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実はシーカーにもポレット嬢の動向調査を頼んでいた。
エールリヒとドロテーアの聞き込みでは
「ポレット嬢の友人達はポレット嬢を好き過ぎる」
という程度の事しか分からなかったのだが…
シーカー曰く
「光属性の精神干渉系魔法が使われている」
との事だった。
「〈そうなの?!〉」
「早めに『精神干渉系魔法の適性』を盗んで無力化してやった方が良いんじゃないか?」
とアドバイスされて驚いた。
「〈シーカーがアドバイスしてくれるなんて!〉」
「私は悪魔じゃないんだ。【泥棒の極意】をお前が所持しているうちに、【泥棒の極意】を有効利用させてお前の敵を無力化させておこうと思うくらいの善意はある」
「〈それって【泥棒の極意】で『魔法の適性』すら盗めるって事よね?…ホント【泥棒の極意】って規格外ね…〉」
「アントワーヌが初代国王になれたアドバンテージそのものだからな」
「〈でしょうね〉」
「それで?件の小娘に対して『精神干渉系魔法の適性』を盗んで無力化してやるのか?」
「〈そうね。私に対して悪意的なら早めに無力化しておきたいわね。…それにしても『精神干渉系』か…。光属性って事よね?〉」
「ああ。それがあるから光属性は厄介なのだ」
「〈アントワーヌも『精神干渉系』の力を使う人が敵対してきたら、適性を盗んで無力化したりしてたの?〉」
「勿論だ。しかも盗んだモノを自分にインストールして使う事もできるのだから、最終的にはアントワーヌはあの時代の人間の中で最強になってたんじゃないのか?」
「〈でも寿命には勝てなかった、と〉」
「…そうだ。人間は不老不死にはなれない」
「〈…シーカーがアントワーヌの生まれ変わりに仕えたいのも『彼が生きてる時間に限りがあるから』なのね〉」
「そうだ」
「〈…シーカーは人間なんかと友達にはならないって言ってたくせに。そんな依怙贔屓をするんだから、アントワーヌはまるっきりシーカーの友達じゃないの。…精霊って嘘はつけない筈なのに、嘘の自覚がない嘘ならつけてしまうのかしら?〉」
「…どうなんだろうな。二度と会えないと思ってたヤツと再び会えた事で感じた昂ぶりが喜びというものなのだとしたら、お前の言うようにアントワーヌは私にとって友達だったという事なのかも知れないが…。これが本当に友情と呼ぶべき感情なのか、その言葉の当て嵌め方自体に確信がない」
「〈…やっぱり、自覚できないと嘘にはならない、という事かな?〉」
「………」
「〈ともかくポレット嬢から『精神干渉系魔法の適性』を盗んで私自身が使えるようにできるのなら試しておきたい。【泥棒の極意】が手元にあるうちに〉」
「分かった」
「〈ところで。【泥棒の極意】の所有権がアントワーヌの生まれ変わりへ移った後も、今から盗む『精神干渉系魔法の適性』は私のものとして使えるのよね?〉」
「それは勿論。盗んで宝箱に入った盗品を『自分で使う』選択をすれば良いだけだ」
「なら早速、ポレット嬢の所へ向かいましょう」
私とシーカーは気配を消して中等部の女子寮へと向かう事にした。
「光属性の魔力は闇属性の魔力同様に希少だからな。光属性の魔力の気配を辿れば、あの小娘の居所など直ぐに分かる」
そう豪語するシーカーに付いていくと…
何故かBクラスの女子特待生アナイス・カンタールの元へ辿り着いてしまった。
(う〜ん。なんでアナイスが中等部の女子寮にいるんだろう?)
謎だ。
「私が間違うとは…」
とシーカーが悔しそうにしているが
「〈あの子も光属性の魔力の持ち主という事なのね?〉」
と尋ねると
素直に
「そうだ」
と答えてくれた。
「〈精神干渉系魔法の適性を持つ人が敵対すると厄介なのよね?〉」
「ああ」
「〈それなら、ポレット嬢の所へ向かう前に、ちょっとだけあの子を観察して敵対しそうかどうか見ておきましょう〉」
「お前の好きにすると良い」
シーカーの許可も得られて、気配隠蔽したままアナイスを監視する事にした。
アナイスは当然私達には気付いていない。
彼女の姿は素のままだと考えて良い。
アナイスは中等部の女子学生にペコペコ頭を下げていた。
「お願いです。どうかお父さんからの手紙を渡してください」
切羽詰まっている様子。
それに対して中等部の女子学生は
「どうしようかなぁ〜…」
と焦らしてニヤニヤしている。
(意地悪な女の子だな…)
そこに
「そんな意地悪はやめなさいよ。相手は高等部の先輩でしょう?」
と話しかける子が出てきた。
(勇気あるな…)
「アンタ。随分と偉そうじゃないの?子爵家と言っても次女で貧乏なくせに」
「爵位とか金銭的問題とかは今は関係ないでしょう?学生間で身分を振り翳す行為は禁止されてるわ。貧困者を差別する行為もね」
「バカね。そんなのただの建前じゃない。本気にしてたの?頭悪〜い」
「…成績はあなたよりも私が上だけど」
「成績でマウントを取るのも禁止だった筈よ。禁止事項に有効性を持たせるなら」
「そういう所でだけ急に頭が良くなるのはやめて欲しいわね」
「ともかくアンタはすっこんでなさい。私が、うちの養女の偽物男爵令嬢をどう扱うかなんてアンタには関係ないんだから」
「…分かったわ。…先輩、スミマセン。お力になれなくて…」
「いえ。良いのよ。庇おうとしてくれてありがとう」
アナイスが健気に笑顔を見せた。
(それにしても、意地悪な女の子もいたものね)
と露骨な意地悪さに呆れた。
(まだ中等部だから婉曲的に証拠も残さず意地悪するような狡賢さが無い、という事なのかしら?)
「…お義姉様。アンタが私の婚約者に色目を使った事は分かってるのよ。…アンタなんて絶対許さない。父親からの手紙が大事だというのなら絶対渡さないわ」
どうやら婚約者の関心を美人の義姉に奪われた事で怒っているものらしい。
思わず小声で
「〈アナイス嬢は精神干渉系魔法の適性があるんでしょう?なんで精神干渉系魔法を使って相手に好意を持たせるような事をせずにいるのかしら?〉」
と尋ねたところ
「精神干渉系魔法の怖いところは『好意を持つように』操られていた術が解けた場合に、術が反転して悪意に変わる事がある点だ。
そこの小娘達の場合はまさにそれだ。強力な精神干渉魔法で仲良くしていたが、どうやら最愛の婚約者を奪われそうだという強烈な焦燥感で術が解けてしまい、術の効果が反転している。
義妹の婚約者に色目を使ったせいでこうなっている。自業自得なので『可哀想』だなどと思う必要はない」
「〈そうなんだ。…じゃあ、彼女達は無視してポレット嬢を探そうか〉」
「ああ」
私達はこっそりその場を離れた。




