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「バルシュミーデ皇国の支配下に置かれてこの方、ランドル王国内の盗賊団の戦力が上昇していて、騎士団すら負ける事があるらしい」
と噂を耳にしてゾッとした。
ランドル人の元貴族が大勢平民落ちしていて、尚且つ官吏試験に合格して中央官吏・地方官吏として就職しても
「ランドル人だから」
という理由で出世できない。
そんな社会環境だ。
魔力を持つ元貴族の血筋が大勢平民落ちして燻っているのだ。
騎士団の戦闘力を上回る盗賊団が誕生してもおかしくない。
(でも「義賊」を自称しながら、一般人を襲ってるのね…)
という疑問が残る。
要は政治的な恨みよりも
「弱い者から奪え」
とばかりに
「略奪欲を優先している」
という事だ。
もしも盗賊に遭遇したら
水刃で足を切りつけてやれば
脅威度も下がるだろうし…
「殺さなければ殺される」
状況は避けられる筈。
それでもいよいよ
「殺さなければ殺される」
状況になってしまったなら
その時は覚悟を決めて殺そう…。
そう決意した。
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国境近くの町へ騎士団の巡回対象らしく、騎士をよく見かける。
と言っても、今やランドル王国の騎士枠はバルシュミーデ系帰化人で占められているらしく、皆見るからにバルシュミーデ人。
バルシュミーデ皇国では
「貴族家の人間しか騎士にはなれない」
とかで平民出自の騎士団員は従士・従騎士なのだと聞いた。
一方でーー
ランドル王国では
「騎士資格試験に受かれば平民でも騎士になれる」
システム。
だからなのだろう。
バルシュミーデ皇国では騎士になれない平民のバルシュミーデ人が大量にランドル王国に流入してきて騎士になっている。
それと同じ現象は文官分野でも起きているらしく…
ここ十数年で官吏の多くがバルシュミーデ人の元平民にすり替わっているらしい。
(ランドル人の優秀な元貴族達は不満に思う筈よね…)
と思う。
しかし
「優秀だから」
とランドル人を採用すれば
「ランドル王国の国家権力をランドル人の手に取り戻そうと決起する」
可能性があるので、国側も
「優秀であればあるほどランドル人をランドル王国の公務員に採用できない」
状態なのだろう。
(ああ。だからなのか…)
アザール王国で優秀な元孤児の人材の多くはランドル系帰化人だった。
(ランドル王国内ではどんなに優秀でも起用してもらえないから、アザール王国へと優秀なランドル人を送り込んでいるのかもね)
と思ってしまう。
まぁ、その場合、ランドル人の都合だけでなくバルシュミーデ皇国の側の都合もありそうだ。
十七年ほど前ランドル王国へバルシュミーデ皇国の侵攻軍が強襲できたのには、当時ランドル王国と友好国だった筈のアザール王国の協力があった事はバルシュミーデ皇国によって近隣国へ広く知らしめられた。
樹海越えした強行軍と、アザール王国内を通過してランドル王国王都レンジリーへ攻め入った本軍。
バルシュミーデ強行軍の樹海越えにはアザール王国が横流ししたランドル王国の魔道具がふんだんに使用されていた。
バルシュミーデ本軍はアザール王国内を通過してランドル王国の国境軍パートランド騎士団を強襲。壊滅状態に追い込んで王都レンジリーに乗り込んでいた。
アザール王国は当時友好国だったランドル王国を完全に裏切っていた。
その後
「アザール王国は決して信用してはいけない国だ」
と近隣国にバレてアザール王国は国際的に孤立する羽目になった。
そうしたランドル王国に対する裏切りの代償として、アザール王国はバルシュミーデ皇国との間にちゃっかり不可侵条約を結んでいた。
その時の不可侵条約があるので
「バルシュミーデ皇国はアザール王国へと軍隊を送って攻め込む事はしない」
のだ。
その代わりのようにバルシュミーデ皇国はーー
軍隊を使わないイレギュラー侵略を年々陰湿に進めているらしく
