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挿絵(By みてみん)


「学院も学生寮も王城とは違う…」

という当たり前の事を実感させられた事もあり

「身を守れる魔道具とか、そういうの、何処かに隠されてたりしないのかしら?」

と思った。


なので一縷の希望に縋って

隠し部屋の中を丹念に物色していく事にした。


そうして部屋の隅々をじっくり注意深く眺めていくとーー

天井の一部に微妙に色の違う箇所がある事に気が付いた。


(…天井裏みたいなスペースがあるのかしら?地下なのに?それとも単なる空気穴に繋がってるとか?)


天井の色が違う場所まで椅子を運んでから

椅子の上に乗り

くだんの箇所を

「えいっ」

と押してみる。


すると

ガコッ

と音がして床板の一部が開いた。

元々椅子が置いてあった場所がだ。


どういうカラクリなのか、天井がスイッチになっていたようだ。


床板の開いた箇所を見てみると「床下収納庫」のようになっていたらしく…

古い小箱が置かれていた。


どれだけ長い間放置されていたのか…

随分と汚い小箱だ。


「お宝が入ってるとか?…箱に罠とか仕掛けられて無いでしょうね?」

と思いながら恐る恐る箱を開けてみると…

巻物のような物が入っていた。


「巻物…」


希少な情報が記されてるとか?

或いは希少な魔法を発動させる巻物型魔道具スクロールとか?


「開いた途端に辺り一面が火の海になったりとか、しないわよね?」

と思いたいが…

安心はできない。


しかし慎重になり過ぎて無為でいるには、私は好奇心が強過ぎた。


「万が一に備えて、この隠し部屋の出入り口を開けておいて、いつでも通路へ逃げ出せるように身構えておきましょう」


一応、保険をかけてからソッと巻物を広げた…。


攻撃魔法が閉じ込められているのかも?

と思った予想は外れてはいた。


ーーが


何かが閉じ込められていた、という部分では予想は当たっていた。


辺り一面、闇が広がっている。

蝋燭の灯りが何処かに掻き消えたかのようだ。


魔眼で見てみたらーー

辛うじて魔力の塊として

「巻物から出てきたモノ」

を捉える事ができた。


魔力の塊がガスの渦巻きのように動き続けているのだ…。


(魔力体、とでも呼ぶべきものかしら…)

「結局、この巻物には何が閉じ込められていたの?」

思わず疑問を口にすると


「実に300年ぶりに人間に会えた。封印を解いてくれて有り難う」

と不思議な声が聞こえた。


音として聞こえているものではなく直接脳に響いてくるかのような奇妙な声。


「私を『人間』と呼ぶ貴方は『人間ではない』のね?」


「そうだ。私は人間ではない」


「生き物ですらないのではなくて?魔力体よね?」


「ああ。しかし特別異色な存在というわけでもない。私のような精霊はおしなべて皆、魔力体だからな」


「精霊…?御伽話に出てくる、あの、精霊?」

(「精霊」って指輪やランプに宿っていて、人間の願い事をきいてくれる存在よね?)


「お前の言う御伽話がどんなものかは知らんが…。私が過去で契約して人間に仕えていた頃には、主人どもは私を『精霊』に分類していた」


「…300年ぶりとか言ってたけど、要するに300年前の人間達は貴方のような存在を『精霊』と呼んでいたわけね?」


「そうだ」


「知性ある魔力体を、昔の人達は精霊と呼んでいたのね…」


「私はしみじみと『知性とは何か?』について考えさせられた。どんなにこちら側に洗練された知性があっても、それを感じ取れる存在がいなければ、知性など『単に整合性に優れただけの妄想』に過ぎないんだ。そのうち、自分自身を保つことすら叶わなくなって消えゆくだけだしな…」


「そうなのかも知れないわね。知性は、『こちらに知性がある』事実を誰かに認識されて初めて意味が生じるものなのでしょうね。

聞こえよがしに悪口を言ってくる人達の言葉を聞いた時には『家畜に人間の言葉が理解できる筈がないと思っている人達が平気で家畜の前で家畜を卑しめる発言をするのだ』という事を思い出していたわ」


「そう。『理解できないだろう』と思っているから、そこに知性があっても構わずに相手を侮る発言をする人間もいる。驕りが過ぎる…」


「…貴方ももしかして誰かに悪口を言われたの?」


「『精霊』は侮られるよりは迷信化して卑しめられる事が多いな。今では『精霊』を『悪魔』と一緒くたにして忌み嫌う者達もいる」


「『悪魔』…。…教会が言う悪魔は山羊の頭で、両性具有の人間の胴体、山羊の足を持つキメラらしいわよ。貴方もそんな姿?」


「いいや。闇属性の精霊は基本的にカラスや黒猫のような黒い生き物の姿をとる事が多い。勿論、山羊が珍しくない高原では黒山羊の姿をとることもある。

精霊は自分の姿を変えられるんだ。人間側のイメージ次第で」


(…捉えどころのない存在ね…。もしかして、地球世界でも本当に「精霊」のような存在がいたのかも知れないわね…)

そう思うと、今更ながら前世のあの世界を懐かしく感じた…。



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