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挿絵(By みてみん)


ランベール王からの忠告で

「町中を独り歩きしてはならない」

という事は分かったが…


「学院在学中はこの国に居続けるんだし、町の様子を知っておきたいわ…」

と思っている。


外国人が次々と入ってきて、豊かな外国人が増え、貧しい国民が増えると…

どうしても国は荒れる筈…。


「国民が民族的自虐利他主義に罹患して狂っている」

という訳ではない限り…

正気の国民は

「自国が寄生虫に蝕まれる宿主のような状況になっている」

事態に対して、不安と怒りを覚えるもの。


異邦人達が我が物顔でのさばる世の中で

「国民皆で生き残ってゆきたい」

と国民の多数が思うなら

「弱者を切り捨てながら異邦人を歓迎する権力者達」

に対して下剋上・謀反が起こるのは必然。


そうした謀反が

「実現可能な政治的改革プランを擁している」

場合には、それは革命と呼ばれることになるだろう。


(「他国から妃を迎え、国を乗っ取られそうになる」度に国は荒れるものだし、もしかしたら革命が起こる可能性もあるのかも知れない…)

と思ってしまう。


革命軍が

「武器を持って殺そうとしてくる旧体制派は殺すが、正当防衛以外では殺さない」

と清廉潔白を徹底していなければ…

誰かしら欲を出して、非武装の者達への一方的虐殺・略奪が起きるだろう。


人間は欲深い。

必要最小限の犠牲で世直しをするには

「非人間的なまでの強靭な理性」

が必要だ。

しかしそういった美徳がこの国の平民達にあるのかどうか分からない…。


だから

(私には【泥棒の極意】がある…)

とスキルに頼りたくなる。


革命を起こしそうな革新派の者達にコッソリ近づき

「王族、貴族に対する悪意を盗む」

事で穏便な社会変革へと向かわせられるかも知れない。


別に自分がいなくなった後でならーー

こんな国

こんな国の王族貴族

どうなっても良いのではないか?

と思わなくもないけれど…


(極力人が殺されず殺さずに生きられるなら、その方が良いんじゃないのかな…)

と思う。


無力だと

「平凡と貧しさに紛れて無為でいる」

事しかできない。


だけど無力じゃないのなら何かしらできる。

(この世界には魔法や魔道具があるし、私も「完全に無力」という訳じゃないのよね…)


「そう言えば、『気配隠蔽』で随分と安全に町歩きできるようになってると思うんだけど『透明マント』と『予知魔法魔道具』があった方がより安全よね?」


「〈我の求めに応じよ【シーカー】〉」

と前世の母国語で呼びかけてもちゃんと呼び出しに応じてくれるのだから、精霊は賢い。


「何の用だ。主よ」


「〈聞きたいことがあるの。【隠者のマント】は何処でどうやって手に入れられるの?〉」


「それなら、男子寮の裏庭にある四阿ガゼボ跡の床下から入れる地下室にある筈だ。地下室にある宝箱に入れてある」


「〈宝箱に仕掛けがしてあって開けたら毒ガスが出たりとか、そういうのは無いのよね?〉」


「ああ。何の仕掛けもなく、堂々と入れてある。もしかしたら、既に誰か盗んでいる可能性もある」


「〈それは困るわ。…それにしても男子寮の裏庭…。女子寮の裏庭じゃダメなの?男子寮周りは確か女子は立ち入り禁止の筈よ〉」


「それを私に言われてもな?」


「〈ともかく日が暮れてから気配隠蔽で行ってみるわ〉」


「他にも何か聞いておきたい事はあるか?」


「〈【隠者のマント】の次は【夢見の香炉】を手に入れたいと思ってるわ〉」


「…【夢見の香炉】は大時計の裏側にある。…しかし、言っておくが【真実の鏡】【夢見の香炉】【呪言改竄帖】には小精霊がついている。

【泥棒の極意】を手に入れたお前ならおそらく気に入られるだろうが、小精霊憑きの道具は小精霊に気に入られないと使い物にならないばかりか持っているだけで災いを招く。一応、気をつけておけ」


