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挿絵(By みてみん)


「リュカ…」

私が声をかけると


リュカに扮したフィリベールは目を大きく見開いて絶句したーー


次の瞬間には

私の喉首に鋭い短刀を突き付けて

「…何が目的でヴィヴィアンヌに化けた?」

と詰問してきた。


(…シーカーの言う通り「行方不明者は偽物だと疑われる」のね…)

とガッカリしながら


「…私、正真正銘ヴィヴィアンヌなんですけど。…何故『化けた』って思うのかを聞かせてくれる?」

と質問してみたところ


「質問しているのは、こちらだ。お前はただこちらの質問に答えろ」

と取り付く島もない。


シーカーが

「…コヤツらがお前を死んだと見做す根拠は『生き物を転移させれば無事では済まない』という思い込みゆえだ。

その思い込みを壊すために、今からお前達の位置を入れ替える。

お前は位置が入れ替わったタイミングの混乱に付け込んで短刀を『転移』で盗め」

と言ってくれたので


(了解)

の意味を込めて頷いた。


フィリベールが急に頷いた私を不信の目で見て、目が合った瞬間ーー

位置が入れ替わった。


フィリベールも私も互いに背を向けている状態。

いち早く振り返り、彼の手元の短刀を盗み、亜空間収納した。


「!!!」

フィリベールは驚愕しながらも、大人しくはなってくれず…

武器が無くなっても、殺意満々で蹴りを放ってきた。


避けるのが間に合わなければ側頭部の骨が陥没してたかも知れない鋭い蹴り。

咄嗟にこちらも身体強化で応戦するが…余裕はない。


「シーカー!何とかしなさいよ!」

と私が言うと


「【泥棒の極意】を使って時間停止させろ!」

と怒鳴られた。


「我に従え【泥棒の極意】!」

と叫ぶと、やっとフィリベールが停止してくれて、殺される危機を脱する事ができた。


「フィリベールから『ヴィヴィアンヌに似た不審者への殺意』を盗め」

シーカーの命令に


「分かったわ」

と従い


言われた通りに盗むと、お次は

「一旦、【泥棒の極意】を待機状態にして時間停止を解け。また襲われたら、また時間停止させろ」

と指示され、それにも大人しく従った。


殺意を盗んだせいかフィリベールの表情から険しさは消えてくれた。


「…リュカ」

再び話しかけると


「…何をした?…お前、何者だ?」

と睨まれたが今度は覇気が無かった。

辛そうだ…。


「だから。ヴィヴィアンヌです。リュカに、…フィリベールお兄様に用事があって、ノコノコ出てきただけです」


「ヴィヴィアンヌは死んだ!そんな事も知らずに成りすましたのか?!」

泣きそうな顔をされて


(心配かけていたのね…)

