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オカシイ…。
実にオカシイ…。
大時計の裏にある筈の【夢見の香炉】も…
既に誰かに盗まれた後だった。
(もしかして…)
と嫌な予感がした。
「他の七不思議魔道具も片っ端から回収に向かおう」
と決意し、【真実の鏡】の回収に向かったところーー
やはり既に盗まれていた。
(もしかして【封印の巻物】以外は既に盗まれていたとか?…)
聖女に認められる者しか入れない隠し部屋には流石に私では入れないだろうから【聖女の聖杯】も盗まれているのかどうか確認はできないだろう…
と思っていたのだがーー
「聖女とは初代アザール国王の妃の事だ。王家の血を多少なりとも継いでいるお前なら入れる」
とシーカーに言われ、試してみたところ、普通にはいれた…。
そしてやっぱり【聖女の聖水】は既に盗まれていた。
「確認作業になるな…」
シーカーは協力的だった。
シーカー自身、アントワーヌの遺産である魔道具達の事が気に掛かっていたのだろう。
それこそシーカーのサービスで
私は何の代償も払わず
何の危険もなく
トントン拍子で魔道具の隠し部屋を見つけ
「既に盗まれた後だった」
のを確認して周ったのだった…。
「誰が盗んだんだろう…」
不気味だ。
「…小精霊憑きの魔道具が持ち出されて何の問題も起きてないのなら、遺産泥棒は小精霊達に気に入られたという事になる」
シーカーが可愛い猫顔に深刻な表情を浮かべる。
「小精霊達に気に入られるって…。一体何をすれば良いの?」
「さあな?精霊は基本的に嘘吐きとは相容れない。精霊に嫌われないために『嘘を吐かない』『欺瞞に耽らない』のはマナーとして必要な心得だが、気に入られようとするなら、その基準は精霊毎に違う筈だ」
「もしかして、アントワーヌに似てる人とかだったら無条件で受け入れられてしまうんじゃない?」
「精霊は人間の見た目には関心がない。見た目ではなく、魔力の質がアントワーヌと似てる人間がいれば無条件で受け入れてしまう可能性はある。
というかアントワーヌが絡まずに小精霊どもが皆懐いてしまう事の方が考えられない」
「そうなんだ…。それならアントワーヌと似た魔力の人を探して、その人から更に盗むってのは難しいかもね」
「だが確実にそうだと決まった訳じゃない」
「シーカーが姿を消したまま校内をウロウロしてアントワーヌに似た魔力の人を探してみるとか?はできないの?」
「それはできるが…。良いのか?…もしかしたら私までその泥棒を気に入って『主を乗り換えたい』と思うかも知れないぞ?」
「それは困るけど…。でも私達、契約してるよね?シーカーは契約護る精霊だよね?黙って勝手に乗り換えたりはしないよね?」
「それは勿論だ」
それなら安心だ。
「『主の乗り換え』は交渉次第では応じるつもりはあるわ。私は元々独りぼっちだったもの。元通り独りぼっちになっても、今更そこまで動じないわ」
「そうなのか?」
「…『生き抜いていく』のに必要な魔法を使えるようになりたいけど、それもある程度は学院で習えるでしょう。
だからシーカーがもしも『アントワーヌに似た魔力の泥棒に仕えたい』と言うなら、その願いを聞く対価として『私に学院で習えない魔法を幾つか教えて欲しい』と思ってる」
「…だが、それは『泥棒がアントワーヌに似た魔力の持ち主だったら』という仮定の話だろ?もっと別の要素で小精霊達が泥棒を気に入ったという可能性もある」
「…そう言えば、精霊って、人間の側の『生まれ変わり』とかを把握できたりするの?」
「そうだな…。『生まれ変わり』の履歴をまんま辿るような事はできないが、『魂の遺伝子』の変容履歴を読み取る事はできる」
「『魂の遺伝子』…。そんなのがあるんだ…」
「前世の記憶を持った者はそういう点で識別しやすい。前世の記憶が無い者に関しては『読心』『過去見』を使って内面を探り、前世からの持ち越しのトラウマや嗜好を割り出して、そこから辿るので手間はかかる」
「私、前世の記憶あるけど、シーカーは私の前世が判るの?」
「お前の前世は私の知り合いだった者達の中にはいない」
「でしょうね」
「そもそもお前は異界から来た魂だろう」
「あ、やっぱり判るんだ」
「精霊という存在は知霊であるが故に言語のエキスパートだ。『魂の遺伝子』を言語として捉えて読み取ると、前世でどんな人種のどんな民族だったかの情報も言語的イメージで出てくる。
お前の場合は、そうした言語がまるで馴染みのないものなんだ。魔物より異色な魂だ。『異界から漂着してくる魂もある』と知っていれば、自ずとそれだと判る」
「精霊ってすごいな。ホント」
ともかく、シーカーはアントワーヌが遺した魔道具を盗んだ泥棒を探すべく、顕現しっぱなし状態で学院内を彷徨く事にしたのだった。




