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挿絵(By みてみん)


ランドル王国の王立魔法学院の良いところは

「病気療養中」

「登校すれば虐められる」

「働いて家族の生活費を賄わなければならない」

などの事情ある学生に対して

「試験だけ受けて、高成績を出せば進級・卒業できる」

という制度を施行してくれているところだ。


出席日数は重要視されない。

出席日数よりは成績と人間性。

授業態度だけでは分からない人間性の部分が監視・調査され、評価へと繋がる。


なので

「病弱です。持病があります」

と証明してくれる医術師の診断書を提出すれば、試験の日だけ登校するので済んでしまう。


しかし

「病弱設定は不便だろう」

とアランに反対された。


「元平民が伯爵家の養女になった、という話が広まっている以上、登校すれば確実に虐められるので、証言してくれる人達を付けるから、一応登校してみてくれないか?」

と言われた。


そう言われてみればそうだ。

「そうですね。『病弱なのにポーション作りしてる』となると矛盾しますね。しかも薬草採取に自分で出向く時もあるし。出歩いてる所を目撃されると、診断書を書いてくださる医術師に迷惑がかかりますね」

と納得。


「虐められた!」

という実績を作るためにも、ちゃんと登校は必要だ。


そんな訳で、ランドル王国の王立魔法学院へ通学してみる事になった。

編入、という形になるので本来なら編入試験を受けて合格するべきだが…

アンナ・チャニングは

「解呪魔法の腕を認められて伯爵家の養女になり、王家秘蔵のアンティークジュエリーを解呪した功績で特例で編入が認められた」

のだ。


勿論、「アンナ」は「ヴィヴィアンヌ・シャリエール」とは国籍も身分も全くの別人なので、クリストフとジョシュアの両名は私の近くには寄ってこれない。

全く面識のない赤の他人設定だ。


それなら

「虐められた!」

という目撃証言を誰がしてくれるの?

と疑問に思った訳だが…


その点はブライトウェル辺境伯がちゃんと手を回してくれていた。

辺境伯の妹の子やら従兄弟の子やらが学院に在籍している。

そういった辺境伯の親戚の子達が

「クレーバーン伯爵令嬢が××××から虐められた!」

と証言すべく側に付いて監視する方針らしい。


学院内で私に話しかけたり親しくしてもらえる訳ではない。

虐められても庇ってもらえない。

あくまでも目撃証言のための見守り。


事前に顔合わせは済んでいるので目撃証言者達の顔は覚えた。

「苛めっ子を刺激するのは彼らがこちらを観察してくれてる時」

に限定しなければならない。


ブライトウェル辺境伯が表立って私の後ろ盾につくのは

「クレーバーン伯爵令嬢が卑怯な学生達に虐められたのを親戚の子らが目撃証言した後、同情心から味方を名乗り出る」

という順序を経てからだ。


授業免除の特例適用してもらうためには、先ずは

「虐められた!」

という実績がいる。

友達になってもらえないのは仕方ない。



「いよいよか…」

と溜息つきつつ登校早々職員室へ出向いた。


学院長だけはランドル人が務めているらしいが…教員は見事にバルシュミーデ人だらけ。


「平民さんかぁ〜…。しかもランドル人の…」

ボソッと呟いた担任の声から


(ランドル人の平民は必ず虐められるっていう認識なんでしょうね…)

と学院の暗黒面が垣間見えた。


「…怪我させられる前に、授業免除の特例を適用してもらえると良いね」

と小声で担任がアドバイス(?)してくれた。


(既に何人も特例適用で逃げてるのかな…)

と、他の虐められっ子の存在が気になったが…


「こっちだよ」

と言われて担任と一緒に教室へ入った。


教室内の生徒達…。

クラスメイトの顔ぶれはバルシュミーデ人か、バルシュミーデ人とランドル人の混血児か、といった様子だった。

見るからにランドル人、という容姿の人は一人もいない。

既に排除済みのようだ。


混血児風の人達は意外に好意的な視線を向けてくれているが…

如何にもバルシュミーデ人、という容姿の人達は親の仇でも見るかのように睨みつけてくる。


「編入生のチャニングさんです」


「アンナ・チャニングです。宜しくお願いします」


(…特定の標的への悪意って、同調圧力のキツイ対人関係内で増幅されるのよね…)

と、前世での体験を不意に思い出した。


(何故か多くの人間が学生時代には「イキがっていないと死ぬ病」に罹患してて、ナメられないように必死になってしまうのよね…)


強迫観念的強気状態、とでも呼ぶべき不毛な心理状態。

アレと同じものがこの教室にも有った。

しかも標的は自分、という嫌なシチュエーションで。


教室内の空気はギスギスしているが…

それでも教師の前で露骨に編入生を虐めるつもりはないという事なのか、不気味なくらいにシーンと静まり返ったまま授業が進んだ。


内容はアザール王国のものとほぼ変わらない。

教科書は全て目を通した。

予習はバッチリ。

なんなら飛び級ができるなら飛び級したいくらい、1年生分の学習は頭に叩き込んである。


しかし

「この問題、分かる人いますか?」

と問われても手を挙げたりはしない。

賢さをひけらかすと生意気だと思われるからだ。


そんな私の無難願望は

「チャニングさん。この問題を解いてみてください」

という言葉で破壊された。


急にクラスメイト達がお喋りを始めて教室内がザワついた。

「何かズルをしてるんじゃないか」

「平民が」

「こんな所まで入り込むなんて」

「厚かましい」

「面の皮が厚過ぎる」

などと聞こえた。


一応、誰が何を言ったのか記憶しておく。

と言っても自己紹介してもらっていないので名前は分からない。

「〈鑑定〉」

で名前を読み取った。


自分自身を鑑定する時とは違い、他人を鑑定して出るのは名前と年齢くらい。

魔法属性や魔力・体力等は表示されない。


それでも名前が分かるのは有り難い。

親の爵位までは出ないが、姓が判れば見当くらいつく。

告げ口すれば確実に何処の誰か調べ上げてもらえる。


前世の母国語で連中の名前と連中の暴言を一言一句間違わずにメモしていく。


教室内で虐められても証言者が集まらないだろうから、出来るだけ教室へは寄り付かず、廊下や食堂等の共有スペースで暴言・暴力を引き出さなければならない。



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