬱を患い離宮で療養という名の幽閉になったようだな」


「正妃様の生んだ王子様って、王位継承権はあるんですか?」


「『元々ランドル王国はランドル人のものだ』という事で、ちゃんとランドル王国の第一王子として王太子候補になってらっしゃる」


「陛下ってすごい寛容で太っ腹だったんですね」


「と思うだろ?」


「?」


「更にアングラの噂では、陛下は娼館へ売りに出されてた貴族令嬢を愛妾として数人仕入れていて、正妃の懐妊後はすぐに愛妾達と子作りしていたという話だ。

当時はランドル人貴族はそうやって没落中だったんで美人の貴族令嬢が大勢売りに出されてたらしい。

『陛下は愛人に産ませた子の中でも最も容姿がランドル人寄りの男子を正妃が産んだ子とすり替えたらしい』と、知ってる者は知っている」


「うわぁ〜…」


「ランドル人からすれば、次代の王がちゃんとランドル人女性の産んだ男子なら母親は王族じゃなくても良いってのが本音だ。

正妃のアラーナがとことん民から人気のない女だったから、というのが追い風になってて、誰も第一王子殿下の本当の血筋を気にしていないんだ」


「それだと、ランドル王国の王家は旧王家のレヴァイン家の血は途絶えてるって事ですね」


「まあな。民から人気のない王家だとそういう末路になるもんさ。アザール王国もアザール王家の血を引かない王子が王になる日が来るのかもな」


「あり得そうです…」

私はしみじみそう思った…。


「正妃を離宮に幽閉してから、愛妾達が側妃に格上げになって、現在、側妃は3人だ。おそらくこれ以上は増えない。

それなのに、お前さんは側妃候補なんだろ?ランドル人はバルシュミーデ人と婚約関係にある貴族しか王立学院に入れないという規則のせいで」


「ええ」


「それだと『陛下が婚約者令嬢を臣下へ下賜する』という形で結婚する事になるから、お前が将来結婚する相手は陛下の側近の子息達になる可能性が高い」


「それって…。ジョシュアが婚約者になりそうだという事?」


「カークランド公爵令息はお前さんと同じ歳だな。その可能性は最も高い。

側近は何人もいらっしゃるが、中でも宰相のオークウッド公爵と相談役のメイスフィールド公爵は特に陛下と近い。子供の頃からの幼馴染だからな。

だが宰相の子息は幼いし、メイスフィールド公爵の所の子は女子が2人。

となると、キングスコート侯爵家、オブライアン侯爵家、ブライトウェル辺境伯家の令息達が候補に上がってくる」


「謁見の間に居た子達ですね?」


「将来の王太子の側近候補達でもある。メイスフィールド家の令嬢達は王太子の婚約者候補なんで、嫌われないように気をつけろよ。

お前さんも『将来の側近の嫁候補』だから、そのうち巻き込まれる」


「…政治のドロドロに巻き込まれるのは嫌なんですが」


「無能ならともかく、その歳でそれだけ魔法が使える時点で、政治と無関係で居たいと思っても無理だな」


「ですよね…。せいぜい私を殺そうとしたりしないマトモな人が婚約者に選ばれてくれるように祈ります」


「…普通は婚約者令嬢を殺そうとしたりはしない筈だが」


「私の最初の婚約者のルクレール公爵令息はなけなしのお金を払って暗殺者を送り付けて来ましたよ…」


「らしいな。だが、アレは流石に例外だろう?ああいうアタオカがこの国の高位貴族令息の中に居るとは思えんが…」


「どうなんでしょう…。私には頭がおかしい人達の心理なんて分からないので、何処でどんな風に湧いてくるのか見当もつかないんです」


「そうか…。とことん男運がない女もたまに居るが、お前さんもそういう人種なのかもな」


私はギルマスに同情されて、ギルマス自ら調薬室へ案内してもらうという破格の優待を受けたのだった…。


******************


冒険者ギルドでの待遇がアザール王国に居た時よりもずっと良い…。

(この国の人達って素で親切なのかな?)

と思う。


流石は民間組織という事なのか、ギルマスも職員もランドル人だ。

王立魔法学院の学院長も実はランドル人なのだと、後から聞いて知った。


ランドル王国内の要職はバルシュミーデ人が占めていて、上流層にランドル人は居ないのかと思いきや、そこまで徹底されている訳でも無さそうだ。


調薬室は

「以前、光属性のとある令息がポーションの製作に興味をお持ちになられた時に御使用頂いていた部屋ですが、『騎士の道へ進むから』と冒険者活動をお辞めになられて、その後はずっと空き部屋だったんです」

という履歴があった。


誰かが使ってたのがそのまま残っていた、という事。

勿論、ちゃんと掃除されているので、そのまま使える。


「見慣れない道具もありますが、どんな時に使ってらっしゃったのか分かります?」

と尋ねたら


「いえ、スミマセン。分かりません」

だそうだ。


ギルマスからは

「自分の部屋だと思って好きに使え」

と許可されている。


見慣れない、一見非合理的な道具。

いずれも天然石を削りだした道具だ。

(金属製じゃなくて天然石だと割れやすいと思うのよね)


「過去見」

を掛けたら

「道具が使われている状況」

が見えるかも知れない…。


と思い

「過去見」

を発動させる…。



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