表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/39

16

挿絵(By みてみん)


幼馴染の親しみ。

儚いものだ…。


「親しみを生じさせている記憶」

が失われるだけで、人は意見の相違だけで揉めてしまえる。


一つ分かったのは

「破れた網マーク」

「非物理」

の選択で

「親しみ」

のようなものも盗めるという事だ。


しかし盗んだものを自分が使う事とかはできないのだろうか…。

(後で試してみたい)

と思った。


シャルルは

「シャリエール嬢はどうしてあんなに腹を立てたんだ?」

と訝し気に首を傾げている。


それでいてシャルリーヌとの会話は覚えているらしく

「…ヴィヴィアンヌ王女殿下。シャリエール公爵令嬢の言っていた事は、お気になさらないでください。

少なくとも私はシャリエール公爵令嬢とは違う意見ですし、公務に就いていない王族に対しても特に批判する意図はありません」

と自己弁明した。


(「公務」ね…。王城を離れて寮暮らししてる王族に振られる公務なんて、せいぜいがバルシュミーデ皇国からの生徒達におべっかを使う程度でしょうに…)

と内心ムッとしていたので


「…この際なのでハッキリ言っておきますが、私が公務を行なっていない原因は今まで私には何も役割が割り振られていなかった事に加えて、出しゃばって何かしようにも公務に関する予備知識すら教えられていなかったせいです。

軟禁に近い状態で王城の一画で侍女も護衛も付けられずに放置されて育てられたにしては、私も世間知らずながら知恵は回る方ですし、悪意を向けられれば傷つく程度の感性も持っています」

と言ってやった。


謝罪をするお気持ちがお有りなら謝罪を受け入れる気もあります、とでも付け加えてやろうかと思ったが…

流石にそこまでは言わなかった。


だが

(罪悪感くらいは持って欲しい)

と思う。


「名ばかり高位者である弱者」を憎みながら「悪を憎んでいる」かのように自己美化するシャルリーヌのような人達を野放しにしている罪を自覚して欲しいものだ。


******************


トイレ休憩や昼食休憩。


教室を出れば、やはりパスカル達バカップルが絡んでくる可能性が高い。

あと、ドリアーヌとシャルリーヌも。


(認識阻害みたいな感じで自分の存在を認識されないようにできないものか…)

と思うが…


「視覚を盗む」

「聴覚を盗む」

みたいな事をして

「行動不能にする」

のは最終手段にするべきなのだろう。


名ばかり高位者である実質弱者の私が他人から盗まなければならないもの。

それは

「私に対する悪意」

なのだと思う。


【泥棒の極意】を使うには

「〈我に従え【泥棒の極意】〉」

と唱える必要がある。


シーンと静まりかえっている時には使えない。


つまり周りが聞き耳を立てようと息を潜めて様子を伺っている状況では使えない。


(【泥棒の極意】って、あくまでも泥棒なんだから、相手の意識がこちらに向いてなくても良いのよね?)


コッソリ背後から近づいて

「〈我に従え【泥棒の極意】〉」

と唱えれば良いのだ。

楽勝だと思う。


丁度、ドリアーヌが廊下の向こう側から歩いてきた。

廊下に設置されている掃除用具入れのロッカーにもたれかかる様に身を隠した。


(ここからドリアーヌのところまでまだ距離があるけれど、イケるかしら?)

と思い

「〈我に従え【泥棒の極意】〉」

と唱えると、前回のように私以外が時間停止した。


半透明タブレットのホーム画面から

「破れた網マーク」

をタップ。

「非物理」ボタンを選択。


マイクマークとキーボードマークではキーボードを選択。


「ドリアーヌ・パラディーヌの中にあるヴィヴィアンヌ・ド・ブロイ・アザールへの悪意を盗みたい」

と文字を打って

「確定」

ボタンを押した


ところーー


「エラー。ドリアーヌ・パラディーヌが射程距離にいません」

と出た。


(やっぱり距離が離れてると盗めないんだな…)

と思いドリアーヌの方へ近づいた。


15メートルくらい距離があった状態から

14メートル

13メートル

12メートル

11メートル

と近づいて行って

10メートルくらいまで来た時点でやっと

射程距離外のエラー表示が消えた。


のは良いものの…

何故か今度は別のエラーが出た。


「エラー。ドリアーヌ・パラディーヌの中にヴィヴィアンヌ・ド・ブロイ・アザールへの悪意はありません」

と出たので


「………?」

(壊れたのかな?)

