↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/100

75:間話

挿絵(By みてみん)


【side:ブルクハルト・クンツ】


長年の胸のつかえが取れた。


俺は妻の赤眼を「ルビーのようだ」と思っていた。

アザール人どもの赤眼と違い…

何故愛しい者の赤眼は、こんなに崇高で美しいのだろうかと…

日々その美しさを讃えたいくらいに好ましく思っていた。


しかし、このままではーー

(リリアンは40かそこらで病気になって40代半ばには死んでしまう…)

と俺は知っていた。


リリアンの母親ーーというか、リリアンの肉体のオリジナルであるレベッカ・ベニントンが、40歳より少し前から不治の病を患っていたのだ。

レベッカの死因は夫と息子の戦死を知っての上での自害だったが、いずれにしても彼女はそう長く生きられなかった。


リリアンの肉体のオリジナルであるレベッカ自体が…

当時のランドル王国王女リリー・リサと、当時のアザール王国王弟セヴランとの火遊びで生み捨てられた「取り替え子」の侯爵令嬢だった事もあり


レベッカの娘という事になっている複製体のリリアンは…

遺伝子的には

「アザール王国王弟の娘」

なのである。


赤眼が真紅に近い程、能力が高く、短命。

アザール王家に古くから受け継がれている呪い。

それが不可避に降りかかっている。


俺よりも10歳も年下の妻が俺よりも早く死ぬなど…

俺は絶対、そんな運命は許さない。

(なにが運命《アザール》だ…)


バルシュミーデ皇国の文献は過去の出来事を神秘化せず、醜悪化もせずに、ありのまま記述してきたものと定評があるが…


そうした文献に

「アザール王家の赤眼は呪いの一種であり、解呪魔法で解呪できる。ただし、アザール王国内では赤眼ではない王族は排除されるので、長生きしたいからと解呪した者達は冤罪を振り掛けられて処刑される傾向がある」

という記述があったのだ。


アザール王国で赤眼の者が解呪を受けて緑眼となった後は、すぐさま地位を返上して市井で平民として暮らさなければならない。

アザール王国では王族・高位貴族の眼が赤みを帯びていないなど許されない。


しかし、ここはランドル王国だ。


ランドル人のリリアンに解呪魔法を試さないという選択肢はない。

それには先ず

「解呪魔法を使える闇属性魔法使いを探し出さねば」

と思った。


闇属性ーー。

珍しい属性ではあるが、ランドル王国でも全くいないという訳ではない。

現に、気配隠蔽を使える闇属性の者達は国内でもチラホラ居る。


しかし魔力の質が高い者しか中級魔法を習得する事はできないのだ。

つまりは王族・高位貴族レベルの者に闇属性が居ないと、解呪魔法は習得できない。


バルシュミーデ皇国でもランドル王国でも王族・高位貴族に闇属性はほぼ生まれない。

アザール王国にだけ魔力の質が高い血筋の者に時折闇属性持ちが生まれる。


なので、アザール王家の影がランドル王国内に入り込んで来た時には瞬殺はせずに、ちゃんと拷問で情報を引き出せるように手加減してきた。

今の時代にもアザール王国の王族・高位貴族の中に闇属性の者が居るという事は確認が取れている。


ヴィルジール王子、シャルリーヌ王女、そしてヴィヴィアンヌ公女が該当者だ。

どうやら先王の側妃の家柄が闇属性を生み出しやすい血筋で、それが王族・公爵家の魔力の高さと合わさっている。


(拉致してきて、中級闇魔法を習得させる訓練をさせてやるのも良いかも知れないな…)

と密かに該当者達の身辺を探らせていた。


中でもヴィヴィアンヌ公女は(元王女は)その血筋に相応しい待遇を受けてきていないので交渉次第ではアザール王国を捨ててランドル王国に定住する可能性も高いと思い、目を付けていた。


