第二話 武装する乙女(嘘)
――――――底層区画
それは、経済的事情や犯罪などの不祥事で社会では生きられなくなった人を国が集めた地下地域。国が処分したい人を集めた地域、表向きは地上の治安確保と社会復帰のためのコミュニティ。表向きはそうだが、要は殺したいが、国のイメージに関わるというための措置。そんな人のゴミが集められた地域だから、そこには犯罪なんて言葉はなかった。底層区画に住む人は、生きるために他者を蹴落とし、奪い、足掻いていた。底層区画の街は全員が獲物を狙う捕食者でそれから逃げる標的だった、そこには殺人、強盗、強姦、そんなもので溢れかえっていた。
国も、そんな人のことなんて、生きようが、死のうがどうでもよく、区画から出なければ、何をしても問題がなかった。
―――――――そう、底層区画から出ることは法で堅く禁じられていて・・・・・・その行為そのものが悪と定められている。
第二話
武装する乙女(嘘)
「・・・・・・・・・。」
――――――カチャ、カチャ・・・
小さな少女がゆっくりと歩くたびに金属音が小さく鳴る・・・
直志はその姿に絶句と疑問の混ざった表情をしていたが・・・俺はアリだと思う。
事の発端は俺と直志、日輪ちゃんが出会って、行動を共にする様になって割とすぐ、ポイント交換の話題になった時だった・・・・・・
「ポイント交換・・・ですか・・・」
「そうだ、スキルの弱いプレイヤーは強力な武器で戦闘力を補ったり、有益なアプリでゲームを優位に進められる。」
「そうなんですか・・・」
「へぇ・・・この、ス・・・スマホにあったポイント交換のボタンってそういう意味だったのか・・・」
俺も日輪ちゃんも直志の言葉に関心する。
「とは言っても、天城さんは余ったポイントがありませんから交換できませんけど。」
「えっ!?なんでっ!?」
なんという不平等・・・
「なんでって・・・天城さんのスキルがプレイヤーで最も強力だからでしょう・・・」
「誰も殺せないのにっ!?」
「私もそこまではわかりませんよ・・・ところで、竜胆さんは残りのポイントっていくつなんですか?」
理不尽なのでは・・・
「えっと・・・95ポイントらしいです。」
「・・・ということは、スキルは5ポイントなんですか!?」
「は、はい・・・」
日輪ちゃんのポイントに直志が驚き声のトーンがちょっと上がっていた。
「さ、差支えがなければどんなスキルか教えてもらえませんか・・・?」
「えっと、視界を煙とかで遮られないっていうスキルです。」
「・・・それだけ?」
「はい・・・。」
「・・・・・・まぁ、裏を返せば交換できるポイントがたくさんある訳ですし、いいんじゃないですか。足りない部分は補えるゲームシステムになってますから。」
そんなことがあって、日輪ちゃんは右手にショットガン、左手にアサルトライフルを携えている。
『アプリがあっても作戦なんてたてられないし』
と日輪ちゃんが言って、アプリは地図と人の分布を地図に反映させるアプリを交換した。アプリの合計が30ポイントで残りの65ポイントで両手の銃を交換した―――――その判断基準に呆れたのか直志がさっきっから溜息ばかりついている。
直志は気に入らないみたいだけど、俺はこの武装した日輪ちゃんに「萌へ」を感じている。
・・・「萌へ」もあの人が教えてくれたことだったな・・・あの時はメイド服だったっけ・・・俺はそこまでキはしなかったけど、この日輪ちゃん・・・いや・・・
「日輪たん・・・クるなぁ・・・」
「えっ・・・!?」
「天城さん・・・」
おっと、口に出てしまってたか・・・
「いやぁ・・・ウォーリアー日輪たん・・・萌へるわぁ・・・」
「この人聞かれたからって開き直って堂々と言い出したっ!!」
「日輪たん・・・『BAN!!』ってやってっ!!」
「オーダーまで始めちゃいましたよこの男!?」
「バ・・・BANっ!!」
ぅっおっ!!可愛いっ!!ぺロッって出したベロピッピもウインクもチャーミング!!
「可愛いっ!!ペロピッピもベロピッピもウインクピッピもメッチャキュートっ!!」
「天城さん、どうしたの・・・こんな人でしたっけ?」
「ハッ・・・ま、まさか・・・これが・・・恋っ!?」
俺はついに恋を・・・
「ただの肉欲では・・・?」
直志が冷めた目でヤジを飛ばす・・・そんなヤジに予想外の反応が――――
「直志さん、本当の肉欲はさっきの純夜さん程度じゃないですよ。」
まるで、本当の肉欲を知っているかのように日輪ちゃんは窘める――――
「・・・竜胆さん?」
「ハッハッハwww!!処女が、なんか偉そうに言ってやがるっ!!」
「天城さんは笑いすぎですよっ!?」
「―――――――私、処女じゃないですよ。」
―――――――――――ピシッ!!
世界が凍り付いた――――――
「ダメだろぉ!!それはやっちゃいけないヤツだよっ!!」
「もうヤってますけど・・・」
「そうじゃなくって!!ヒロインが非処女ってキャラ構築的にダメだろぉ!!」
・・・俺は何を言っているんだ?
