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挿絵(By みてみん)


魔法学の授業は今日で二回目。

前回は座学だったのに対して今回は実技。


魔法学の先生が

「魔法実践学の授業では主に身体強化の訓練をしていく事になります」

と宣うた。


男子生徒達は満足そうにウンウンと頷いている。


魔力を使った身体強化は「地力の2倍」(もしくは4倍)といった具合に「地力が関係する」。

元々の身体能力が高い方がより強くなれる。

そういう面で男子は女子よりもこと戦闘においてアドバンテージがある。

そんな事もあり男子は身体強化魔法を好むようだ。


この世界。

魔法も魔力も存在するものの…

ファイアーボールやらストーンバレットやらの攻撃魔法は

「体外魔法」

(または「外部魔法」とも言う)

に位置付けられていて、実戦で使えるものが殆どいない。


この世界の魔法は大半が

魔道具によるものか

魔力を使った身体強化。


魔道具の中には「魔剣」なるものが存在し

その「魔剣」を使って

敵にデバフをかけたり

炎を飛ばしたりできる。


一応、殆どの学生が中等部の卒業審査で

「火が出せる」

「水が出せる」

「風が出せる」

「土が出せる」

かどうか

「外部顕現魔法」

(体外魔法の基本)

の出来を審査されている。


その結果ーー

「下位貴族は魔力はあるものの外部顕現魔法が使えない」

「上位貴族は外部顕現魔法が使えるが、体外魔法を実戦で使える程ではない」

という決まりきった結論が毎年のように繰り返し出続けている。


要するに、この世界は体外魔法が廃れているのである。


その原因の一つとして

「騎士団が請け負うダンジョン内魔物の間引き作業」

が挙げられる。


「ダンジョン内で体外魔法を使うと、魔法発動時に使われる魔力がダンジョンに吸収されて、ダンジョンを活性化してしまう」

事は騎士団内で広く知られている。


スタンピードを起こさせないようにダンジョンを管理する側は

「ダンジョン内では体外魔法を使わずに戦う方が危険が少ない」

と言い、騎士団に対して

「魔力を身体強化に回す戦い方をするように」

推奨している。


ダンジョンはかなり昔から存在する。

徐々にダンジョン内での戦い方が戦闘職全体で浸透し、体外魔法は廃れていったものと思われる…。


私は王族の一員らしく魔力量が多い。

適性属性は闇と水。


闇属性は空間属性とも言う。

熟練者は転移や亜空間収納ができるようになるらしいが…

私にできるのは「浄化」と「解毒」のみ。


闇属性魔法の浄化は「汚れや臭いの原因物質の分解・消去」だ。

それで自分自身も清潔にできてしまうので、魔法を覚えた10歳くらいから衛生的に過ごしている。


水属性の適性もあるので

「水を出す」

のはお手のもの。

(魔法の練習も兼ねて)

自分で出した水を普段から飲んでいる。


とは言え

「水刃」

のような攻撃魔法は今のところ使えない。

(習ってもいないし)


内心で

(魔法はイメージ。前世のゲームのイメージがあれば、魔法攻撃も出来たりもするんじゃないのかな?)

と希望は持てる。


(水刃を放てるようになりたい。授業で体外魔法の上級編を習うのは2年生からだというし、自主練習はコッソリやりたい…)

と思う。


今日は入学五日目にして漸く魔法実践の実技授業ーー。


「皆の学習の進捗具合を見るために」

と、一年生が全員訓練場に駆り出されての授業だ。


高等部から特待生として入学してきた生徒4名のうち1人は女生徒。

(美少女だなぁ…)

