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さて【泥棒の極意】で何処まで魔物狩りができるか…
【泥棒の極意】のお手並み拝見。
気楽な気持ちで魔物狩りに参加したが…
(たとえゴブリンでも侮れない…)
と思った。
殺意満々なのだ…。
ヤツらは…。
ヤツらの悪意、殺意をひしひしと感じた。
新人冒険者が
「油断していると低ランク魔物にすら殺られる」
という事は知ってはいたが…
(さもありなん)
と実感した。
真っ直ぐに殺意をぶつけられると、思わず怯みそうになる。
たとえ相手が子供くらいの背丈のゴブリンであっても。
(殺り慣れてないと、怯んで動けなくなっちゃうよね…)
と実戦での問題点が分かったのは、今日の大きな収穫だ。
その点、慣れてる様子のクリストフ達が一緒で良かった。
思わず怯みそうになっても戦意を持ち直せる。
あと、魔物とは言え人型の生き物を殺す事に対しての罪悪感を心配していたが、それもまたクリストフ達の殺り慣れてる様子を倣う事で紛れさせる事ができた。
【泥棒の極意】で心臓を盗み、魔石だけ戻すというやり方は有効だと分かったが…
(不意打ちには対処できないのよね…)
と不安に思った。
(独りで戦う場合には気配隠蔽できるから不意打ちはこちらの専売特許という状態で戦えるけど、仲間とパーティーを組んでの戦闘だと気配隠蔽で存在感を消すと仲間の攻撃を受けかねないわ…)
まぁ、ゴブリン程度ならそうした不安も無くて済むが上位種となると、色々危うい。
(私の冒険者活動は「王都周辺の郊外」に限定しておくべきでしょうね)
と自分の実力の低さが理解できた。
チート能力を使っても、この程度…。
とことん戦闘向きじゃない、という事なのだろう。
「ヴィヴィ!後ろからも来るぞ!」
「了解!」
背後から来たゴブリンを目視した後は真っ先に心臓を抜き取り。
槍で殴り付けてから、ゴブリンが倒れた所ですぐさま心臓を刺し貫く。
その繰り返し。
「上手いぞ!」
と褒められた。
ひたすら作業のように狩り続けると流石に大量のゴブリンも全滅した。
ゴブリンが全て地に倒れたところで
「瀕死を装っているのもいるかも知れないので、気をつけながらトドメを刺していこうか」
と指示が下ったので、私が倒した訳じゃないゴブリンに対しても心臓を刺して息の根を止めていく事にした。
「…ヴィヴィが倒した個体は全て完全に死んでるな。流石だ」
心臓を抜いてるので、殺し漏れはない。
「それにしても『瀕死を装う』ようなゴブリンもいるんですね?」
最後の1匹にトドメを刺してから尋ねたところ
「人型魔物がよく使う手口だ」
との事。
「知恵がある、という事なのでしょうか?」
「おそらくな」
「魔石と牙を回収していくよ〜!」
ドラが声をかけてきたので
「「了解」」
とクリフと私とで答えた。
武器を買う時に
「ペンチも買っておくように」
言われたが、討伐証明部位がツノや牙の時に根っこから引き抜きやすいからだと分かった…。
******************
冒険者ギルドに到着するとーー
クリフは常設依頼の「ゴブリン討伐」の依頼票と共に「討伐証明部位」にあたる牙を提出。
それに加えて魔石も換金。
お金を用意してもらっている間に
「ゴブリンの死骸を放置してきたけど、良かったんでしょうか?」
と尋ねたところ
クリフは苦笑しながら
「魔物は共喰いする事で上位種が生まれやすくなるらしいから、本当はゴブリンの死骸も埋めるなり焼くなりして処理するべきなんだが…穴を掘るのも火葬できる程の火力を出すのも大変だからな。
時折、騎士団が魔物の死骸を埋めるために土属性魔法に優れた騎士を連れて巡回してくれてるらしい」
と答えてくれた。
(バルシュミーデ人なのに、アザール王国の騎士団事情に詳しい…)
やはりバルシュミーデ側で「いずれ自分達がアザール王国内の全てを掌握する」という意識を持っているからなのか…
私としては事情通のクリフに対して微妙な気持ちになった。
お金を受け取った後はキッチリ4等分。
「せっかくだから夕食は店で食べよう」
「寮の食事はワンパターンだから飽きるよな」
「寮の食事は量が決まってるから、いつも足りないのよね」
「ドラは大食いだからな」
クリフ達は夕食は度々外食していたらしい。
通い慣れた食堂があるようなので私も期待して
「有り難くご一緒させてもらいます」
と付いて行く事にした。
案内された食堂内は冒険者だらけ。
冒険者はアザール人だけでなく外国人も多いため、基本的に冒険者向けに商売をしてる食堂や宿屋は店内装飾も食事のメニューも特定の民族色を排除したグローバル調。
冒険者向けの食堂で食べれば、バルシュミーデ皇国以外の国でもバルシュミーデ料理が食べられるという訳である。
と言っても、他の民族にとって美味しくないと感じられるメニューは含まれない。
余所の国の人達が食べてもウケが良いものがこうした多国籍料理店で出される。
私は何が美味しいのか分からないので、クリフと同じものを頼んだ。
「仲が良いねぇ〜。いっその事学生結婚しちまえば?」
とエールリヒがニヤニヤ笑いをする。
「そうだな。確かアザール王国は保護者の許可が有れば15歳以上で結婚できたな。保護者の許可が無くとも女性は16歳から男性は18歳から自分の意志で結婚できた筈だ」
「それだとクリフはまだ2年以上も許可無しでは結婚できないじゃない」
「アザール王国内の異邦人の婚姻は各々の国籍国の法適用になる筈だ」
「今、クリフはランドル王国の公爵令息だったよな?それだとランドル王国の法適用?」
「ランドル王国においてはバルシュミーデ人は本国の法が適用されてるらしい。ランドル王国に帰化しても『バルシュミーデ系ランドル人』は生粋のランドル人よりも優遇されてるそうだ」
「…『バルシュミーデ特権』てヤツね」
「ああ」
「………」
(もうホント、露骨に植民地だ…)
「そういう訳で、バルシュミーデ皇国の法適用だと『保護者の許可が有れば0歳児でも婚姻可能、16歳から自分の意志で婚姻可能』となるのだから、俺は今年以内に結婚できてしまうな…。勿論、ヴィヴィがそれで良ければ、だが」
クリフがチラッと私の方を見た。
「できれば考える時間を頂きたいですね」
(早々に結婚した場合のメリットがあるなら、私も結婚したい…)
こんな不安定な世の中だ。
生き抜くのに少しでも有利な選択をしたい。
「…可愛い婚約者を持つと、色々焦りたくなるのかねぇ〜。〈あんまり早く子供を作ってしまうと学業との両立が大変らしいぞ。学生結婚はしても、学生の間はちゃんと避妊しろよ?〉」
エールリヒが小声でクリフに耳打ちして、クリフの顔が赤くなっている…。
(早く結婚したい、というのは「そういう事」か…)
と何気にクリフの側の欲求を察してしまい、急にこちらまで恥かしくなってしまった…。




