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無能スキル『完全同調』の俺、限界地下アイドル(人魚姫)のプロデューサーになる~歌のバフで聖獣機神が起動して世界を救う~  作者: 月神世一


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EP 4

毒舌の守護獣、推参

「チッ……どいつもこいつも、か弱き羽虫の分際で我の庭で群れてんじゃねえぞ。目障りだ」

土煙の中から姿を現した鋼鉄の獅子は、鼻を鳴らすようにそう吐き捨てた。

黄金の装甲は炎の光を反射して神々しく輝き、その瞳には圧倒的な強者の自負が宿っている。

「なんだ、これ……ロボット……?」

俺が呆然と呟くと、機械の獅子はチロリとこちらを一瞥し、忌々しそうに口を開いた。

「フン、無知なヒョロガキが。我をそこら辺のガラクタと一緒にすな。我こそは聖獣ガオン。この世界の秩序を見守る、至高の調停者よ。……おい、そこのマヌケ面したお前ら。死にたくなきゃ、そこらで震えて這いつくばっておけ。ここからは我の『掃除』の時間だ」

尊大。唯我独尊。そして凄まじいまでの毒舌。

だが、その言葉に違わぬ圧倒的な力が、彼にはあった。

ガオンが地を蹴った瞬間、空気が爆発したかのような衝撃波が走った。

目にも止まらぬ速度で跳躍したガオンは、上空で旋回していた死蜂型の群れのど真ん中に突っ込み、その強靭な鋼の爪で次々と装甲を切り裂いていく。

ガキィィィンッ! ズガァァァン!!

衛兵の魔法すら傷一つつけられなかった死蟲の装甲が、まるで紙切れのように両断され、部品を撒き散らして墜落していく。

着地と同時に、今度は地上に群がっていた死蟻型のど真ん中へ突撃。炎を纏った前脚の一振りで、三匹の蟻がまとめて吹き飛ばされた。

「す、すごい……! プロデューサー、見ましたか!? あのロボットさん、とんでもなく強いです!」

「ロボットさんって呼ぶな、絶対怒られるぞ……。だが、あの出力と装甲の硬さ、どうなってんだ? 明らかにこの世界のオーバーテクノロジーだろ」

俺とリーザは物陰に隠れながら、その規格外の戦闘に息を呑んだ。

ガオンは圧倒的だった。たった一機で、何十匹という死蟲機の群れを一方的に蹂躙していく。これなら、このまま放っておいても全滅させてくれるんじゃないか。

そう思っていた、矢先だった。

「ひぃぃぃっ! た、助けてぇ!」

瓦礫の下敷きになり、逃げ遅れた炊き出しのおばちゃんが悲鳴を上げた。

それに呼応するように、三匹の死蟻型が彼女に向けて顎を開き、強酸の溶解液を吐き出そうとする。

「チッ……世話の焼ける脆弱な肉塊どもめ!」

ガオンは悪態をつきながらも、その俊敏な機動力で一瞬にしておばちゃんの前に割り込んだ。

ジュワァァァァッ!!

ガオンの黄金の装甲が強酸を浴び、白煙を上げる。

本来なら回避できたはずの攻撃。だが、背後の人間を守るために、彼はあえてその身を盾にしたのだ。

「フン、この程度の酸で我の装甲が溶けるか。舐めるなよ」

ガオンは平然と言い放ち、酸を吐いた死蟻型を噛み砕いた。

しかし、俺の『完全同調』の感覚が、微かに警鐘を鳴らしていた。

ガオンの体から放たれる圧倒的な魔力の波長が、先ほどの酸を浴びた箇所から少しずつ乱れ始めている。自己修復機能か何かに、エネルギーを回しているのか?

「おい、リーザ。あいつ、口は悪いが……案外お人好しなんじゃないか?」

「はい! あんなに悪口言いながら、ちゃーんと皆を守ってくれてます! ツンデレです!」

リーザが謎の分析をしていると、大地が突突如として激しく揺れ始めた。

ズズズズズズ……ッ!!

「なんだ!? 地震か!?」

ガオンの足元の石畳が、内側からの凄まじい圧力によって隆起する。

次の瞬間、地盤が爆発するように吹き飛び、巨大な影が姿を現した。

「ギチギチギチ……!!」

全長30メートル。

幾つもの節分かれた強固な黒鋼の装甲。無数に蠢く鋭利な刃の足。

それは、他の死蟲機とは比較にならない威圧感を放つ巨大なバケモノ――『死百足型デス・センチピード』だった。

「チッ、図体ばかりデカいムカデ野郎が。我の前に這い出てくるとは良い度胸だ」

ガオンが低く唸る。

死百足型は、その身を大きく持ち上げると、超硬度の顎をガチガチと鳴らし、ガオンに向かって規格外の強酸を滝のようにブチ撒けた。

「ぬぅッ!」

ガオンは咄嗟に炎の障壁を展開するが、先ほどの庇う動きでエネルギーの波長が乱れていたことが仇となった。

障壁を貫通した強酸の一部が、ガオンの前脚関節部に直撃する。

ジリジリジリッ!

「ガ……ッ! 忌々しい……!」

ガオンの片膝が、ガクンと崩れた。

そこを逃さず、死百足型の巨大な顎がガオンの胴体を凄まじい力で挟み込み、そのまま壁へと叩きつけた。

ズドォォォンッ!!

「ガオンさん!!」

リーザが悲鳴を上げる。

「マズい……! あのデカブツ、さっきまでの雑魚とスペックが桁違いだ!」

土煙の中で、ガオンの黄金の装甲が鈍く点滅していた。

『出力低下』。俺のユニークスキルが、彼の魔力の波長が急速に弱まっていることをはっきりと感じ取っていた。

死百足型が、トドメを刺すべく再び顎を大きく開く。

このままじゃ、あのふんぞり返った毒舌ライオンがスクラップにされてしまう。

そして彼がやられれば、次に食われるのは俺たちだ。

「……くそっ、前世から俺は、ブラックな現場ばかり引き当てる星回りらしいな!」

俺はリーザをその場に残し、瓦礫を蹴って、倒れたガオンのもとへ全速力で走り出していた。

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