「大勢の優秀なランドル人をアザール王国へと送り付けて内部からアザール王国を乗っ取るイレギュラー侵略においてランドル人と共闘する」
という手口を取っているのだと思う。
ランドル人の優秀な人達の出世欲は
「アザール王国内でなら出世できるかも知れない」
という方向へ誘導されている訳である。
(アザール王国内でバルシュミーデ人とランドル人って仲良かったよね…)
という事実を思い返すと、しみじみアザール王国は詰んでる事が分かる…。
それと同時に
(国際政治ってホントえげつないなぁ…。バルシュミーデ人の偉い人達ってクズしかいないのかもね)
と思う。
カークランド公爵…。ジョスランの実の父である、あのオジサンも実はすごく嫌な大人なのだろう。
(私…。クリストフの事は好きだったけど、彼がバルシュミーデ人で、ランドル王国の公爵の養子だって点では、やっぱり色々引っ掛かってたんだろうな…)
と自覚してしまう。
自国が外国人に支配されてる状態というのは国民からすると不安が大きい。
だから外国人支配者層の方でも国民の不安を煽らずに済むように現地人と婚姻して混血児に後を継がせたり、国籍を帰化したりするのだろう。
支配の難易度を少しでも下げるために。
でもだからといってバルシュミーデ人達が
「我々はバルシュミーデ人である」
という国籍アイデンティティを捨てて現地人と同化する訳ではない。
被支配下の国民に対して
「ランドル人のくせに」
とか
「アザール人のくせに」
と差別心を持ち続けて、そのうち
「同じ人間だ」
という事さえ忘れていくのかも知れないし…
そういった
「優等人種」
「劣等人種」
分類での人種差別はエスカレートしてしまいがちだ。
「人種差別はいけない」
といった綺麗事を綺麗事で終わらせずに
「多人種混在国のベーシックスタンダードにしよう」
と思ったなら
「支配者層が一方的に被支配者層に対して生殺与奪権を持つ」
状況を覆して
「被支配者層も支配者層に対して生殺与奪権を持ち返す」
事が必要になる。
生殺与奪権が一方的だと
人類は人種差別をやめられないのだ。
前世の地球世界だとーー
特殊軍事工作面において劣っている弱者国は
「敵対国に一方的に生殺与奪権を握られて搾取されながら、劣等人種扱いで凡ゆる不利を強いられても、そうした不条理が存在がしていないかのように、傲慢・強欲な敵対国の悪辣さを被害国自ら隠蔽して敵対国に媚びる」
ような在り方を強いられていた。
「そのうち地球世界の人類は滅亡するに違いない」
と度々思ったものだし、今でもそう思う。
誰も彼もが
「一方的に生殺与奪権を握る強者」
に媚びて、強者の罪を誰も事実指摘せず
強者の罪が認識されなくなった人類社会。
そんなものがーー
生物の頂点に立ち続けていける筈がないのだ。
(そう言えば、シーカーは、この世界が異界の魂から「乙女ゲームの世界だ」と認識されてると言ってたな…)
それだと、この世界が滅んでしまったなら
「また、あの地球世界へ戻らなければならなくなるのだろうか?」
と不安を感じてしまう…。
もしも
「この世界で貴族としてノブレスオブリージュを持ち、悩み苦しみながらも民の幸せに貢献すれば、二度と地球世界には戻らなくて良い」
と神様が現れてくれて、約束してくれるなら…
(私は貴族に戻るかも知れない…)
そう思うくらいに
私は二度と地球世界には戻りたくない。
不自然なくらいに
人々が乗っ取り侵略者の悪を指摘せず認識もせず
その代わりのように
国民が敵意の矛先を
弱者国民へと向ける
陰湿な内ゲバ社会。
あんな陰湿社会には
あんな陰湿国には
あんな陰湿世界には
もう二度と生まれたくない。
悪意の棘を刺され続け
「自分に何か問題があるからなのだろうか?」
と自己批判させられ続ける
あの自己否定強制環境には
もう二度と囚われたくない。
「あの世界に戻らずに済むのなら、この世界で私は出来る限りの努力をする!」
と、そう断言出来るくらいに
私はあの地球世界が嫌いで堪らないのだ…。




