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挿絵(By みてみん)


シーカーは流石倫理観自体を持たない精霊。

「そうしたスリ自体が転移魔法の応用なのだ。【泥棒の極意】でできる事は大抵闇魔法で再現できる」

と何の感情も見せずにいつもの可愛い猫面で答えてくれた。


「そうなんだ…。でも学院の授業でも闇魔法の上級魔法は習わないわよね」


「闇魔法の上級のさらに上の特級禁忌魔法は『世界を滅ぼす魔法』と言われていて究極の禁忌とされている。

なので闇魔法自体が物騒なモノと見做されて『浄化』『解毒』以外を習う機会が悉く奪われている。

『気配隠蔽』の習得方法が傭兵ギルドや暗殺者ギルドで伝統的に受け継がれている事も闇魔法のイメージを悪くしている、というせいもある」


「…私は『世界を滅ぼす魔法』だけは必要ないかな。もしも習得しちゃって、もしもウッカリ発動しちゃったら…トンデモナイ事になりそうだから」


「主よ。魔法は同じ魔法をぶつける事で相殺で打ち消す事ができるが、闇魔法の本質が幻影の消去である以上、闇魔法は凡ゆる魔法を消去できる。一方で闇魔法を消せるのは闇魔法だけとなる」


「…何が言いたいの?」


「『世界を滅ぼす魔法』が使われた時に別の闇魔法使いが同じ『世界を滅ぼす魔法』をぶつけて相殺しなければならない、という事だ。

つまり『そんな魔法は絶対使わない』という良心を持つ者こそが、有事に備えて習得しておくべきなのが特級禁忌魔法だ」


「怖いわよ。そんな魔法…」


「いや、私が主の元を離れる以上、希少な闇魔法使いにはしっかり習得してもらう」


「…その禁忌魔法はシーカーが使えるならそれで良いじゃない。私が『有事に備えて』覚えるべきは転移魔法だと思うわよ?

契約主じゃなくなっても有事の際にはシーカーを呼び出せて禁忌魔法を禁忌魔法で打ち消してもらう方が確実よ」


「…そう言われてみれば、そうなのだが、それだとお前から支払ってもらう事になる報酬は髪や爪では足りなくなるのだぞ?」


「嫌だけど、腎臓一個くらいなら支払うわよ。それで世界が滅びずに済むならね」


「そうか…。お前も同じ事を言うのだな。アントワーヌの妻と」


「アントワーヌ一世の妻?聖女だった初代王妃の事?」


「ああ。彼女はその際に両目を支払った。だからアントワーヌは自分の両目を妻に与えて自分は義眼を付けたんだ。

死罪にする大罪人から視覚を奪って義眼にそれを宿らせたから、盲目にはならずに済んだのだが」


「…アザール王家の赤眼は実は呪いだって言われてるのだけど…」


「この国の赤眼の連中が赤眼を崇めているのは、実はおかしな事なのだ。赤眼は『瞳が呪物化している』のだ」


「瞳の呪物化…」


「特級禁忌魔法で世界を滅ぼそうとした不可視の魔物が色濃くこの世に顕現した際の災いの名残だ。

世界を救ったが故にアザール王家の血は呪われた。赤眼はアザール王家の人間を媒介にして感染し続ける呪いだ」


「赤眼は呪いだというなら、解呪すれば、赤眼ではなくなるという事?」


「全員解呪すればアントワーヌの子孫達の眼も本来の色に戻し、皆寿命も延びる筈だが…」


「もしかして赤眼が緑色の眼に変わる御伽話って、そこから来てるのかしら」


「おそらくな。本来の緑系の眼に戻った者達は色替え魔道具を使って依然として赤眼だと装っていたようだが…そういった者達は『短命ではなくなった』事もあり、『赤眼ではなくなった』事を看破され、妬まれ排除されてきたようだ」


「この国の赤眼至上主義って、やっぱり『短命ではない人達への妬み』があったのね…」


私自身、散々、眼が青いというだけで蔑まれてきたが…

そうした蔑みの原因はどうやら薄々予想してたように、本当に妬みによるものだったようだ…。


******************


そのうち

「【泥棒の極意】の契約権をアントワーヌの生まれ変わりへと譲渡する事になる」

と思うので…


その時に備えて

シーカーが教えてくれる事になった魔法は

「亜空間収納」

「転移」

「解呪」

「読心」

「過去見」

「気配隠蔽」

だ。


「浄化」

「解毒」

は既に習得済みなので、シーカーに習う魔法を習得すると、私が使える闇属性魔法は八つになる。


特級禁忌魔法の

超重力天体ブラックホール召喚」

は覚えたくないので習わない事にした。


まぁ、そうそうそんな魔法が使われる現場に居合わせる事もないだろうから、習った所で使う機会もないとは思うけど…

そんな魔法、本当に知ってるだけで危ないと思うのだ。


「これまでに『超重力天体ブラックホール召喚』って使われた事があったの?」

疑問ではある。


「何度もあるぞ。アントワーヌが生きていた時代にも危機があって、彼の妻が私を呼んで相殺させたし、それよりも前の時代にも相殺者達が頑張ったお陰で今の世界線は未だ持続しているが…ダンジョンが有る以上、本当はいつ【世界】が滅んでもおかしくないのだ」


