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挿絵(By みてみん)


鏡を覗くと褐色の髪と青い眼を持つ少女が映る。


「不貞の子」

だのという悪評が付き纏うわりに私の見た目は清廉そのもの。


パスカルお気に入りのシュザンヌのような肉感的な身体つきとは真逆。

清楚系美少女である。


「…こんなに可愛い子にあんな風に怒鳴れるなんて、あの男、目が腐ってるんでしょうね」

と思わずぼやきの一つも漏れようというもの。


(まぁ、この国の王族は皆、赤眼だし、貴族も赤み掛かった茶色や赤み掛かった灰色の眼の者が過半数。「青系の瞳」自体が隣国のバルシュミーデ人やランドル人貴族に多い色目だもんね…)


私を産んだ側妃には

「托卵疑惑」

に加えて

「敵国人と通じた売国奴疑惑」

まで持ち上がったらしかった。


しかし側妃当人は難産ゆえに

私を産み落として即日死亡。


残された私は

「よく処刑されなかったわねぇ…」

「でもやっぱり王族用予算も組まれてないし」

と使用人達に呆れられながらも王城内の片隅で生き続けた…。


乳母も雇ってもらえず

ヤギの乳を女中らに与えられ

乳児期を乗り越えた。


さすがに使用人達も

「自分の手でネグレクトして赤ん坊を殺す」

ような度胸は無かったのだろう。

お陰で生きてこれた。


この国では

「托卵雛疑惑を持たれた令息・令嬢が普通とは違う待遇に置かれる」

事態は平常モード。


それくらいこの国の貴族社会は

「寝取り寝取られが身近であり、人々は相手を裏切るハードルが低いモラル破綻社会だ」

という事。


お陰で生まれてこの方、ずっと冷遇されまくり。

(自分だけじゃない、とわかったのが唯一の救いかも)


王城の使用人達のお喋りを盗み聞きして得た情報によると

某伯爵家に生まれた

「不貞の子」

は女中扱いでこき使われているらしい。

そのうち金持ち老人の後妻として売られる事が決まっている。


某男爵家の

「不貞の子」

は15歳で法的に成人するなり直ぐに娼館に叩き売りされたとか。


とにかく世の中は

「夫の浮気には寛容」

「妻の浮気は絶対許さない」

風潮。


「そのとばっちりが生まれた子供に背負わされる」

のだから、報われない…。


(因みに不貞の子が男子の場合は継承権の問題もあり、すぐに殺処分されているらしいので、不遇な不貞の子の話が取り沙汰されるのは女子の場合のみ)


父王は

(というより母の夫と言うべきか)

怒りに任せて私を殺処分したりはしなかったけれど…

乳母も侍女も付けずに城内の下級使用人居住区画に放置していた。


お陰でずっと独り。


顔を洗う水でさえ、自分で調達している。

それこそ魔法で水が出せるようになる前は使用人達が使う汲み置きの水瓶から水を洗面器に汲んで使っていた。


基本的にこの世界では井戸で汲んだ水をそのまま使ったりしない。

バケツで水瓶まで運び、不純物を沈殿させてから上澄みを使う。

飲み水だと、そこから更に煮沸。


街中の「水売り」は煮沸済みの水を売っているので、冒険者達は買った水を水嚢へ入れてそのまま飲む。


不衛生に見えて、一応衛生面での配慮はある世界。

ただし、ただ暮らしていくだけの事にさえ諸々の労働が必要になる。


自室の掃除は自分でしていたし、今も魔法を使って自分でしているが…

洗濯はこれまた魔法を覚えるまでは女中にしてもらっていた。


と言っても汚れた衣服や寝具を回収に来てくれたりはしないので、自分で洗濯場まで運んでいた。

洗濯が終わって乾いた衣服や寝具もまた自分で取りに行っていた。


料理もしてもらえていたが、食事は毎食自分で調理場まで取りに行っていた。

誰も運んできてくれないからだ。


使用人用の食堂を使わせてもらって皆で食べたかったが…

「それはやめてください」

と断られていた。


物心つく前から誰からも相手にされない生活。

誰からも話しかけられない分、私は言葉を喋り出すのが遅かった。

だけど言葉を聞き取る事自体は誰よりも早かったのかも知れない。


城内には隠し部屋や隠し通路があり、所々に鏡硝子が付けられている。

所謂マジックミラー。

相手からは鏡に見えるが、こちらからは硝子越しに相手を覗ける。


誰からも相手にされずに放置されている間ーー

そういった隠し通路への入り口を見つけてしまい、私は夢中で探検し、夢中で使用人達を覗き続けた。


お陰で言葉を喋る事は苦手でも、言葉を覚える事自体は早かったのだ。

とにかく幼少期は覗き・盗み聞き以外にする事がなかった。


10歳になってからやっと兄の家庭教師が私にも教育を施すようになって基本的なマナーや常識を教えてもらえた。

だがあくまでも兄のついで。

家庭教師は大抵、週に一回「課題を出す」だけだったので、学習の殆どが読書による自習・独学だった。

学習に必要な本だけは揃えてもらえたので、それだけは本当に有り難かった。


そしてその頃から淑女の趣味として

「編み物や刺繍をするべきです」

と指示されたが裁縫道具を私は与えられていなかった。


11歳の時に王城お抱えの針子から使い古しの裁縫道具をもらい、その後も布や糸を補充してもらえるようになったので

「覗き以外にやれる事ができた!」

と喜んでレース編みや刺繍に励んだものだった。


お陰で手芸の腕は15歳の現時点で針子並みとなっている。

婚約破棄されて王族籍を抜かれたら、平民の針子として生きていける。


王族貴族は魔力持ちであるお陰で皆能力の潜在値が高い。

少しの努力で簡単に平民の職人を凌駕できるのである。

(それだけがこの転生で良かった点だ)


手芸の他にも得意な事はある。

それが

「隠し部屋探し」

「隠し通路探し」

「情報収集」

だ。


そうした特技は王立魔法学院でも役立つ筈。


この王立魔法学院高等部。

そこには学院七不思議というものがある。


王城の使用人達のうち、貴族家出自の若い上級使用人達がたまにお喋りしていたので、入学前から七不思議というものがある事自体は知っていた。


その七不思議。

詳しい話は分からないながら…

どうやらどれも

「特定の条件で入室できる隠し部屋の中にある魔道具」

に関するものばかり。


「聖女に認められる者しか入れない隠し部屋」

の中にある【聖女の聖杯】などは

「選ばれし者以外は無縁の話」

だが…


「満月の夜にだけ入れる隠し部屋」

の中にあると言われる鏡は

「当人の魂を反映した姿を映し出す」

のだという。


魂の醜い者がその鏡を見るとーー

醜悪な姿が映り

実際の肉体の姿も

「鏡に映った姿に合わせるように醜くなってしまう」

と言われている。

【真実の鏡】。


半ば怪談と化していて

どこまで本当なのか真偽の程は定かではない。


要は

「本当の自分自身になれるように使用者を手助けする魔道具」

なのだろう。


そんな感じで

「学院内には七つの魔道具が隠されている」

ことが七不思議として、学院高等部でも語られている。

(周囲の会話に聞き耳立てて得た情報によると)



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