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挿絵(By みてみん)


アザール王家の人間は代々短命である。

有名な話だ。

皆が知っている。


原因については

「長年にわたり近親婚を繰り返してきたからだ」

と言われている。

(「呪われているからだ」という説もあって、そちらの方が実は信憑性が高いらしい)


父王アンベールは一年半ほど前に亡くなっている。

現在の国王は長兄のランベール・ド・ブロイ・アザール。


真紅の赤眼を引き継ぐと40〜40半ばくらいで病死するのがアザール王家・公爵家の定番。

なので4人の兄達は全員早死にする事だろう。


この世界の医療は未発達。

なので魔力を持たない只人達は40〜50くらいで死亡。

魔力持ちはその点、身体が丈夫で60〜80くらいまで生きるものが大半。

魔力が多ければ多いほど肉体のスペックも高く長生きの傾向がある中、アザール王家は魔力に恵まれていながらも皆平民並みの寿命。


だからなのかも知れない。

赤眼ではない王族が生まれると皆で虐げる…。


赤眼ではない王族に対して潜在的に

「魔力にも恵まれて長寿なのが許せない」

という妬みがあるのかも知れない…。


王女の降嫁先に王家の血の濃い有力公爵家が選ばれると、やはり、その家の子は赤眼で生まれて早死にする。

なので赤眼が居ない高位貴族家が選ばれる事が多い。


そうした子孫の遺伝病を心配する観点では

(パスカルもパスカルの両親も赤みがかった茶色の瞳なので)

「ルクレール公爵家は王女の降嫁先に適している」

と言える。

勿論、ルクレール家がマトモな家ならばの話だが。


私にとっての情報入手ルートは、王城内の使用人達の噂話。

貴族家各家に関して知っている情報が正しいという保証はないものの…

ルクレール公爵家はかなり評判が悪い。


3年前、父王の側近に呼び出されて

「ヴィヴィアンヌ殿下の婚約者が決まりました」

と言われてパスカルの名が告げられた時に

(10歳から私に付け焼き刃の教育を施したのは政略結婚させるためだったのね…)