「天城さんは何言ってるかわかりませんけど、絵的にもそれは・・・」
「俺が惚れた清純はロリッ娘がビッチだった件・・・」
「・・・本当に何を言っているんですか、天城さん・・・」
「日輪ちゃんっ!!・・・一発ヤらせてっ!!」
「天城さんはそんな持って行き方でいいんですかっ!?」
「いいっ!!」
「最低ですねっ!!」
「何か勘違いされてますね・・・私、底層区画出身ですから・・・」
底層区画出身・・・
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
それを聴いた瞬間、俺も直志もその真意を理解した。
強姦が横行している底層区画出身の女性が処女なんて、レア中のレア。
「ですから、私も底層区画出身として、自分の欲望のためなら・・・誰だろうと簡単に殺せますよ。」
大きなモノを背負った小さな身体が持つ黒い銃がその存在感を放っていた。
Another View
宮内 直志
底層区画出身・・・彼女、竜胆日輪は、この倫理もへったくれもないゲームの中で一切の動揺を見せず、彼女が本来持っているであろう明るさを見せている根幹はその出身にあるのかもしれない。
私も学生時代に見聞を広げるためにと、一度だけ底層区画を訪れたことがある。不衛生な無法地帯は弱肉強食が常で、同行した警護官の屈強さを見てもなお襲い掛かってくる輩までいるほどに荒れていた。あそこで最低限の生活を確保できているのは各地域で最も強い者と、その隙を上手く突く賢い者だけだろう。そう、それ以外の者は飢餓に苦しみ、病に怯え、理不尽な暴力を振るわれ、死んだ方が楽なのではないかと思える生活を送っていた。
底層区画は地獄だという印象が残っている。
環境もさることながら、国からの縛りが最も厳しいと思った理由だ。
底層区画から出るための条件は非常に厳しく、底層区画では稼げない多大な額を稼ぐか、上層に住む人間から引き抜かれるか・・・それ以外の方法での脱獄は罪として問われる。
加えて、「底層区画人権保護法」なんて法律がある。「底層区画の人も、人として扱う」という表向きは優しい模範的な法律・・・だが、その法の中には“自害を禁止”する法律が存在していた。“死んだ方が楽な環境”で、それはあまりにも・・・残酷。恐らく法を決めた立法機関に悪気はないのだろうが、その善意がいったいどれだけの人を苦しめているのだろうか・・・。劣悪な環境に閉じ込められて、出ることも、死ぬこともできず、心身共に痛めつけられ続ける場所を地獄と言わずに何というのだろうか。
そんな場所にいた彼女が、生命が危険に晒されるこのゲームにどんな感情を抱くだろうか・・・下手したら殺されることすら喜んで受け入れるかもしれない。・・・まぁ、彼女にも願いがあるみたいだし、自害なんてしないのだろうけど・・・
とにかく、底層区画出身の竜胆さんの生命に対する価値観は間違いなくズレている。自らの死をどう思っているかも心配だが―――――――
―――――――――ズガアァァァン!!
「――――ゴガァ!!」
突如襲い掛かって来た獣・・・サーベルタイガーの胴体ド真ん中に、一切の躊躇いを持たず引き金を引いていた。
動かなくなったサーベルタイガーは男性の姿になる・・・
「がっ!!ゴホッ!!・・・チ、チクショウ・・・」
撃たれた獣・・・もとい男性は咳こみ吐血し蹲る・・・これは致命傷だろう・・・さっきの獣は恐らくスキルでこの男性が変身していたのだろう・・・そんなことより・・・
「り、竜胆さん・・・君は・・・どうしてそんなに簡単に生命を断てるのでしょうか――――」
「え?だって、殺さないと殺されちゃいそうだったから・・・」
躓きそうな石が転がっていたから、蹴って退かした――――そう言う様に彼女は言ってのけた。
彼女は人が普通に持つ価値観・・・倫理観を持ち合わせていない・・・私は、大人として、彼女に何かをしてあげられるのだろうか・・・
「はぁあああんっ!!日輪ちゃんカッコカワイイっ!!惚れるっ!!」
天城さんが奇声を上げて、床をのたうち回っている・・・私は医師として彼に何かをしてあげられるだろうか・・・
こんなに弱々しい少女が躊躇なく生命を断ち、これ程に愉快な少年が世界を恨んで壊そうとしている・・・底層区画で育った二人の強靭過ぎるメンタルはもはや麻痺のレベルで二面性とも言える・・・これが底層区画の生んだ闇か・・・
天城さんもそうだったが、この竜胆さんという少女も、その背後に潜むモノがあって、それに私は興味を惹かれていた。
どーも、ユーキ生物です。
あまり時事ネタは取り上げない主義ですが、このストーリー似てると思ったのでちょっと話題にします。
あのアメフトだかの話です。指示があったか無かったかとかは本筋ではないので無視しますが、「試合に出たかったら」という取引、それが成り立つスポーツの世界・・・「〇人で行うスポーツ」という人数制限が、「選ばれた人間のみ許される」という感じを出しますよね。加えて強豪校とかもそれを助長してると感じます。そういう「特別感」が底層区画に似てるな、と・・・底層区画は特別じゃない側ですが・・・窮屈感が何となくシンパシー感じたんで(語彙力・・・)取り上げてみました。
まぁ、「チームスポーツ廃止」なんて言う気はないですけど・・・
ちなみに余談ですが、私ユーキ生物はそういう場合「正面から叩き潰す派」です。これでも学生時代は全国大会で表彰台に乗った経験もあります。私の競技論では、結局競技なんて「自分の方が強い・優れている」という自己満足でしかないですから、コスい手使って勝っても「勝った感」が足りなくなって思い返してもしこりが残ることにしかならないでしょう。自分で「勝った」と思うために私は叩き潰す派でいます。
世事の話をすると老けた感があって嫌ですね。政治の話とかし出したら老獪の仲間入りですかね(偏見)・・・気を付けます。
次回は6月8日投稿予定です。




