EP 8
降臨!聖獣機神ガオガオン
ルナミス帝国の夜空を、四色の流星が切り裂いた。
東から飛来した朱雀が炎の軌跡を描き、西から駆け抜けた白虎が風を裂く。南の青龍が雷雲を従え、北の玄武が大地を鳴動させながら戦場へと降り立つ。
言葉を持たぬ四神たちは、ただその圧倒的な存在感だけで、迫り来る死蟲機の群れを威圧していた。
「ギ、ギギギギギギギィィィッ!!」
四神のプレッシャーに危機感を募らせた死百足型が、全身の装甲から紫色の不気味な光を放ち始めた。体内にある全ての魔力を『強酸の圧縮ブレス』へと変換し、この一帯を俺たちごと跡形もなく消し去る気だ。
「チッ、あの図体で自爆特攻まがいのチャージを始めやがったか!」
ガオンが舌打ちをする。
しかし、その黄金の瞳は絶望ではなく、歓喜に打ち震えていた。
「おい、ヒョロガキ! そしてみかん箱のタヌキ娘!」
「誰がタヌキですか! 人魚姫のリーザです!」
「どっちでもいいわ! 貴様らのそのバカげたパッション、我は確かに認めた!」
ガオンの胸部装甲が、ガシャァァァン! と重厚な音を立ててスライドし、内部にまばゆく光る空洞――『コクピット』が現れた。
「乗れ! 貴様らの魂の波長、我のコアの特等席で響かせてみせろ!!」
「えっ、乗るって……このロボットの中に!?」
「当たり前だ! 俺の『完全同調』は、物理的にコアに近いほど出力が上がる! リーザ、行くぞ!」
俺は歌い続けるリーザの腰を抱き寄せ、みかん箱を蹴ってガオンの胸の中へと跳躍した。
二人が乗り込んだ瞬間、装甲が閉まり、視界が全天周囲モニターのようにクリアに切り替わる。内部は俺の『完全同調』の魔力と、リーザの歌のバフが直接循環する、黄金の光に包まれた空間だった。
「よし……これでロスなしで1000%のブーストがかけられる! リーザ、サビの準備はいいか!」
「はい、プロデューサー! お客さん(四神)も集まってくれましたし、ここからが本番です!!」
リーザがコクピットの中心で、大きく息を吸い込む。
俺は両手をガオンの操縦桿(のような魔力接続器)に叩きつけ、ありったけの波長を四神へとリンクさせた。
「――来い! 聖獣合体だァァァッ!!」
外では、死百足型が限界まで圧縮した紫色の強酸ブレスを、滝のように吐き出していた。
直撃すればルナミス帝国の外壁ごと溶け落ちる絶望の一撃。
しかし、リーザの爆発的なサビの歌声が、その絶望をかき消した。
『右腕は白虎! 鋼の牙で 絶望さえも砕き尽くせ(ドリル・オン!)♪』
白虎が光の粒子となり、ガオンの右腕へと合体する。強靭な顎を持つ白虎の頭部が拳となり、ガシャキィィィン! と重装甲の腕が形成された。
『左腕は青龍! 紅蓮の雷 悪を裁くレーザーの雨(シュート・ナウ!)♪』
青龍が巻き付くように左腕へ合体。龍の頭部が銃口となり、紅蓮の魔力をバチバチと迸らせる。
『背中に朱雀! 黄金の翼 自由の空へ舞い上がれ♪』
朱雀が炎の翼となってガオンの背中にドッキングする。重力を無視した超高出力のスラスターが火を噴き、大地を焦がした。
『玄武の重力! 揺るがぬ大地 鉄壁の盾で守り抜け♪』
最後に玄武がガオンの下半身と合体し、巨大な脚部と絶対防御の鉄壁シールドを形成する。
「おおおおおおッ!! 力が、無限の宇宙が我の体に満ちていく!!」
四神とガオンの魔力回路が、俺の『完全同調』によって一つに繋がり、リーザの歌声という最強の冷却剤によって暴走を免れる。
完璧なチューニング。奇跡のセッション。
ズズォォォォォォンッ!!!
死百足型の放った致死の強酸ブレスが、直撃する。
だが。
「フン……そよ風にも劣るわ」
コクピット内でガオンが鼻で笑う。
合体した巨大な姿――聖獣機神ガオガオンは、微動だにしていなかった。
玄武の重力操作によって展開された『玄武シールド』が、強酸のブレスを空間ごと湾曲させ、完全に無効化していたのだ。
『吠えろ獅子! 聖なる咆哮♪』
リーザの歌が、クライマックスへ向けてさらに熱を帯びる。
ルナミス帝国の夜空の下、全高50メートルを超える究極の神の兵器が、その完全なる姿を現した。
「よくも我の庭を荒らしてくれたな、害虫ども。貴様らに相応しい『最高の幕引き』を用意してやる」
ガオガオンの胸のライオン(ガオンの頭部)の目が、爛々と赤く輝いた。
さあ、反撃のフィニッシュだ。