と色々諦めたものだったが…


「そのうち改易する公爵家に嫁がせるなんて、よっぽど陛下はあの王女が憎いんだわ」

と王城の使用人達が嘲笑していたのを覚えている。


元々

「居ないもの」

として無視されていた。

父王から話しかけられた事は一度もない。

父王からの指示は彼の側近から受けていたので会う必要性すらなかった。


特に暴力を振るわれる訳でも無かった。

徹底した無視。

存在否定。

要は父王はこれっぽっちも粗暴ではなく、ただただ陰湿な男だった。


使用人達の様子を隠し通路にある鏡硝子から覗き見・盗み聞きして

「あんなに嫌われてるんだ」

「やっぱり不貞の子だ」

「あの厄介者」

「居候のくせに毎食食べようだなんて」

と言われているのを直接知るのは精神的にキツイものがあった。


そうした王城の隠し通路。

上手に使えば

誰にも見咎められずに

父や兄達の居る区画にも行けた。


覗き見で家族の顔を知るだけでは物足りなくて

「存在に気付いて欲しい」

と思ったりもしていたが…


やはりそこでも

「ヴィヴィアンヌ」

の事が話題に上がった時に

「ああ、アレか」

と、私の事が

「アレ呼ばわり」

されているのを知って、それ以来、覗きにも行っていない。


お陰で父王が死んでも全く悲しくなかった。

兄達が死んでもやっぱり何とも思わないのだろう。


それでも演技で悲しいフリはした。

涙まで流して見せた。


内心では

「いつまで経っても厨房で用意してくれる私用の食事が子供使用人用の量だ(量が少ない)」

という事を悲しんでいた。


「親が死んで悲しまない」

となると、今まで以上に皆から嫌われると思ったので…

「無理矢理悲しい事を思い浮かべて涙を流した」

のである。


「家族の愛が欲しい」

などとは何故か思えなかった。

「自分が家族にどう思われているのかなんて、もう知りたくない」

と思う。


父が死んで兄が4人残った。

4人いる兄のうち3人は母親が違う。


1人は私と母親が同じ。側妃の子供。

ヴィルジール・ド・ブロイ・アザール。第四王子だ。


ヴィルジールは第三王子のフィリベールと同じ歳。

私よりも二学年年上。

フィリベールもヴィルジールも校内で見かける事がある。


フィリベールは私と目が合っても直ぐに目を逸らす。

好意も悪意もない。

ただ関わる気が無い様子。


一方でヴィルジールは私の顔を見て反応を示す。

妹を見るような目つきじゃなくて…

「害虫」を(ぶっちゃけゴキブリを)見るような目つき。

嫌われているのが如実によく分かる…。


ヴィルジールを見かける事はあっても、すぐに隠れて避け続ける事は可能だ。

何せ私は隠し部屋・隠し通路を見つける名人なのだから…。


隠し部屋・隠し通路を見つけるのには

「護身用の懐剣で壁やら床を叩いてみる事で反響する音の違いを聞き分ける」

のがコツだ。

入学して早々に隠し通路を見つけたので活用させてもらっている。


(ヴィルジールお兄様が卒業するまでの1年間、ずっと避け続けてやる…)

と思っているし、それは上手くいく筈…。


******************


入学早々から

「どうせ友達もできないんだろうな」

と思っていたし、やっぱり友達はできなかった。


というか…

王立魔法学院は初等部、中等部、高等部があり、私は高等部からの入学だ。

高校からの入学者は私に限らず既存の仲良しグループの輪からはみ出している。


初等部は義務教育化されていて無償で学べる。

10歳での入学。2年間の初等教育。


そうした10歳からの2年間の教育は市井でも実施されている。

市井での平民向け教育は教会が無償で行なってくれているのだ。

と言っても初等教育は足し算引き算と簡単な読み書きだけ。


この頃から貴族と平民の差別化は徹底していて、金銭的に困窮している貴族家の令息・令嬢は教会へは通わず初等部から王立魔法学院に通える。

学費だけでなく寮費も初等部だとタダなので子沢山の貧乏貴族家の食費が浮く。

子沢山の貧乏貴族家にとって嬉しい制度となっている。

(貧乏なのが周りにバレバレになるのが難点)


大半の貴族は初等教育を家庭教師から学び、学院入学は中等部から。

とは言え、中等部で学ぶのも地球世界での小学校高学年くらいの学習内容と初級魔法。学習難易度は高くない。

本格的な学習は高等部から。


高等部からの入学だと王子や王女のような

「本来なら護衛が必要な地位の者達」

が多い。

(兄達も皆、高等部からの入学)


高等部の学舎・寮は王城や王立図書館と同じように

「常時衛兵が交代で詰めている」

のだ。

門衛が不審者を通さないし、衛兵が校内を見回りしている。

セキュリティがしっかりしている。


私も兄達と同じく高等部からの入学となった。


高等部からの入学には入学試験があり、その難関を突破する必要がある。

「万が一落ちたら」

と心配な貴族家は

「高等部から入学させようとは思わない」

のが普通だ。


例外として14〜15歳の平民が優秀さを認められて

「貴族家の養子になった」

「貴族家の猶子になった」

ような場合に高等部から入学してくる場合もある。


しかし大半の養子・猶子は

「教会の初等教育の時点で優秀さを見出されている」

ので、中等部から王立魔法学院に入学しているものだ。


優秀さを買われて養子・猶子になった元平民の子達は奨学生になれて学費・寮費が半額に減免される。

特に優秀な子達の場合には学費・寮費無料の特待生になれる。


アザール王国の王立魔法学院では奨学生・特待生の人数を限定していない。

優秀な者が多ければ多いほど奨学生・特待生の数も多くなる。

そして私が入学した今年の高等部一年生は特待生・奨学生の多い当たり年だったようだ。

お陰で生徒数が底上げされて例年よりも多い。


更に今現在のこの国ではーー

更なる例外があり…

今年から高等部には特別クラスであるSクラスが設けられている。


バルシュミーデ皇国からの入学生・編入生によって構成されているSクラス。


王城の使用人達の噂話によると

「国王と王弟が正妃をバルシュミーデ皇国から娶る」

と決定したとか。


なので長兄・次兄の正妃候補である皇女らの侍女・女官・護衛官・執務補佐官の役職に派閥貴族令息・令嬢がアザール王国の言葉と文化に慣れる為に次々入国してきている。

(因みに皇女らは10歳、9歳の幼女…)


皇女らの「お付きの人達」のうち就学年齢に該当する者達が王立魔法学院へ入学・編入しているという訳なのである。


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