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「会話する相手がいない」
環境には昔から慣れていたが…
「他人のお喋りを盗み聞きもできない」
環境には流石に慣れていなかった。
シーカーが来ない日は静か過ぎて寂しかった。
なので
「歌を歌う」
ようにして出来るだけ声を出した。
精神干渉系魔法は
「喉から魔力を放出して、声に魔力を乗せる」
「頭頂部から魔力を放出して、自分の気分を周りに感染させる」
ような方法が取られる。
更にはネガティブな方向へ操る場合には呪物を使えば効果抜群となる。
私の場合は
「自分自身のヤル気を維持する」
「前向きになる」
というポジティブ方向への自己暗示的精神干渉。
ある意味で、それがあったお陰で1年間もの孤独な修行生活を無事に終えられたのだと言える。
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シーカーが迎えに来てくれて
「いよいよ、本流【世界】へ戻るぞ」
と言われてホッとした。
自力では元の世界に帰れないからだ。
「精霊は嘘をつけない」
のは伝承通りだったので信用はしていた。
ただ性格の面ではシーカーを信頼はできない。
何せ
「特級禁忌魔法を使ったら人間は死ぬ」
と分かっていて、私に特級禁忌魔法を教えようとしたのだ。
思いやり、などといった面での配慮は期待できない。
それは多分
「シーカーだから」
ではなく
「精霊とはそういうものだ」
という事なのだろうと思う。
「…アントワーヌは前世の記憶を思い出してくれていないし、今世では闇属性ではないので、私が話しかけても私の声を聞くことができない」
シーカーは悔しそうに言う。
「契約主なら声は聞こえるのでしょう?」
「ああ。正確には『精霊の愛し子』か、同じ属性の者。或いは契約主か、『契約主が次の契約主対象と定めた基準を満たした者』にも聞こえる。
『封印の巻物の封印を解けるのは闇属性か光属性の持ち主』『封印を解いた者が次の契約主対象だ』と予め定められていた。
なのでお前が闇属性を持たず光属性でも封印は解けて、私の声が聞こえた筈だ」
「…そう。それなら私が『アントワーヌの生まれ変わりを次の契約主に定める』と決めてしまえば、アントワーヌの生まれ変わりにもシーカーの声が聞こえるという事?」
「そうだが…。お前では封印の巻物の呪文を読み解いて、『契約主の指定文に指定要項を書き足す』ような事はできないだろう?」
「勉強すれば出来るかも?」
「その勉強にこれまた長い時間がかかるだろうから、お前には生きるのに必要な能力だけ習得してもらって、さっさと【泥棒の極意】を譲渡してもらい、アントワーヌの側に闇属性の適性が宿ってくれる方が私には有り難い」
「でしょうね…(この薄情者)」
「…今のアントワーヌには私の声が聞こえず意思疎通ができていないので、アントワーヌに『前世のスキルを取り戻して闇属性の適性を得るべきだという事』を説明もできていない。
ただ観察によって行動パターンとスケジュールは把握しているので、今の時間、ヤツが何処で何をしているのかはだいたい分かる」
「そう。やっと貴方のアントワーヌに会えるのね」
「…アントワーヌの生まれ変わりは、お前も知っている人物だ」
「そうなの?」
「ただ、お前と会ってる時のヤツは偽名を名乗って別人に成りすましていたのでバラすのは良くないかと思って遠慮していた」
「偽名…。…それってもしかして、リュカ?の事?」
「ああ。アントワーヌの生まれ変わりはリュカと名乗っていたフィリベール・ド・ブロイ・アザールだ」
「…そう」
(内心では「もしかしたら」と思ってたのよね…)
「前世の魔法属性が闇だったので『今世でもアントワーヌは闇属性に違いない』と思って、フィリベールを生まれ変わりだとは全く疑っていなかった。
読心と過去見で遡れる限り記憶を遡ってみて違和感を見つける事が出来たから、フィリベールがアントワーヌだと気付けた」
「確か、リュカもフィリベールお兄様も魔法属性は地と風だったかな…」
(地と風の複合上位属性は「音属性」だった筈…。呪詛魔法を使える属性の…)
「そのようだな。双子が同じ属性を持つのはよくある事だ。アントワーヌとセヴランのように真逆の属性を持つ方が珍しい」
「『双子が』って…。まるでリュカとフィリベールお兄様が双子みたいな言い方をするのね?」
「アレらは双子だ。しかもリュカの魂はセヴランの生まれ変わりだ」
「…そうなの?」
「アントワーヌとセヴランの魂はやり直しをしているのだ」
「やり直ししなければならない程酷い人生だった訳でもないでしょうに」
「…セヴランは前世でアントワーヌの取り分まで奪って生きようとした挙句、自分の方が奪われて平民落ちした。
セヴランもアントワーヌも『相手にとって必要な取り分さえも奪ってしまう』という強欲に対して飽き飽きして、内心で悔いているのだ。
だからそれぞれに必要な取り分を侵さず、双方が互いに配慮して生きられるようにと望んで、今世もまた双子として生まれてきている」
「…双子なのに、一人は王子、一人は影って、不平等じゃない?」
「基本的何処の国でも王族・貴族の双子や三つ子は忌避される。母体に負担がかかるので死産になりやすいからなのだろうが、不吉の象徴とされ、後から産まれた赤子は大抵殺されるか里子に出されるかしている」
「それなら前世の時が異常だったって事?」
「そうだな。セヴランは産まれた直後から魅了を発揮して処分を免れていたという事だな」
「そうだったんだ…」
「因みに肉体的にはフィリベールもリュカもアントワーヌの複製体だ」
「???…」
「人体を複製する魔道具が王城の地下遺産庫にあるが、それを使って、アザール王国は王族の血を増やしてきている。
赤眼の王族は短命なので、ややもすれば、直系が途絶える危機もあり得るし、数世代に一度はアントワーヌの複製体が生み出されている」
「そうなの?…」
「フィリベール達の曽祖父の弟。当時の王弟もアントワーヌの複製体で、尚且つ魅了持ちだったので『セヴラン』と名付けられている。
フィリベール達はある意味で特殊だ。複製体は一度に一体ずつ作られる。つまり培養槽で双子や三つ子は本来生じようがない。
なのにどんな手違いでか、フィリベール達は双子だ」
「それはまた…。不思議な手違いね…」
「…斜陽の国で、そうした『あり得ない筈の生命の誤謬』が起きたのだ。フィリベール達が複製体だと知る者達が『この国の運命が終焉を迎えている』と悟るのには充分だったろう」
「…そう、言われてみれば。フィリベールお兄様は、先王からも王太后からもヨソヨソしく扱われていたかも知れないわね。
私やヴィルジールお兄様と違って冷遇されてる訳でもなく、寧ろヨソヨソしい特別扱いされてる感じで」
「だからなのだろう。フィリベールとリュカの結びつきは強い」
「本当に双子だったのね…」
今更ながら私は鈍い、と自分で自覚した…。




