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挿絵(By みてみん)


盗賊団アスクアンドレシーブのような大御所組織はこの近辺には他には居ないようで…王都までの道のりで危機的状況に陥る事は無かった。

無事に王都に到着できた。


ホッと息つく暇もなく

(王都に着いたからには、次はクレーバーン公爵領方面へ向かう商隊を見つけなきゃね)

と次の目的を脳内喚起。


商隊主が

「皆様お疲れ様でした」

と護衛の面々に頭を下げてお礼を渡すと


冒険者達は

「ギルドへ依頼達成の報告をしなきゃな」

「王都の冒険者ギルド。受付嬢が美人だからな」

「先ずは宿屋で湯浴みして身嗜みだろ」

などと笑い合っているのだが


(確かに、皆、臭いし。湯浴みしてニオイを落としてからじゃないと人と会うのは失礼よね)

と納得。


一方で、騎士見習い達は

「今度はパートランド領へ向かう商隊と連絡を取らなきゃ、だな」

「商人ギルドへ向かうか」

と話し合っている。


そんな中、正騎士のディーン・クロックフォードは騎士見習い達に

「私はエルヴェシウス閣下から賜った用件があるので同行はできない」

と告げて、クルリとこちらを振り返った。


嫌な予感がした。

ディーン・クロックフォードの視線が私をロックオンしてるように見えるのだ。

一直線にこちらへ向かってくる。


思わず

(お礼を受け取るために気配隠蔽を解いてたんだった!)

と気付き、後悔したが、もう遅い。


「ヴィヴィ嬢。パートランド公爵閣下のたっての要望により、貴方を王城へお連れする事になっています」

そう告げられて、冷や汗が出る。


有無を言わせず腕を取りグイグイ引っ張るディーンに対して

「…人違いでしょう。私は公爵閣下と面識はありません。ランドル王国の王城へ連行されるような理由は何も思いつきません」

とキッパリ拒絶するが


「貴女の方で理由がないように思えても、尊き方々のほうではそうではない。ならば、騎士は尊き方々の言い分に従うしかありません」

と取り付く島もなく引きずられ、ディーンの騎馬に乗せられてから、そのまま貴族街の入り口まで連れて行かれた…。


貴族街の入り口には警備兵ではなく衛兵が門衛をしていた。

ディーンは顔パスで通過できるようだった。


「お連れ様のボディーチェックはお済みでしょうか?」

と訊かれて


「この子は外部魔法を実戦で使える実力の持ち主だ。短槍や懐剣を取り上げて丸腰にしても、無力化はできない。よって武器は所持したままで良い。私が責任を持つ」

と言ってくれたところだけは有り難い。


通過した後で

「平民が貴族街を抜けて王城へ着くまでにボディーチェックと称して武器を預かるのが慣例化していた時期があるが、門衛がそのまま預かった品を着服する犯罪が多発した事もあって、今では武器の預かりは断るのが主流の対応なんだ」

と教えてくれた。


「衛兵って、近衛騎士ではないのでしょうか?教育が行き届いていないのですか?」


「ランドル王国の人事採用制度は旧王国時代から大幅な改正は行われていない。つまり昔から『騎士資格を取得できなかった騎士の成り損ないが警備兵団や衛兵団へ入る』という事だ。

一応、騎士団で教育は受けている筈の者達だが、所詮は『騎士資格試験に何度も落ちた者達』だ。品行方正さは全く期待できない。

近衛騎士は騎士資格取得した騎士達のうちでもエリートだ。衛兵と近衛騎士は全く違う」


「そうだったんですね…」


「騎士資格試験に何度も落ちた者達のうち、平民が警備兵になり、貴族家の縁者が衛兵になるので、警備兵より衛兵の方がプライドも高く、平民はナメられるとひたすら面倒な目に遭わせられる」


「私独りだったら短槍を取り上げられて、尚且つ『預かった覚えはない』とか言われて、そのまま取り戻せなくなってたんですね」


「そういう事だ。一応、何かあった場合には父に告げ口はするが、父はランドル人貴族なので公爵と言えど発言権は低い」


「お父上がランドル人なら、お母上はバルシュミーデ人ですよね?」


「私は父とランドル人の愛人との間の子供だ。認知されているので姓を名乗る事はできるが、家の最高権力者の義母から疎まれているので、目の前で不正が行われても何もできない事も多い」


