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無能スキル『完全同調』の俺、限界地下アイドル(人魚姫)のプロデューサーになる~歌のバフで聖獣機神が起動して世界を救う~  作者: 月神世一


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EP 7

奇跡のセッション

リーザがみかん箱の上で、深く、深く息を吸い込んだ。

その瞬間、戦場を支配していた不気味な羽音や、死百足型デス・センチピードが装甲を蠢かせる金属音が、ピタリと止んだ気がした。

嵐の前の、静寂。

俺はガオンの装甲に触れたまま、全神経をリーザへと集中させた。『完全同調フル・シンクロ』のパスを通して、彼女の体内で魔力が、かつてない密度で圧縮され、爆発的な熱量を持って渦巻いているのを感じる。

(来る……! これまでの『ポンポコ節』や『スパチャアイドル』とは、次元が違う!)

「……ふぅ」

リーザが目を開けた。

その瞳は、恐怖を払い除け、ただ真っ直ぐに明日を見つめる、真の表現者のものだった。

イントロは、彼女の口から放たれた。

「重厚なブラス音と、地響きのようなドラム――!」

リーザの声が、魔力を帯びて現実の音響へと変換される。スラム街の瓦礫が振動し、空気がビリビリと震えた。

「『アナスタシア……! その絶望の淵で、眠れる魂が目を覚ます!』」

それは、歌というよりは、世界への宣戦布告だった。

「『聖獣合体!!』」

(雄叫び)

ガオッ! ガオッ! ガオッ!

ガオッ! ガオッ! ガオッ!

ガオ・ガオ・ガオ・ガオ・ガオガオオオオン!!

「なぁっ……!? な、なんだこの曲はァッ!!」

ガオンがコクピット(仮)で驚愕の声を上げた。

リーザの歌声に合わせて、彼女から放たれる黄金の魔力が、これまでの比ではない密度と熱量を持って噴出したのだ。それは波紋ではなく、津波となって戦場を飲み込み、ガオンのコアへと奔流となって流れ込んだ。

(ぐ、おおおっ……! 制御が、追いつかねえ……!)

俺は歯を食いしばり、暴馬のような魔力の奔流を『完全同調』で必死に御した。ルランとしての肉体が、莫大なエネルギーに耐えきれず、皮膚の表面から微かに血が滲み始める。だが、ここで手を離せば、ガオンは暴走し、リーザは魔力枯渇で死ぬ。

(プロデューサーが、ステージの幕を下ろさせてたまるかぁッ!!)

俺は魂を削りながら、リーザのパッション(魔力)をガオンの全回路へ、完璧なタイミングで『最適化チューニング』して流し込んだ。

【1番】

静寂を切り裂く 黄金きん咆哮こえ

眠れる獅子のに 紅蓮の火が灯る♪

運命さだめの鎖を引きちぎり♪

錆びついた空 そのこぶしでぶち抜け!♪

「うおおおおおっ!! 滾る、滾るぞォッ!! これだ、この波長こそ、我ら聖獣が求めていた、次元を穿つ『魂の鼓動』だッ!!」

ガオンが歓喜の咆哮を上げた。

黄金の装甲が、リーザの歌声と共鳴し、眩いばかりの光を放つ。自己修復回路が完全に起動し、強酸によるダメージが一瞬で完治した。

一人の勇気が 絆を呼び覚まし♪

五つの光が 一つに重なる時♪

次元の扉を こじ開けて現れろ!♪

「ギギギギギッ!!」

死百足型が、ガオンから放たれる尋常ではないプレッシャーに本能的な恐怖を感じたのか、残った死蟲機の群れに総攻撃を命じた。

地を埋め尽くす死蟻型デス・アントと、空を覆う死蜂型デス・ビーが、津波のように俺たちへ押し寄せる。

「邪魔だァッ!! 我らのステージを、下等な這い虫が汚すなァッ!!」

ガオンが吠えた。

リーザの歌声(BGM)に合わせて、ガオンが前脚を大地に叩きつける。

その瞬間、ガオンを中心に炎の衝撃波が円状に広がり、迫り来る数百匹の死蟲機を、一瞬にして消し炭へと変えた。

(叫べ! 魂のブースト!)♪

起動ブートせよ、ガオン!」♪

「リーザ! 今だ、四神を呼べ!!」

俺の叫びに、リーザが、みかん箱の上で片手を天に掲げ、全力の、魂の底からのシャウトを放った。

聖・獣・合・体! ガオガオン!!

その声は、ルナミス帝国の壁を越え、空を越え、次元の壁を越えて響き渡った。

ゴォォォォォォン……ッ!!

帝国の四方から、重厚な鐘の音のような音が響いた。

東の空から、紅蓮の炎を纏った朱雀が。

西の山々から、鋼鉄の牙を持つ白虎が。

南の海から、蒼き雷を帯びた青龍が。

北の果てから、大地を揺るがす玄武が。

沈黙を守り続けていた四神の聖獣たちが、リーザの歌声に、ルランの同調に、ガオンの呼び声に応え、この戦場へと集結しようとしていた。

「ギ、ギギギギギィィィッ!!」

死百足型が、絶望的な状況を悟ったのか、その巨体をうねらせ、トドメの一撃を放つべく、全エネルギーを顎へと集中させ始めた。

――勝負は、次の瞬間だ。

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