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アントワーヌの場合は幼い頃から小精霊に気に入られていた。
そして小精霊はアントワーヌの能力自体に憑いて、アントワーヌが死んで肉体を失った後も、シーカーに寄生していた。
だから能力玉として存在し続けていられた。
しかし普通はどんな優秀な魔法使いも
「死ねば、その能力は失われる」
ものだ。
「アントワーヌのように小精霊に好かれていなくても能力自体に使い魔が憑いて、死後も保持させる方法があるにはある」
とシーカーは言うが…
(それは禁術では?)
と疑いの目を向けてしまう。
「…それこそ、お前が亜空間収納庫内に作った『ゴミ箱』に、『怨念を残して死んだ生き物の胃腸』を捨て続けて『ゴミ箱を空にする』機能を使わずにおけば、『ゴミ箱』が『蠱毒の箱』の代わりになる」
「蠱毒の箱…?」
「箱に毒蟲を複数入れて共喰いさせ、最後に生き残った一匹を術者が飲み込み、使役すると言われる巫蠱術だ」
「気持ち悪い術ね…。そんなの実践する人がいるの?」
「そのまま実践すれば体内から毒蟲に蝕まれて苦しみのたうって死ぬのではないか?」
「だよね」
「それこそ亜空間収納庫内に作った『ゴミ箱』に、『怨念を残して死んだ生き物の胃腸』を捨て続けて『ゴミ箱を空にする』機能を使わずにおく、という行為を物質的に言い表した手法だと思われる」
「エーテル体におけるデータ化操作を勘定に入れずに全て物質的に捉えると、随分とエグい事になるのね…」
「ともかく、そうした方法で使い魔を得ると、使い魔は宿主である主人が死んだ後も主人のエーテル体を保持しようとする。
能力玉を形成できる程に存在の格が上がると、元はただの死霊だったのに小精霊と並ぶほどの存在となる」
「使い魔って、それこそ『黒猫』のイメージなんだけど…」
「使い魔の素である『怨念を残して死んだ生き物の胃腸』が猫科の生き物のモノだったら、主人に『顕現せよ』と命じられて現す姿は『黒猫』になりがちだな」
「そうなんだ…。でも猫科の生き物から胃腸を抜いて亜空間収納庫内の『ゴミ箱』に入れておくのって、かなり悪趣味というか、残虐でしょ…」
「そういう事を平気でできてしまう人間も少なからずいる」
「そうなのでしょうね…」
(おかげで「黒猫を使い魔として使役する魔女」のイメージが私の中でダダ下がりになったわ…)
「使い魔は、『消滅したくない霊体』と『消滅せずに済むように亜空間の密閉空間に霊体が住まう事を許す術者』との相互的合意があって生じる契約の産物だ。
本来なら使い魔は必ずしも『怨念を残して死んだ生き物』である必要はない。
だが『怨念』のない存在は、ふとしたはずみで成仏する事があるから、使い魔としては頼りにならない面もある」
「それなら、使い魔向きの霊体には『怨念』というより…『簡単には晴らされない心残り』のようなものが必要という事ね?」
「そうとも言う」
「魔物を殺す時に抜いた心臓を亜空間収納庫内の『ゴミ箱』に入れておくのでは、使い魔はできないの?」
「魔物が知性的に生きているなら心臓でも憑座になり得るのだろうが…基本的に心臓は霊体の憑座には向かない。
心臓は膨大な回数反復された動作や能力の情報が保存されやすいので、長寿の魔物の心臓だと定番攻撃などがスキル化して宿っている事もあるが…そこに意志や心はない」
どうやら魔物の心臓を亜空間収納庫に収納して魔物を殺して回っても
「副産物として使い魔が勝手にできてしまう」
という事はなさそうだ。
だいたい想定外の副産物として自分にとって都合の良いものが出てきてしまう、という事は元より可能性が低い。
「なら安心して心臓を転移させて殺せるわね」
「そうだな。お前の転移は雑なので『戻す前提で人間から心臓を抜く』としても、かなりの確率で殺してしまうだろうが、『殺す前提で魔物から心臓を抜く』分には充分使えるレベルにはなっている。
ひたすら繰り返していくうちに上達できるだろう」
「熟練度を上げれば良いのよね」
「そうだ。これで私が教える事はもう無いが…。実は闇属性と光属性の双方を持つ者は鑑定魔法を覚える事ができる。
私には使えない魔法だし、今の時代に使える者がいるかどうかも分からない魔法なので教えてやれないが…鑑定関連の魔法書は揃えたので独学で模索すると良い」
「鑑定魔法…」
「ポーションを作るなら薬草を鑑定できた方が良いだろう?あと解毒ができるからと言って毒物に対して無防備になると即効性の猛毒を摂取した場合、自分で解毒しようにも間に合わないという事も起こり得る。
それなら鑑定魔法を覚えて、口にする物全てを鑑定してから摂取する癖をつけた方が良い」
「確かに…。独りで生きていくには、そういう用心が必要ね」
「………」
「独学で残りの時間頑張ってみるわ」
私がそう言うと
シーカーは少しホッとしたように
「私が離れた途端に死なれでもしたら寝覚めが悪いからな」
と呟いた…。
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その後、シーカーはあまり亜流【世界】に顔を出さなくなった。
時折、パンや干し肉などの食料品を運んできて
「よし。ちゃんと生きてるな」
と安否確認していくのみとなった。
私の方は
「シーカーから習った闇魔法は自習による復習」
「ポーション作りと薬草の鑑定は独学で模索」
し続けた。
鑑定魔法に関しては
「インターネット検索」
のイメージで良いんじゃないのかな?
と思ったので、それを試した。
カメラ機能でパシャッと撮って画像検索するような感覚をイメージ。
すると簡単にできた。
iP◯dもどきの半透明タブレットまで出てきたので
「光属性って、ホント根本が『創造』魔法なんだな…」
と感心した。
水属性と闇属性だけだったら、絶対できなかった魔法だ。
光属性でネット端末もどきのタブレットが出てきたという事は、今後は私の『転移』による盗みも、物理的な物だけでなく、記憶や感情やら、魔法適性やらも盗めるようになるのかも知れない。
期待大だ。
「…でも今、目の前の問題は『鑑定が対象一つ一つしかできない』事よね。一つ一つ鑑定していくと時間がかかる。範囲鑑定みたいな事はできないのかしら?」
と具体的な悩みも出てきた。
しかし
(そう言えば…)
と考えてみる。
(「食べ物」は「複数の材料」でできているのよね…)
「パン」
を鑑定すると
「パン:食品」
「品質:良」
「状態:良」
と出る。
材料に関しては
「詳細情報」
という部分をタップして出す。
前世の食品の成分表示っぽい記述となっている。
敢えて、スープを作る際に毒草を入れてみると
「スープ:食品(食用可)」
「品質:悪(毒入り)」
「状態:悪(体調不良を招く)」
と出た。
「詳細情報」
には毒草の名前も出た。
(草を一本一本鑑定するのではなく、「野原」を鑑定すれば良いのかもね?)
と意図して「野原」を鑑定してみると
視界のアチコチに
「薬草」
「薬草」
「毒草」
「薬草」
「食用植物」
「毒草」
などといった表示が出た。
「商品の値札感覚?…すごい。これなら採取が簡単だわ」
とニンマリ笑顔がこぼれた。




