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挿絵(By みてみん)


「転移というのは『原形のまま転移させる』のが難しいのね…」

と私は、しみじみ実感させられた。


シーカーが

「アントワーヌは天才だった」

と自慢気に言うが


「その天才ですら習得に3年かかった」

くらいに

「転移対象を壊さずに転移させる」

のは難しい。


シーカーに言わせると

「データ化と具現化とを自在に精密に操作できるようになれば良いのだ」

との事。


転移とは

「高速移動とは根本的に違う」

のだそうだ。


つまりインターネットにおける情報の同時配信や情報の同期化のように

「データ化された情報の共有」

が物理的に異なる地点で起き


「本体権の移動」

とでもいうものが一瞬にして起こる事で

「物理的に具現化した物質の移動」

も一瞬にして起こる、というものらしい。


インターネットの普及した地球世界から転生した者なら、こうした理屈も理解しやすいだろうが…

(アントワーヌはよく理解できたな…)

と正直、感服する。


「天才とは、本当に天才なのだな」

と凡人の私でも理解できた。


一方で

「亜空間収納」

は、今居る空間自体が亜流【世界】だからなのか…

比較的簡単に

「あっ!コレが亜空間なのか!」

と理解できた。


シーカーに示唆されたのは

「自分自身のエーテル体を認識しろ」

という事だった。


エーテル体には

「チャクラ」

と呼ばれる器官があり

外気マナ内気オドへと変換する」

働きをしている。


そのチャクラに

外気マナ中の魔素を魔力へと精製する機能がある」

のが

「魔力持ち」

と呼ばれる人々なのである。


「通常の魔力持ちが認識できるのはエーテル体の総体だ」

とシーカーは言う。


エーテル体の総体は

「スケールの異なる次元のレイヤーが立体的に重なっているモノ」

らしいので…


「特定のスケールで内観する」

事を

「スケールを変えて複数回行う」

事で認識できるようになるのだという。


よく分からないが

「私を読心してみろ」

とシーカーに言われて、シーカーを読心すると…


確かに

「エーテル体」

を認識できた。


「これがエーテル体の総体だ。今度はスケールを特定して見てみる」


それによって総体で見えていたもののうちから幾つかの要素が消え、逆に見落としていたものが見えた。


「次は別のスケールだ」


その場合もやはり見え方が異なった。


(なるほど。「スケールの異なる次元の層」とはそういう事か)

と理解できた。


肉体を

「骨だけ見る」

「筋肉だけ見る」

「臓器だけ見る」

「血液だけを見る」

「リンパ液だけを見る」

「神経だけを見る」

「脳細胞だけを見る」

「腸内細菌だけを見る」

ような見方で見ていくと


肉体は

「スケールの異なる次元のレイヤーが立体的に重なっているモノ」

のように思える事だろう。


エーテル体が

「肉体の活動により生じる波動履歴の蓄積」

だとすれば


肉体を多面的に捉え直せる観察視点の数だけ、エーテル体の次元の層も存在できるのだ。


「亜空間収納は基本的に異物の収納だ。なので腸内フローラに関連するエーテル体の層が用いられる事になる」

と言われて、なるほどと思った。


食べ物は異物だ。

養分を吸収して体外排出される。

異物でありながら必ず取り込まれる。


データ化された収納物を収納し、必要時に取り出す収納庫の利用としても腸内細菌次元のスケールのエーテル体は相応しい気がする。


「胃腸といった消化器官を有する生き物の集合意識体を外側から俯瞰すると、『蛇』の形に似ているのだが…それは各個体が自分の種族の集合意識とのアクセスルートとして腸内細菌によるネットワークを利用しているから胃腸が憑代になっているのだ、という事が分かる」


「人間もそうなの?」


「人間の場合には『ヤドリギ』の形の集合意識も存在している」


「ヤドリギ…」


「脳が憑代となっているアクセスルートだな」


「人間は脳が発達してるから?」


「そうだろうな」


「人類が他の種を踏みつけにしながら生き物の頂点に立てるのは、やっぱりそうした『ヤドリギ』型の集合意識の発展があるから?なのね」


「それはどうだろうな。樹木は徒長した枝を落とすなりして樹形を整えなければ重心のバランスを失い根本から倒れる事があるが、人類の集合意識も同じ誤りを犯しがちだ」


「そうなの?」


「精霊は長生きだから『実は人類が何度も滅亡を繰り返してきている』事を知っているのだ」


「人類の滅亡って…特級禁忌魔法が使われた時のように?」


「そうだ」


「でも、この【世界】の人類は滅んでいないわよね?」


「滅んだ場合には【世界】全体で時間遡行が起きて『やり直し』させられる。だから人間の歴史は『実は何度も滅んでいる』真実を刻む事がない」


「『やり直し』か…」

(ゲームのバッドエンドに納得いかずにエンディング前のデータをリロードしてやり直すとか、初めから全部やり直すとか、そういう感じなのかな…)


ともかく私は「エーテル体内の亜空間」を認識できた事で亜空間収納庫を利用できるようになったし、亜空間収納庫内に「ゴミ箱」「ゴミ箱を空にする」機能を取り付ける事にも成功した。


亜空間収納庫の収納量は魔力量や魔力の質に比例するので、私の収納量は多い方らしいけれど…

無限収納ではないので、調子に乗って入れ過ぎるといざと言う時に大物を収納できなくなる。


よって「ゴミ箱」も「ゴミ箱を空にする」も私には必要だったのである。



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