↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/100

71

挿絵(By みてみん)


「この世界のシナリオ破壊はかなり進んでいて、今更アンタに限らず、って事みたいだし、私だけシナリオに忠実に動いても無駄みたいだから、敢えてシナリオをぶち壊す動きをしてるアンタにこれ以上文句は言わないわ」


エメラインにそう言われて

「シナリオ破壊?」

と首を傾げた。


「私はアカオトーー『暁月の乙女シリーズ』と呼ばれる乙女ゲームを一作目も二作目も三作目も全部プレイしてるの。特定の作品だけをコンプリートした人達よりも、総体的に見て、この世界に詳しいわ」


「そうなのね?」

思わず疑問系で相槌を打ってしまう。


「…悪かったわね。礼儀を無視した話し方をして。…国王陛下のご命令だったのよ。貴女の本音を引き出して貴女の人間性を看破したいという事らしいから」


「「「「「「え?」」」」」」

私は勿論、クリストフ達少年少女が思わずといった様子で声を上げて、皆の目がヴィクトール王の方へ向かう。


「…正直、信じたくないものだな。昔、ブルクハルトが『異世界で暮らしてた頃の前世の記憶があります』と言い出した時は、ほんの興味本位で聞いてた筈だったんだが…。

次いで『この世界は乙女ゲームの世界だ』とか言う連中が現れると、流石に拒絶反応が起こるだろう?異世界の女どもが遊ぶ『ただのゲーム』の世界で俺達は生きてて、しかも勝手に人格や寿命まで決められてるだなんて…」


国王の言葉には皆が一斉に

ウンウン

と頷いたが…


私は冷静に

(…大人達とエメラインは、私の事を「要観察対象だ」って認識してたのね)

と理解した。


大人達ーー高位貴族とその妻の方々は、驚いた風もなく私をジッと観察しているようなので

「私は、ゲームのシナリオがどうとか全く知らずに、単に『死にたくない』と思ってきただけなんですけど…」

と自己申告しておく。


エメラインは

「…先ず言っておきたい事は、『暁月の乙女シリーズ』の一作目、二作目、三作目の時代設定が順次遡っている事。

一作目は今の時代よりも40年後くらい先の未来の話になるの。そして二作目はいま現在。三作目は40年前くらいの過去。

普通はシリーズものって、後から出る作品の方が時代設定も後の時代になるものって思いがちだけれど、このシリーズの場合は逆。

だからこそ一作目の中で描かれた設定が、二作目・三作目の中で『絶対』になるのよ。

一作目で『ランドル王国は侵略された』『アザール王国は乗っ取られた』という出来事が既に起きてる設定だから、それはシナリオ破棄できないの」

と、この世界の摂理を語った。


「…シナリオには変えられる部分と変えられない部分がある、という事ね?」

私が尋ねると


「そうよ。基本的に国の命運は変えられず、人の生き死には変えられる部分ね。

三作目ではヒロインの異母兄が亡くなって、ヒロインはクレーバーン公爵家の後継令嬢ポジションだったけれど…。

実際には亡くなっている筈の人が生き残っていて、ヒロインはバッドエンドになって、侵略はその時には起きなかった。

けれど結局はその後、ランドル王国がバルシュミーデ皇国に侵略されたのは皆も知るところよね。20年以上も後になってからだけど」

と答えてくれた。


「…今は、二作目の時代?」


「ええ。どんなルートでも必ず死ぬ筈のヴィヴィアンヌが生き残る可能性はあるけれど、アザール王国が乗っ取られて、アザール王国の実権がバルシュミーデ人へと移るという設定は変えられない。

何せ一作目ではバルシュミーデ皇国はバルシュミーデ帝国として登場しているもの。近隣各国を属国化している帝国内で、権力争いの内乱が起きて、属国も巻き込んで第一皇子派と第二皇子派が潰し合う物語になってるわ」


「バルシュミーデ帝国…」

バルシュミーデ系の人達は複雑な表情をしている。


エメライン自身、父親はバルシュミーデ人。

バルシュミーデ人とランドル人の混血児なのだろうに、客観的な視点で語っているように見える。


(エメラインのアイデンティティはバルシュミーデ人でもランドル人でもなく、前世のまま、という事なのかしら)


