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挿絵(By みてみん)


「魔法薬を作って売る」

のには

「冒険者ギルドが介在する」

のだと知った。


なんでも魔法薬、つまりポーションを作れる人が少ない。

水属性があれば魔力水を出せるので、低級ポーションの劣化版みたいなものなら、努力すれば作れるようになるが…

そういうものは効き目が立証されない気休め程度のもの。


ちゃんとしたポーションは水属性と光属性が要る。

毒消しポーションとなると水属性と闇属性が必要になる。

この世の中、平民は大半が魔力無し。

多重属性ともなると貴族でも一握り。

そんな訳でちゃんとしたポーションを作れる魔法薬師は少ない。

それこそ国に数人居るか居ないかのレベル。


冒険者達や騎士団、傭兵団が消費するポーションは大半が

「ダンジョンのドロップ品」

なのだという。

(ランドル王国のみならず、アザール王国でもバルシュミーデ皇国でもそうらしい)


そんな訳で

「ポーションの取り扱いは商人ギルドではなく冒険者ギルドが請け負っている」

のである。

冒険者ギルドが大きな顔をしていられるのは全て

「ダンジョン産ポーション」

のお陰と言っても過言ではないのだそうだ。


そんな社会環境なので

「傷を治す回復ポーションの低級品は結構頻繁にドロップする」

事もあり、作っても儲けは出ない。


「…私の強みは『毒消しポーション』を作れる事よね。しかも上級を」

自分の能力が需要がある事は分かっている。


毒消しポーションを下級・中級・上級と作れるだけで、それなりに需要が見込める。

ダンジョン内には毒を使う魔物が頻発する階層なんかもあり、そういった階層は攻略が停滞していて、マップ作成すら出来ていない。

毒消しポーションの安定供給は、そうした攻略停滞が解消されるキッカケにもなり得る。


今の時点ではダンジョン街にある領主館、つまりクレーバーン伯爵邸の空き部屋を調薬室、在庫保管室として利用するつもりでいるが…

そのうち独り立ちする事も考えなければならない。


アランから

「実はブライトウェル辺境伯から、魔法薬の材料調達と商売に関して全面的に協力するので代わりに魔法薬作りの指南を子息らへしてもらえないかという打診があったんだが…。どうだろう?」

と尋ねられた。


(打診、ね…)

実質、命令だろうと思う。


「ご子息って、あの時解呪した子と、その子にそっくりな子ですよね?双子、なんですよね?」


「ああ。解呪が必要だった子の方が兄のリチャード。もう一人の子がチャールズ。2人共、光属性に適性があるとかで、出来る事を増やしたいらしい」


「辺境伯家騎士団って、かなり規模が大きいらしいから、中等部にも通わず必死に戦闘訓練に明け暮れてるのかと思いましたが…。意外に多芸を望むのですね?」


「怪我をする事もあるからこそポーション作成を望むのだろう。治癒魔法の適性が低くても魔石に魔力を蓄えればそこそこの治癒力のものが作れるからね」


「そう言われればそうですね。私も治癒魔法の適性が低くて擦り傷くらいしか治せないので、ポーションで治癒力の低さを補ってる感じです」


「そう言えば、ヤケドはもう良いのかい?」


「ええ。直ぐに対処したので大丈夫です。時間が経ってからだと結構悲惨な事になってた可能性がありますが…。何せヤケド面積が広かったので」


「…君に食事を投げつけてヤケドさせた少年に対しては実は傷害罪で訴えている。学院を退学させるだけじゃなく、血縁者達も失職させて、ランドル王国から追い払う予定だ。

笑いながら女性に大火傷を負わせる傷害行為を行える人間性というものに対しては、私は勿論、陛下も嫌悪なさっている。

正直、水やワインを掛ける嫌がらせは社交界でも多発していて、渋々容認されてはいるが、流石に熱々の飲み物を掛ける傷害行為は容認されない」


「そうなんですね…」

(ヴィクトール王って、意外にマトモな人なんだな…)


危険人物を排除してもらえるのは嬉しいが…

危険人物を排除したんだから学院には普通に通えよ!

って事になるのは嫌だ。

何というか…

あの人達の悪意には迷いの無さ、真っ直ぐさがあって、私のほうでも思わず気圧された感がある。


二度とあんな場所に行きたくないと思った。

何なら試験だって受けに行きたくない。


(それこそ「貴族は王立学院高等部を卒業していなければならない」もしくは「貴族は騎士資格を取得していなければならない」という規則自体を特例でなくすとか、して欲しいものだわ…)

と思ってしまった。


******************


出歩きもせず、大人しく自宅待機してる間に

「特例措置適用許可」

がおりてくれて良かった。


辺境伯の親戚の子らが証拠動画を提出してくれたお陰で直ぐに私の被害申告が事実だと認められたのだそうだ。

有り難いと思ったが

(これで辺境伯家の双子を受け入れざるを得なくなったわね…)

とも思った。


コネというものは人生の困難克服難易度を引き下げてくれる面もある一方で、面倒だと思うコミュニケーションから逃げられなくなる面ももたらすのだ。

(双子の人間性が素直で、ちゃんと教えた事を理解してくれると良いのだけど…)

と少し不安になった。


本格的に魔法薬師として活動するなら、アランの領地であるパクストン・ダンジョン傍のダンジョン街へ移り住みたいところだが…

「試験日だけの登校とは言え、試験日は毎月のようにある」

のだ。


「長期休暇期間だけダンジョン街で活動する事にして、普段は王都内に滞在するのはどうか」

とアランに提案されて、それを受け入れた。


クレーバーン伯爵家のタウンハウス内に調薬室を確保する事はできたものの…


「ここから冒険者ギルドへ持ち込む途中で奪われる可能性もある。タウンハウスの調薬室は自分で使う分のポーションを作成する専用にした方が良いのではないか?

冒険者ギルドのギルマスは私とも辺境伯とも懇意にしてくれている人なので、ギルド会館内にアニー用の調薬室を用意すると言ってくれてるんだ」

とアランは言う。


(私が亜空間収納庫を使える事を知らない?からかな?)

と思い、強盗に奪われる事は無いと説明しようとして口を開きかけたが…


(あ、いや。考えてみれば、薬草を仕入れるために冒険者ギルドへ行く事もあるし、冒険者ギルドの調薬室へ通って作る方が合理的か?)

と思い直した。


「因みに、ランドル王国では薬草の類は女子修道院で栽培されていて、低級冒険者に収穫手伝いの依頼が出される事がある。

ポーション自体が冒険者ギルドの取り扱いという事もあり、薬草・薬材の類も商人ギルドではなく冒険者ギルドで取り扱われている。

今後、末永く魔法薬師としてやっていくつもりなら、早めに冒険者ギルドと顔繋ぎしておいた方が良いだろう」


「そうですね…。というか、今、思い出しましたが、私、死んだ事になってるなら、ヴィヴィアンヌ名義での登録は無効になってる筈ですよね?新しく登録し直さないといけませんね」


「そうだね。早速、行ってくると良い」

アランに勧められて、紹介状を持ち、王都レンジリーの冒険者ギルドへと向かった。



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