「この世を滅ぼす魔法って、ダンジョンと関係しているの?」


「ああ。ダンジョンが空間属性ーーつまり闇属性の魔物の一種だという事は知っているな?」


「そんな話も聞いた事はあったけど…事実だったって事?」


「そうだ。闇属性は『創造』はできない。つまりダンジョン内に湧き続けている魔物達はダンジョン核によってダンジョン内に召喚され続けている訳だ」


「召喚…」


「召喚は転移で連れてくる事、送還は転移で送り返す事を言う」


「…そうね。『召喚』は『転移』よね」


「闇属性の適性者は他の属性の適性者と比べて遥かに少ない。光属性も少ない」


「闇属性が『創造』できないのとは真逆に、光属性は『創造』こそが最大の強みだったわよね」


「ああ。亜流【世界】で光属性魔物の魔力暴走で生み出された魔物達が、亜流【世界】で繁殖し続けていて、それがダンジョンによる『転移』魔法で『召喚』されているのだ」


「ダンジョンが無くなれば魔物達が生み出され続けている亜流【世界】との繋がりは途切れる、という事?」


「完全に途切れる事はないが、ダンジョンが無くなればマシにはなる」


「ダンジョン以外で魔物を呼び出す人間でも居るの?」


「そうだ。残念な事に人間どもが『魔術』と称して組織ぐるみでやる『儀式召喚』は魔物を呼び出す類のものだ」


「魔物を呼び出す…」


「呼び出される魔物は大抵、時空の狭間に棲む不可視の魔物だ。所謂『悪魔召喚』だな」


「時空の狭間に棲む不可視の魔物…?」


「時空の狭間に棲む不可視の魔物は【世界】と【世界】とを繋ぐ【門】にしがみつく者達で、悪霊とか悪魔とも呼べるモノだ」


「【門】にしがみつく者達…?」


「『魔術』では必ず『生贄を殺す』事が必要になる。異界から何かを呼び出そうにも、術者側に空間属性がなければ誰も転移魔法を使えないからだ。

だから空間属性のない術者達による召喚には、先ずは『転移用の【門】を出現させる』事が必要となる。

そして【門】は基本的に『生き物が死んだ時にしか現れない』のだ」


「ダンジョンでは冒険者か魔物が死に続けてるわね…」


「空間属性を持たない人間達によって人為で呼び出される不可視の魔物は大して力を持たないので放置していれば、いずれ消滅する。

ダンジョンによる魔物召喚に便乗して、この【世界】へ侵入してくる不可視の魔物は、力が強く放置できない」


「そうなのね…」


「ダンジョンは闇属性ーーつまり空間属性の魔物だから、ダンジョン内で誰も死んでない時でも魔物を転移で召喚し続けているが…

ダンジョン内で沢山の生き物が死に【門】が開くと、強力な不可視の魔物が侵入してくるし、そうしたモノは幽霊と同じく『生物を依代にする』ので、冒険者に憑いて人間社会に入り込む事も多いのだ」


「ダンジョンに出入りする人間が危険人物になるという事ね」


「そうだ。そして『時空の狭間に棲む者達』は大抵『人間と共生する気がない』。だから連中は条件さえ整えば『超重力天体ブラックホール召喚』を行う」


「その条件って?」


「憎悪などの強い感情エネルギーが集約される事と、憑座が自分自身の死を覚悟している事だ」


「自分自身の死を覚悟って…。それじゃ、特級禁忌魔法を発動する人間て『死ぬ』って事?」


「そうだな。生きている者が発動すれば死ぬな」


「…貴方はそんなモノを私に教えて私に使わせようとしたのね…」


「お前は勘が鋭いというか、いつも運が良い…」


「とにかく、私は『世界を救うために自分が死ぬ』なんて御免です。寧ろ逆に何の悪い事もしてないのに理不尽に死ななきゃならないというのなら『こんな世界要らない。滅んで良い』と思ってます」


「まぁ、そういう人間だよな。お前は」


「とにかく、魔法の教授、宜しくお願いします」

私が顔を引き攣らせながらそう言うと


「了解した」

と可愛い猫面が答えてくれた。



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