と、ちょっと見惚れる。

顔だけが整っていて肌も綺麗。

見た目が良い。

高等部から入学の女子特待生の名前は確かアナイス・カンタール。


王立魔法学院の入学は筆記試験と魔力が有るかどうかの確認だけなので

「実際に魔法を使えるのか?」

までは確認されない。


今日は

「身体強化をしてから縦長の木片を殴りつけて割る」

という課題が出されたが…


女子特待生は(アナイスは)課題をクリアできず、眉を八の字にして困り果てている様子だった。


「平民上がりが…」

「あんなのがこの学院に潜り込んでくるなんて」

「みっともない」

と一部の生徒達が女子特待生を貶している声がヒソヒソ聞こえてきた。


(随分と可愛い子なのに、男子生徒も一緒になって悪口言うんだな…)

と不快に思った。


小さい頃のイジメならまだしも…

体格的にも男女差が出ている年頃になっても女子をイジメる男子というのは…

(「女の腐ったの」みたいな連中だな…)

と本気で嫌な気分になる。


パスカルが私にやってるような

「弱い者イジメを楽しむ際の男女平等」

に対して、私は卑怯さを感じてしまう。


(けど、まぁ、「平民イジメ」をする連中がいるから、貴族のアドバンテージも保たれる向きがあるのかも知れないな…。関わらずにおこう…)


見て見ぬフリをする事にした。


(皆も見て見ぬフリをするのだろう…)

と思ったのだがーー


「…カンタール嬢。大丈夫よ。魔力は有るんだから、今からでも魔力操作を覚えて、ちゃんと実技授業にも追いつけるわ」

とアナイスの味方をする女生徒が現れた。


初等部からの持ち上がり組である下位貴族家の令嬢だ。


「パラディール男爵令嬢…」

アナイスが呟いたので、暗記した生徒名簿の情報をすり合わせて

(ドリアーヌ・パラディール男爵令嬢ね…)

と判った。


それに迎合するように初等部からの持ち上がり組の貧乏貴族家の令息・令嬢らが特待生の周りに集まってきた。


「高等部の入学試験を通過できる学力があるだけ凄いよ」

「逆に完璧だったら近寄り難い」

「仲良くしようね」

だのと言っている。


(私に対する態度とは雲泥の差だなぁ…)

とモヤッとするが、気にしても仕方ない。


しかしこちらを見ながらボソッと

「王女のくせに学院内の差別を放置するなんて…」

だのと小声で言ってるのも聞こえたので

(ああ、そういうつもりなのか…)

と貧乏貴族家の連中の腹積もりが分かった。


(こちらの事情も知らず好き勝手に「王女の在るべき姿」だけは押し付けようというわけね…)

ウンザリだよな、と思う。


こちとら王女と言っても

侍女も取り巻きもおらず

家族から見放されて放置されて育ったのに…


「王族なんだから王族クラスのノブレスオブリージュを果たせ」

「持つ者の義務」

だけは押し付けてこようとする奴らが居るのが腹立たしい。


権限も与えられていない

「名ばかり高位者」

に対して

「責任だけは追及する」

という不条理が世の中には溢れている。


(初等部からの持ち上がり組は「上面の正義」しか理解できない残念な知能の持ち主ばかり、という事なのか…)


睨み返してやろうにも多勢に無勢だ。

目を逸らして、教師の方を向く事にした。


先生は他の特待生達を見ている。


高等部から入学の特待生。女生徒1人を除いた男子生徒3人。

こちらは身体強化を完璧にマスターしていた。


「流石は辺境伯家から目をかけられる人材ですね」

と独り呟く先生の言葉は真実なのだろう。


(男子3人は純粋に優秀さに目をかけられての高等部入学だったみたいね…)


身体強化に使う魔力循環の配分を目に多く回せば、魔力が見える。

と言っても、魔力持ち全員がそうだとは限らない。

「魔眼」と呼ばれる能力が予め備わってる者のみが視覚に魔力補助を付けて魔力が見えるようになる。


私は幸いにも「魔眼」持ちだったので魔力を見る事ができる。


(…あの子達は高位貴族に負けず劣らず魔力量も多いみたいだし、本当に平民なのかしら?)

と思う。


ともかく

「学院内の人達はどうやら王女の私に対して好意的ではない」

という事が入学早々に分かった(Sクラスを除く)学年合同実技授業だった。


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