(…善人なんだろうけど。…この人のこういう発言、私が王城で不当な目に遭っても「庇ってやれないぞ」と今の時点で言い訳してるって事よね…)


「…人には事情がありますからね。こうやって連行されても私は貴方を恨みはしません」

ディーン・クロックフォードが聞きたがっているであろう言葉を口にすると


「理解してくれて有り難う」

と苦笑が返ってきた。


改めて顔を見て

(イケメンよね…)

と思う。


リュカにーーフィリベールに似ている顔立ちではあるものの…

髪や瞳の色味はバルシュミーデ人やランドル人の貴族に多い色だ。

光に透かした蜂蜜のような金髪。紫がかった青眼。


(そう言えば、フィリベールお兄様はアレからどうなったろう)

シーカーがしっかり者だから、ちゃんと前世からの誓いの通り

「世界の危機から人々を護る(大事な人を犠牲にせずに)」

という方向で動いていく事になるのだろうけど…


革命の危機も特級禁忌魔法の危機同様に王族には降りかかる環境だ。

(無事でいて欲しいな…)


騎乗して進むと、ゆっくり進んでいるつもりでも、すぐに貴族街を抜け、王城の入り口へと辿り着いた。


ここでもボディーチェック云々が言われたが、ディーンの

「私が責任を取る」

で黙って通してくれた。


王城内は

(流石は歴史ある建物…)

と思うくらいに古い。

勿論、改築・改装で手が入っている部分は新しいが。


ランドル王国の前身の魔道王国だった頃から、この城は「王城」だったのだ。

(この城には隠し通路や隠し部屋がありそうだけど、それ以前に度重なる改築で構造が複雑化してそうね…)


門を抜けて城の敷地内に入ってからも、ちょっとした迷路並みに複雑に進んでいる。


「この先が施政所区画だ。執務中の宰相がいるので、先ずはそこへこちらの訪問を知らせてもらう」

任務遂行の達成報告ですら、国王へ上げる前に先ずは宰相へ上げるものらしい。


(「忙しい」とか後回しにされたら、何時間でも待たされるんだろうな…)

と不安に思ったことが表情に出ていたのか


「大丈夫だ。おそらく国王陛下との謁見は明日以降になる。別にアザール人だからと差別されてる訳ではなく、これが通常モードだ」

とディーンが王城の常識を説いてくれた。


「そうなんですね」


「客室へ案内されて、王城で一泊させられるだろうから、今のうちに必要な物をメモに書き出しておくと良い。後で侍女が揃えてくれるだろう」


「謁見って、こういう冒険者装束でも不敬になりませんよね?」


「平民なら服装で不敬に問われる事はない。貴族だと話は別だ。特に外国人貴族が身分に相応しくない装いをしてあくまでも貴族である事実を隠そうとするのは、何か秘密裏に特殊軍事行動をとっているのではと不審の種になる。

ドレスの類は着付けも侍女がしてくれるので、どういったデザインのものを用意して欲しいのか、ちゃんと話しておくと良い」


「…私を貴族だと確信している物言いですね?」


「パートランド公爵から渡された手配書に載っていた『ヴィヴィアンヌ・シャリエール公爵令嬢』に、姿も水魔法属性も該当する」


「あ〜…。そうですか…」


普通の国の価値観では、貴族令嬢が冒険者に扮するなどあり得ない!とか思われるのだろうに…

(ここでもバルシュミーデ風の価値観が浸透しているのね…。公爵令息だろうが公爵令嬢だろうが冒険者登録していて休日には魔物を狩りを楽しむので、貴族が冒険者に擬態してても誰も驚かないのだという…)


「一昔前ならランドル王国で貴族令嬢が冒険者稼業に従事するなどあり得なかったらしいが…今の時代は元貴族が盗賊団の幹部や首領を務めるご時世だからな」


「そうなんですね」


「衛兵が監視に付くが、何かあったら私に言ってくれ。私も所属騎士団が異なるので中央《ここ》では客分扱いだ。

君の宿泊する客室の向かい側の部屋に居るので」


「分かりました。お気遣いありがとうございます」


王城では、呼び出されて連れて来られたのに、待たされて監視付きで宿泊させられるような人が多いのか…

私達以外にも何人かの人達が謁見待機用宿泊区画で過ごしていた。


(連行されてきても、偉い人達とは会えずに待たされるというのなら、会える時になって連れてくれば良いのにね)

と不合理を感じる。


ハァァーッと溜息を付いて、落ち着かない一夜を明かした…。



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