と首を傾げた。


いやいやいやいや…。

あれで悪意がないとか、あり得ないと思うんだけれど…。


しかし

「悪意以外の原因がある」

と【泥棒の極意】である小精霊が判断してるのは確かだ。


(それなら…)

と思い

「ドリアーヌ・パラディーヌの中にあるヴィヴィアンヌ・ド・ブロイ・アザールへの関心を盗みたい」

と書き換えた。


(無関心になれば、突っかかる事もないだろうから…)


今度はエラーは出ずに

「ドリアーヌ・パラディーヌの中にあるヴィヴィアンヌ・ド・ブロイ・アザールへの関心はとある物語を消費した時の感情に由来しています。その記憶と感情を盗みますか?はい/いいえ」

と出た。


勿論

「はい」

をタップ。


すると処理ゲージが出てきた。


(これで今後絡まれずに済む…)

とホッとしたところ


「物語由来の感情を失ったドリアーヌ・パラディーヌの中には新たにヴィヴィアンヌ・ド・ブロイ・アザールへの悪意が生じましたが、この悪意も盗みますか?はい/いいえ」

と新たに選択肢が出た。


(二段構えなんですね…。ホントしつこい…)

と少し疲れを感じながら

「はい」

を選択。


今度は処理ゲージが100%になって消えた後

再び問題点が表示される事は無かった。


ホーム画面表示では宝箱マークの上に「2」と出ている。

新しく増えた盗品は

「ドリアーヌ・パラディーヌの、とある物語の記憶情報と消費感情」

「ドリアーヌ・パラディーヌの、社会正義感情」

だ。


前回盗んだ

「シャルリーヌ・シャリエールの、シャルル・ラングランとの思い出」

「シャルル・ラングランの、シャルリーヌ・シャリエールとの思い出」

のうち、シャルリーヌ・シャリエールの記憶をドリアーヌ・パラディーヌへ移せないものだろうかと少し好奇心を感じる。


タップしてみると

「シャルリーヌ・シャリエール」

「シャルル・ラングラン」

の名前の下にアンダーラインが出てキーボード画面が出てきた。

どうやら名前を打ち込む事で使用可能になるらしい。

しかしおそらくこれも

「相手が射程距離にいないとエラーが出る」

仕様なのだろう。


(誰と誰を幼馴染同士という事にして仲良くさせるか、ちゃんと吟味して使った方が良さそうね…)

と思った。


それにしてもーー

男爵令嬢であるドリアーヌが王族に対して持つ悪意が「社会正義感情」というのが…気になる。

シャルリーヌが私に対して持つ悪意もおそらくは「社会正義感情」なのだろう。


私としても社会創造面で実権を握る者達にはノブレスオブリージュが必要だろうと思うけれど…

それはあくまでも「実権を握る者達」に対してだ。


表向き王族という事になっていても王族扱いを受けてきたとは言えない私に対して、何の権限も与えないまま「持つ者の義務を果たしていない」と見做して「社会正義感情」とやらで悪意を持つというのは色々違う。


(不思議ね…。「社会正義感情」なんてどうやって生じているものなのかしら?)

疑問ではある。


社会正義感情が特定の出来事の記憶で生じている場合には、【泥棒の極意】の方でそれを指摘して記憶の方を盗むように示唆してくる筈だ。

だけど、そうなっていない。


という事は特定の記憶だけを盗んだところで「社会正義感情が消えない」から、「社会正義感情それ自体を消す」選択になっているという事だ。


(この国の世論は「民主化」を求める方向へ押し流されている、という可能性があるわね…)

やはり、早めに王女の地位を返上した方が無難なのかも知れない…。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