そこで年配の男性が

「私は、エメライン嬢が語ってくれた三作目のヒロイン、クラリッサ・チャニングの『死んでる筈の異母兄』アラン・チャニング。クレーバーン伯爵。元クレーバーン公爵だ。宜しく。ヴィヴィアンヌ嬢」

と口を出してきた。


国王も辺境伯も横槍を入れないという事は、この人が私に話しかけるのは予め決められた流れなのだろう。


「ヴィヴィアンヌです。宜しくお願いします」


「姓は名乗らないのか?」


「多分、私、祖国では『死んだ』という事になってて、貴族籍から名前を削除されてる筈なので、多分、今は平民です」

正直に自分の状況を述べると


「賢いな。状況をよく理解できている」

とクレーバーン伯爵が微笑んだ。


40代くらいの年代に見える人だけど…

40年前くらいが舞台設定のシナリオ内でヒロインの兄だったという事は今現在の年齢は60歳近い筈。

(王族・高位貴族の老化抑止ってスゴイものがあるなぁ)

と改めて思う。


「異母妹の母親はアザール王国の出身で、改易されたバルビエ子爵家の者だと分かっている。

君の母方の祖母の実家に嫁入りしていた君の曽祖母もバルビエ家の者だという事だから、私は君と遠縁の親戚になるんだ」


「…この国で国立劇場の女支配人をしていたというバルビエ家の女性の姿絵を見ました。クラリッサさんとは、その女性の関係者でしょうか?」


「ああ、そうだ。クラリッサはレティシア・バルビエの娘だよ」


ゲームの世界だからなのか、意外に世間は広いようで狭い。


エメラインが

「この世界のキャラは似た顔の人が多いのよ。二作目の悪役令嬢ヴィヴィアンヌと三作目のヒロイン・クラリッサが似てるし、一作目のヒロイン・イザベルと三作目の悪役令嬢レベッカも似てるの。

攻略対象もまた然り。単にキャラデザの人が書き分けが苦手で、髪型とか瞳の色を変えただけで同じ顔を使い回してるのかと思いきや、実は血縁関係があって、隔世遺伝で似た顔になってたりする訳よ」

と解説を加えてくれた。


「しかも、この世界は意外に『人体複製魔道具』みたいなクローン人間作製機が使われてて、そっち関係の血縁関係も混ざってたりするから、『血縁者こそが味方』とか思うと、血縁者がシレッと裏切って敵対してくるから油断できないのよね」


(そういう事をシレッと両親の前で口に出せる神経がスゴイ…)

と少しエメラインの独善性が羨ましく感じられた…。


「…私が異母妹のクラリッサを嫌っていた理由は彼女が魅惑魔法の類を使って周囲の人間の好意や悪意を操っていたからだ」

クレーバーン伯爵が述懐する。


「そう言えば、魅了は自分に好意を持たせるだけなのに、魅惑は好意と悪意を操れるんでしたね。いずれにしても、自己防衛以外の目的で他人の心を操るのは酷い…」

と正直な感想を述べたところ


「いや、自己防衛でも他人の心は操ってはいかんだろ」

とヴィクトール王にツッコまれた。


「…私はヴィヴィアンヌ嬢をランドル人孤児として養女に迎えたいと思いますが、陛下も皆様もご賛同頂けるでしょうか?」

そう言って微笑むクレーバーン伯爵が良い人なのか悪だくみしてる人なのか、私には判断が付かない。


「その件に関してだが」

ブライトウェル辺境伯が口を挟んだ。


「ヴィヴィアンヌ嬢がこの国にとって保護すべき有能な人材かどうか判断するためにも、もう2件解呪魔法を使って見せて欲しいのだが…良いだろうか?」

とブライトウェル辺境伯が提案すると


途端にーー


その場のほぼ全員が一斉に

「「「「「「「賛成!」」」」」」

とハモって声を上げた。

どうやらそれが本題のようだ。


(…そう言えば、この人が解呪魔法目当てで私を呼び出したようなものだったわね)

そう思って、ブライトウェル辺境伯ブルクハルト・クンツを見遣ると…


彼は愛しそうに妻らしき女性と息子らしき子供を抱き寄せた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。