「〈災いを招くって…。最初から教えてくれても良かったのに〉」


「逆に聞くが、お前は『ヤバい魔道具が王城の宝物庫にではなく学舎内に隠されている』事について不審に思わなかったのか?」


「〈それを言われると、確かに私が迂闊だったわ〉」


「とにかく【夢見の香炉】の時には『我に従え【夢見の香炉】』と唱えて何の反応も無いなら、その時は持ち出しを諦めろ」


「〈分かったわ〉」

シーカーは本当に物知りで助かる。


夜になって、早速、透明マントこと【隠者のマント】を回収すべく男子寮の裏庭へと向かった。

雨天時外出用のフード付きマントを夜中に纏ってウロつくなど、不審者そのものだと思うが、それでも【隠者のマント】は是非とも入手しておきたいアイテムだ。


寮は校舎を挟んで西・東に分かれている。

なので敷地を横断して向こう側へ行く事になる。

直線距離だと300メートルくらいだろうか。

勿論、校舎には夜間は鍵が掛かっていて、内を突っ切ってはいけない。

建物周りを迂回していくので直線距離よりはだいぶ遠回りになる。

意外と遠く感じる。

しかも道が悪い。

王立魔法学院高等部自体が丘の上に建っていて、周りは岩でボコボコしているのだ。


(男子寮の方へ行ける地下通路を発見できていれば使えたかも知れないのに…)

と思わなくもないが、リュカに道順を訊こうとは思わなかった。


「一体、何の用があって男子寮へ忍び込みたいんだ?」

と不審に思われること間違いなし。

「夜這いでもする気か?」

と疑われたら、恥ずかしさのあまり死ねる。


痴女疑惑を持たれずに堂々と男子寮へ行くのは難しい。

なので唯一の友人のリュカにも言えない。

婚約者のクリストフに知られるくらいなら【隠者のマント】を諦めても良いと思うくらい

「男に飢えた令嬢が男子寮の周りをウロつく」

と見做されるのは恥なのだ。


とりあえず、【隠者のマント】を見つけてしまえば、後は【隠者のマント】を使って姿を消せる。

困難は行く時だけ。

帰り道は悪路にだけ気をつけて堂々と帰れる。


そう思って頑張って男子寮の敷地へ辿り着いた。

(裏庭だから、更に男子寮の敷地も突っ切って行かなきゃならないのよね)


コソコソと裏庭へと向かったが…

時折、人の話し声が聞こえてきた。


(夜だし、大人しく寮内に居れば良いのに…)

何が楽しくて夜中に外に出てお喋りをしているのか意味が分からない。


「ーーがーーしてーーだったからだよ」

「ーーでぇ話だな」

「当人がアレじゃどうしようもないんじゃない?」

「全く。学院辞めて寮からも出てって欲しいぜ」

「シーッ。当人に聞き咎められたらどうするんだよ」


だのと言う話から

(どうやら誰かの悪口を言ってるようね…)

という事が判った。


(進行方向に居られると困るな。早くどこかに行ってくれないかしら…)

迂闊すると更に目的地が遠くなる…。


「とにかく、そんな訳で、俺はアイツの事はもう知らない。今後は面倒は見ないって言っておきたかったんだ」

「分かった」


ギィィッ〜

と古い扉が開く音がして

ガチャン

と扉が閉じる音がした後は、やっと人の気配が無くなってくれた…。



やっと辿り着けたガゼボ跡ーー。


(テーブルも椅子も無いから「ガゼボ跡」なのね…)


地下室への入り口がある筈だけど、どうやれば入り口が出現するものか…。

違和感を探して目を凝らす。


(魔眼で見るべきものなのかも?)

と思い、魔力を目に集めて見てみると、案の定、魔法陣が見つかった。


(…この魔法陣の図形って、今までにも何度かお目に掛かった事があるわね)


魔法陣の中央には小さな窪みがある。

窪みの中には「ー」が見える。

コインの縁を引っ掛けて回すタイプの錠だ。


(銅貨なら持ってる…良かった…)

と思いながら、「ー」を回して「Ⅰ」にすると

ストン

と石畳のタイルが一枚陥没した。


(ああ、判った。魔法陣の図形が乗ってる部分のタイルをズラして、魔法陣図形の完成形を壊すのね)

と思い、タイルをズラすと魔法陣が強く光った。



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