と分かった。


「…いえ。死んでませんて。…そもそも転移魔法で必ず死ぬなら、さっきの転移で私達死んでなきゃおかしいでしょう?」


「さっきのは手品だろう?俺は騙されない」


「違います。私の魔法の師匠である【封印の巻物】に封印されてた精霊が転移を使ってくれたんです。

…これでまた、私の髪は毛先が5センチくらい短くなるだろうに…。そんな犠牲を支払わせておいて、まだ私を疑うんですか?」


「…だが、信じられない。精霊なんて見えないじゃないか」


「魔力を見る魔道具を持ってるなら、それで見てください。精霊は魔力体ですから」


「………」

私に言われて、フィリベールが自分の左手の人差し指に付けた指輪を右手の人差し指で撫でた。

指輪は魔力を見る魔道具のようだ。


「…魔力体、見えますか?そこに」


「…信じられない。精霊なんて本当に居たのか…」


「…薄情な人ですね。この精霊は貴方の前世の知り合いで、貴方の戦友のようなモノだったのに」


「余計な事は言わなくて良い」

とシーカーがツッコむが、それはフィリベールに聞こえていない。


「前世の知り合い?」


「精霊は人間の魂の履歴を読み取る能力があるようです。私も『異界から来た魂だな』とバッチリ当てられたので、間違いないと思いますよ。

あと、精霊は嘘をつけないので、貴方の前世はこの国の初代国王らしいです。

話を聞いてあげてくれませんか?」


「話を聞くも何も。精霊は喋れないだろう」


「貴方が闇属性じゃないから聞こえないんです。あと、貴方が闇属性でも光属性でもないから、貴方は【封印の巻物】を見つける事が出来なかったんです。

精霊の声を聞く条件は『精霊の愛し子』であるか、或いは属性が同じか、契約対象者であるか、いずれかです。

なので貴方が精霊と話をするには、精霊が所持していた能力玉スキルオーブを受け入れて闇魔法の適性を小精霊毎受け入れるのが手っ取り早いんです」


「…何を言っている?」


「私、ヴィヴィアンヌ・シャリエールは、【泥棒の極意】をフィリベール・ド・ブロイ・アザールへ譲渡する。我に従え【泥棒の極意】」

私がそう言いながら


(シーカーの指示通り)

フィリベールの胸に【封印の巻物】を当てるとーー


能力玉スキルオーブが私の胸から離れて、フィリベールの胸へと入っていった…。

フィリベールは急激な眠気に襲われたかのように目をこすり

「なんだ…。この光は…懐かしい…?」

と呻きながら眠りに落ちた。


(何故か小精霊が嬉しがってるのが分かる…。少し寂しいな…)


「どう?これで大丈夫かしら?」

私がシーカーを振り返ると


シーカーは頷いてから

「有り難う。友よ…」

と少し悲しそうに顔を歪めた…。


******************


「…フィリベールお兄様は目が覚めて、私が居ると気まずいだろうから、私はもう行くわね」

私はシーカーに別れを告げる事にした。


シーカーは

「これを持っていくと良い」

と言って、笛をくれた。


「これは?」


「召喚笛だ。お前がこれを吹けば一度だけ何処にいても私を呼び出せる。アザール王国を離れるお前が『特級禁忌魔法が使われる瞬間に居合わせる』可能性はほぼないだろうが、御守り代わりに持って行くと良い」


「有り難う」


「友情の証だ」


「…人間となんか友達になれないって言ってたくせに」


「そう思っていたが、いつの間にか絆されていたのだろうな。お前のような『シナリオを知らない異界の魂』に」


「私が『シナリオ』を知ってたら、シーカーは私を嫌ったのかしら?」


「どうだろうな。私が『シナリオ』を知る者達を嫌ったのは、連中が『フィリベールが死ぬルート』を記憶していて、尚且つそれを回避する動きをとってくれなかったからだ。

その点、お前は何も知らない。お前は『攻略対象のフィリベールが死んでも構わない。自分の幸せが大事』などとは思わずにいてくれた。

お前だけが『真っ白な運命』をこの【世界】に具現化できる純粋な異界の魂なのだ。

期待せずにいられないだろう?お前が『ヒロイン』とやらの代わりに私を封印から解き放ってくれたからには」


「…護れると良いね。この【世界】を。フィリベールお兄様と一緒に」


「ああ」


「それじゃ、さようなら」


「…お前の婚約者はもうこの国にいない。既にランドル王国へ移住している」


「分かったわ。…でも私は彼を探す気はないの。私もランドル王国で暮らす気でいるけど、冒険者として、平民として暮らすつもりだから」


「そうか…」


「ポーションを作って儲けるつもりだから、この国まで評判が伝わるかもね?」


「そうなると良いな」


「うん。…元気で」


「…我が友の道筋が明るく照らされますように…。元気で。ヴィヴィアンヌ…。人間の友よ…」


思わず涙がこぼれたけれど…

それは

「嬉し涙だ」

と自分でも分かっていた…。



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