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授業が終わる度に直ぐに廊下へ出た。
校舎から出て陽当たりの良い中庭へ降りると、余計に大勢の人の目に触れるだろうから、中庭のベンチへ陣取る。
苛めっ子を待ち構える形だ。
しかし
(…初日から衆目の前でも構わず虐めようとしてくる人達って、いるのかしら?)
と思いそうになる。
私のような根っからの善良な人間には虐めを楽しむ感性が理解できないのだ。
だが世の中には私が理解できない性悪もいるのだという事だけは理解できている。
間もなく、そうした性悪説を立証するかのように…
同じクラスの「男子3人、女子4人」のグループがニヤニヤ笑いをしながら、私の後を付いて中庭へ出てきた。
そして
「なぁ、田舎の家って、便所と厨房が直ぐ隣にあるって本当か?」
「臭そう〜」
「汚ねぇ〜」
と男子3人がこちらを見ながらお喋りしだした。
無視したかったが
(ここは教室じゃない、クライメイト以外の人目が有る筈)
と思い直し
「それ、私に言ってるんですか?」
と尋ねてやったところ
「うわっ、こっち見やがった」
「キショッ」
「誰がクッサイ田舎者の平民になんて話しかけるかよ」
と露骨に嘲笑った。
(いや、話しかけたでしょ。お前ら)
「私に見られるのが嫌なら、先ずはそちらが私をみないようにすれば良いんじゃないですか」
(ホント、こういう男って「女の腐ったみたいな野郎」よね…)
「平民はホント礼儀がなってないよな」
「嫌になるよな」
「同じ空気を吸うのさえ穢れる気がする」
「居なくなれば良いのにな」
「手っ取り早く死んで欲しい」
「なんで俺達の生活圏に入ってくるんだろうな」
「駆除されないと身の程がわきまえられないって事だろ」
「自分が生きてちゃいけない生き物だって理解できてないのか」
「虫並みだな。現実認識が」
「知能も低いんだろ。虫並みに」
男子らが暴言を吐いてる傍らで
女子達は小声で
「平民は身の程をわきまえず厚かましいから困るのよね」
「ハッキリ忠告してあげると『差別された』って被害者面するし」
「ランドル人の平民女は特に男性を誑かすのが上手いから」
「分不相応が罪だと自覚できないのだから嫌になるわ」
だのと言っている。
ここはランドル王国なのに
「ランドル王国の貴族社会にランドル人が参入してきた」
事態に対して外国人のバルシュミーデ人が
「身の程知らずだ」
と嫌悪するのだから、本当におかしな事態だと思う。
それにこの人達の目付きは…
それこそアザール王国の学院内でヴィルジールが私に向けて来ていたものと同じだ。
ゴキブリでも見るような目で、死ね死ね死ね死ねと視線で告げてるようなもの…。
(…私、赤の他人からそんなにまで嫌われなきゃいけない事って、してきてないんだけど…)
実のところ、悪意には理由などないのかも知れない。
単に社会的に弱い相手をストレス発散の標的にしたくて、さも批判する理由があるかのようにこじつけるだけ。
何か悪い事をしたから嫌われて悪意を向けられているのだと思うと、最終的には「お前が生きてるから悪い」という所にまで貶められる。
(ヴィルジールお兄様の場合は「逆恨みされてる」って明確だった分、悪意の理由が分かりやすかったけど…この人達の悪意はもっとこじつけくさい理由なのでしょうね…)
溜息が出そうになる…。
女の腐ったのみたいなクズ男子3人が
「今日のうちに退学届けを出しておけ」
「養父や教師に告げ口したらどうなるか分かってるだろうな」
「大人しく尻尾を巻いて逃げれば命だけは取らずにおいてやるんだ」
と捨て台詞を吐いて、去っていくのを茫然と見送った。
ふと周りを見渡すとーー
目撃証言者となる予定の辺境伯の親戚の子達はちゃんと集まっていた。
ほくそ笑みながら
(バッチリ聞いてた)
と言うかのように頷いてくれたので少しは安心した。
しかし被虐現場を人目のある場所になるよう調整するというのも、随分と面倒くさい。
(ボイスレコーダー的な魔道具が欲しい…)
と、しみじみ思う。
リュカにーーフィリベールに聞いたところではそういう記録系魔道具は存在するらしいが、一般人はそれを使うどころか、その存在すら知らない。
(そう言えば、辺境伯の親戚の子達って「腕時計」みたいなのを付けてるけど…。アレって魔道具なのかな?まさかアレが録画とか録音できる魔道具って事は無いわよね…)
この世界には懐中時計があるが、腕時計は普及していない。
その手の近代的な道具を見ると、ついつい何かの魔道具かと疑ってしまう。
エメラインが転生者なのは確実だとして、辺境伯もまた転生者の可能性が高い。
(ヴィクトール王は「ブルクハルトが『異世界で暮らしてた頃の前世の記憶があります』と言い出した時には」とか言ってた訳だし…)
前世の記憶を頼りに近代的なデザインの道具を作る人達が意外にアチコチにいるのかも知れない。
だが現実問題。そう簡単にいかない事も知っている。
本由来の情報ではあるがーー
「魔道具師として成功した人達は皆、光属性と地属性を持っていた」
らしい。
「錬金術師として成功するには火・水・風・地の基本四属性に加えて光属性が要る」
らしいし、マトモな物を作るには魔法属性が複数必要だ。
なので、そんなに簡単に技術革新の底上げとかは起きない世界なのだ。
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授業と授業の合間の休憩時間で暴言をぶつけられたので
(今日は流石にこれ以上は何もないよね?)
と少し油断していた。
昼食時間に食堂へ行くと、今度は食堂の配膳係の職員が差別行動をとった。
ランチをもらおうと列に並んで順番待ちして、順番が来たのに、係のオバチャンが私を無視して、私の後に並んでいた人にランチを手渡したのだ。
「………」
思わず言葉を失って苦情の文句すら言えなかった。
私の後に並んでいた人にランチを手渡した後は、更にその後に並んでいた人へとランチを手渡す。
完全に私の存在を無視している。
意地悪そうな見た目のババアという訳ではない。
一見、普通の、人情味すらありそうな
人の良さそうなバルシュミーデ人の中年女…。
(こんな普通に見えるバルシュミーデ人の平民ですらランドル人を見下して、なんの罪悪感すら持って無さそうな澄ました表情で差別するのね…)
と、この国のバルシュミーデ人達の性根が分かって、胸糞悪くなった…。




