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挿絵(By みてみん)


クリストフ繋がりでドロテーアと友達になってからは独りの時間が減った。

寮の中でも食堂のような場所では必ず話しかけてくれるので、ボッチ状態ではなくなった。


Sクラスは第一皇女派と第二皇女派とに分かれているので、一年生の第二皇女派の女子はドロテーア独り。

これまでは朝食、夕食は二年生の第二皇女派の女子と食べてたらしい。


「それこそ『同じ方に仕える』事自体が縁になってて、年齢が違っても同士なのよ」

だそうだ。


二年生・三年生の第二皇女派の女子達にも

「クリストフの婚約者よ」

と紹介してくれた。


「へぇ、アイツやるじゃない」

「早速アザール人貴族と婚約って、手が早かったのね」

「アイツ、一見紳士に見えてキレやすいから気をつけてね」

「困った事があったら相談して。お灸を据えてやるから」

と何故かクリストフが微妙に貶されていたのが気になったが…


とりあえず

「気にかけていただき、ありがとうございます」

とお礼を言っておいた。


それにしてもバルシュミーデ人女子は体格が良い。

戦闘民族っぽくて、まるでアマゾネスだ。

そしておそらく皆脳筋だ。


善人だが単純。

「被害者を詐称する加害者」

溢れる

「誣告大国アザール王国貴族社会」

に巻き込まれると…

「濡れ衣を着せられた者を皆で攻撃する」

ような誘導に乗せられやすそうにも見える。


(でも、ちゃんと情報収集はされてるのよね?)


対面したのはドロテーアに紹介された時が初めてだったが、既に私が何処の誰なのかは皆理解していた。


赤ん坊の頃の取り替えに関しても知っていて

「災難だったわね」

と同情してくれた。


第二皇女派の女子を仕切っているのはアンネリーエ・ベルンシュタイン公爵令嬢。

王弟の側妃候補。

第二皇女ベネディクタ殿下の女性側近筆頭。


おそらくこの人が第二皇女派が行う情報収集の司令塔。


(ベルンシュタイン公爵令嬢に「気に入らない」とか思われたら、きっと全員が掌返しして敵になるんだわ…)

と分かってしまう分、緊張する。


けれど私には【泥棒の極意】がある。

悪意を持たれていると感じた時点で悪意を盗めば問題ない。


(クリストフの仲間とは仲良くしたいな)

と心から思った。


******************


お昼休憩は昼食時間。

これまでずっと独りだったのに急にクリストフ達と過ごすようになったからか、皆からジロジロ見られる。


パスカルに絡まれてた頃から見せ物さながらにジロジロ見られていた訳だが…

視線の意味が以前とは少し違う気がする。


国王、王弟が揃ってバルシュミーデ皇国の皇女を娶る中、貴族達も

「バルシュミーデ皇国の貴族と婚姻を結んだ方が良いかも知れない」

と追従姿勢に傾いてる人達がいる一方で…

「他国の血を入れるべきではない」

と純血思想を持つ人達もいる。


純血思想を持つ人達からすると私は

「真っ先にバルシュミーデ人に媚びた貴族令嬢」

という事になる。

元々、その手の人達からすると私は

「淫乱売国奴の側妃が産んだ不貞の子」

だった。


取り替えが明らかになり、シャリエール公爵の実子だと認知された後でも隔世遺伝による青い眼は

「穢らわしい先祖返り」

と見做されているようだ。


聞こえよがしに悪口を言う人達もいる。

こちらを見ながら嘲笑してる連中が

「恥知らず」

「売国奴」

「雌犬」

などとボソボソ言ってるのが聞こえてくる…。


やはりBクラスとCクラスの生徒達だ。

不思議な事にAクラスやD以下のクラスの生徒達からは悪意は感じない。

一年生だけでなく、二年生、三年生もそうだ。


どうやらAクラスの生徒達は、一年生だけでなく、二年生、三年生も

「Sクラスのバルシュミーデ人学生達のお世話係をしている」

お陰で他のクラスの生徒達よりも外国人が身近なのだ。


故にAクラスの生徒達は排外主義的な発言はしにくい。

排外主義的な発言をしてる人達に賛同すれば自分の身が危うくなると自覚してる様子。

内心がどうあれ、Aクラスはバルシュミーデ人学生達に対して表面的には好意的なのである。


一方でD以下のクラスの生徒達は

「優勢な方へ付きたいからギリギリまで様子見している」

感じか。


国内情勢がそのまま学生間の人間関係で可視化されている…。

(まるで大人社会のミニチュアよね)


「…この国に来てからは本当に色々と驚かされる。王女に対する不敬が当たり前だったり、公爵令嬢を貶める悪口を平気で外国人の前で聞こえよがしに聞かせるのが、この国の貴族子女の常識なのだな?」

クリストフが呆れている。


「…内ゲバに血道を上げる様子を見せつける事で実は潜在的にバルシュミーデ人に対して無害さをアピールしてるとか?」

エールリヒも苦笑している。


「そんな訳ないでしょ。バルシュミーデに対して追従する気があるのならクリストフの婚約者に悪意を向ける筈がないわ」


「そう言われればそうだな」


「一見、ヴィヴィアンヌ嬢だけを貶めているように見せかけて、実は私達に揺さぶりをかけているのよ。私達がヴィヴィアンヌ嬢を護るのかどうか観察して弱点を見つけようとしてるのだからタチが悪いわ」

ドロテーアに言わせると私は当て馬らしい。


私に悪意を向けている人達は、それによってバルシュミーデ人がどう出るのかを観察しているのだという解釈。


「…連中の顔を覚えて、後でシャルルに家名と爵位を尋ねる事にする。ベルンシュタイン公爵令嬢に告げ口しておけばアーベレ公爵令嬢にもこの国の国王にも話は通るだろうし、ほくそ笑んでいられるのも今のうちだけだ」

クリストフがそう言うと


こちらの会話が聞こえてでもいたのかーー


私の方を見ながら嘲笑していた令息・令嬢らは、未だ食事を終えていないのにソソクサと立ち去っていった…。



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