同じ年頃の少女の戸籍を手に入れておけば、それも交渉に使えるだろうと思っていた。


衝撃的だったのは

「ヴィヴィアンヌ公女が王都内を徘徊して呪物を探し出し、解呪して回っている」

という情報を陛下から頂いた事だ。


「解呪魔法って傍目から見て分かるものなのですか?」

とビックリした。


「王城の地下遺産庫の魔道具はすごいだろ?お前のとこの奥方が技術復興して製作してくれると影全員に配給してやれるんだがな」

と言われ


「善処します」

と答えておいた。


魔道具製作は光属性と地属性が必要だと聞くが、リリアンはその両方の魔法属性に適性がある。

と言うか、俺の嫁は優秀で、闇属性以外の属性全てに適性がある。

オリジナルのレベッカから受け継いだ才能だ。

自分自身を解呪して自分自身の寿命を延ばす、という事だけができないだけで、俺の嫁は魔道具製作の才能まで受け継いでいる。


レベッカが学生時代に製作したという

「魔法攻撃無効化魔道具」

をリリアンは出産後からよく作ってくれるようになった。

我が家の収入源の一つだ。


ブライトウェル領は樹海に面した辺境にあり、常に魔物の脅威に晒されているので

「一番怖いのは、眠らせようとしたり、味方同士殺し合わせようとする精神干渉魔法だ」

という事を冒険者達も騎士達もよく分かっている。


なので、樹海に入る者達は、魔法攻撃を無効化する魔道具を身に付けるのがもはや常識となっている。


リリアンが作る魔道具は質が良くて高値がつく。

最近は録画再生魔道具なるものを開発してくれて、それが権謀術数渦巻く陰湿な宮廷内誣告を暴く切り札にもなっている。


本当にできた嫁だと思う。

俺はリリアンのためなら何でもできる。

鬼にでも悪魔にでもなれる…。


勿論、人倫に反する行為を行う必要がある時は

「絶対にリリアンにバレないようにやる」。

怖がらせたくない。

しかし俺は善人になどなれない。

俺が気を抜ける程、この世の中は甘くないのである。


一時は生存が危ぶまれたヴィヴィアンヌ嬢だが。

アザール王国との国境を越えた際、騎士団に発見されてホッとした。


更にヴィヴィアンヌ嬢の解呪能力が確かなものだった事もあり、やっとリリアンを赤眼の呪いから解放してやれたのだ…。


長男のリチャードが自分の遺伝で赤眼で生まれた事を、リリアンはずっと気に病んでいた…。

それが解決して、リリアンが心からの笑顔を浮かべるようになった事で俺も安堵できた。


まぁ、長男に対しては

「男なのだから自分で覚悟して人生を切り拓けば良い」

と思っていたが…

リリアンが気に病むので俺も気にかけているフリはしていたのだ。


基本的俺は息子達に対して余り心配しないたちだ。

男は案外逞しく育つ。

放置してても大丈夫。

しかも双子だし、助け合ってやっていく事だろう。


リチャードとチャールズ。

双子の息子達が生まれた2年後に、娘が生まれていたのだが…。

その娘の時は早産となり、未熟児として産まれ、一歳になる前に死んだ…。


リリアンは病弱に生まれついたシャーロットを回復させようと、治癒魔法を頑張って習得した。

しかし努力虚しくシャーロットは亡くなり…

「光属性の治癒魔法では、病原菌やウィルスを殺せない…。怪我しか治せないの…」

と涙ながらに言われて、流石に俺も胸に応えた…。

二度と泣かせたくない、と思った。


リリアンのほうも

「二度とあんな辛い想いはしたくない」

と思ったのか…


その後、リリアンは避妊用の茶を飲むようになってしまい、我が家の子供は双子のみとなった。


ウチの双子はまだ13歳。

ヴィヴィアンヌ嬢よりも2歳年下なのだが…

「闇属性の子が息子嫁に来てくれたら、孫の健康面も安心だろうな。というか、リリアンはまだ若い。3人目、考えてくれないかなぁ…」

と思ってしまう。


その息子嫁候補のヴィヴィアンヌ嬢。

陛下のご厚意で魔法学院に在籍できるようになったが

「授業免除の特例適用を受けたい」

と言ってるらしい。


陛下の舅親のアラン・チャニングの話では

「ポーション作りで身を立てたがっている。多分、政略結婚を避けたがっている」

との事。


「なら、うちが後ろ盾になる事が決まってるし、魔法薬の商売でもうちが冒険者ギルドに口利きしてやろう。

ついでに甥姪や従兄弟の子達を使って『虐め現場の目撃証言』をさせ、特例適用の後押しをさせよう。

うちの双子らは学院は高等部から入学するとか言って、うちの騎士団で訓練に明け暮れてる脳筋だが、ヴィヴィアンヌ嬢の魔法薬師業の弟子兼用心棒として送り込んでやろう」

と思った。


チャールズはヴィヴィアンヌ嬢をどう思ったのかは知らないが、リチャードの方はヴィヴィアンヌ嬢に対して感謝と共に尊敬の気持ちを持ったのが傍目にも分かった。


双子はリリアンの才能をある程度受け継いでいる。

リチャードは地属性と火属性と光属性の適性があるし

チャールズは風属性と水属性と光属性の適性がある。


リチャードはリリアンの才能を受け継いでいて魔道具作りの才があり、リリアンの魔道具作りを手伝っていたので、ヴィヴィアンヌ嬢が魔道具作りに興味があるなら、ある程度教えてやれる筈。


うちの子達は優良物件。

政略結婚が嫌な令嬢も思わず惚れる可能性が高い。


俺は明るい未来への期待で胸が熱くなった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。