第三話 真っ直ぐな志で
第三話
真っ直ぐな志で
「ぐ・・・ぁ・・・。」
「そうです、後は読み込み時間待機していれば完了です。」
「・・・・・・。」
灰色と紅色が混ざった通路で、俺は変態女装紳士・・・もとい直志にミッションである連絡先の取得の仕方を教わって、日輪ちゃんが仕留めた野獣せ・・・もとい這い蹲って呻く男のスマホにケーブルを繋げていた。
連絡先を取得すると取得した相手の星座と名前の情報が俺のスマホに表示される。
「獅子座の稲葉空海・・・これで、水瓶座、蟹座、牡羊座に続いて4人目・・・」
「え・・・今・・・稲葉って・・・?」
「え?・・・あぁ、うん。この人は稲葉って名前みたいだね・・・」
「――――『延命』」
直志は稲葉にスキルをかけたみたいだ。・・・見た目は何も変わらないけど。
「宮内さん・・・もしかして、この人・・・お知り合いだった・・・?」
日輪ちゃんがやってしまったのかと問う―――――
――――――ドスッ!!
「――――えっ!?」
日輪ちゃんのおっかなびっくりだった顔が何が起こったのかわからないという無表情に変わる―――――
直志が稲葉の胸にナイフを突き立てていた。
「コイツは――――私が殺さないといけない・・・!!正義の・・・・裁きをっ!!」
―――――ドスッ!!ドスッ!!ドスッ!!
「っ・・・ぅ・・・が・・・ひゅ・・」
直志は倒れていた稲葉に馬乗りになり何度も何度も力いっぱいナイフを刺す・・・稲葉は日輪ちゃんの銃撃で内臓が既にやられていたが、更にグチャグチャにされ、喉もかき切られ、もはや声らしい声が出せていなかった・・・これが、死なせないスキル・・・
「うっ・・・」
その光景はあまりに非日常で・・・気分が悪くなって俺も日輪ちゃんも目を逸らす・・・
「はぁ・・・はぁ・・・どうだい?・・・軽蔑したろ?」
赤黒くなった直志が満足したのか、立ち上がって俺達に訊いてくる。
・・・その問いに俺は過敏に反応した。
「まさか・・・それが・・・宮内さんの願い、なんだよね・・・だったら、私は・・・同意はできないけど、否定なんてできないよ。」
俺が強烈な鉄の臭いに詰まって出なかった言葉を日輪ちゃんが言ってくれていた。
「・・・ケホッ・・・日輪ちゃんの言う通りだ。日輪ちゃんがもう少し遅く口を開いてたら俺が言ってた。――――――願いに善も悪もないだろ。」
・・・これは自分を正当化している言い分なのかな・・・
「天城さん・・・」
「・・・ただ、直志がこの稲葉を殺したかった理由は知りたいかな・・・」
稲葉への怒り方を見たら、もしかしたら直志は俺の同士なのかもしれないと期待を持ってしまった。
「・・・私は、宮内直志、産婦人科医です。・・・そしてこの男、獅子座の稲葉空海は連続妊婦強姦殺人魔・・・。」
あぁ・・・そういうことか・・・真面目なんだな、直志は。
「世間で頻発するようになった妊婦強姦殺人・・・ただの殺人、ただの強姦なら私の怒りもそこまでではなかったはずです。犯罪を容認なんてしませんけど、ゼロになるとは思えません。すなわちどこかに被害者は生まれ続けるのですから・・・憤りはあっても、納得できなくもない・・・。けど、その被害者が妊婦・・・これからの生活に希望を持つ人、それを待つ人もいて・・・何より、生を受ける直前でそれを断たれた生命・・・生まれることを許さない理不尽が私はどうしても許せない・・・。」
理不尽―――――――
『どうして・・・何で朝日さんがっ!!おかしいだろ!!何で朝日さんが悪者になってんだよっ!!』
・・・それを語る直志は拳を堅く握り締めていたが、俺もまた、そうだった。・・・直志の己は正しいと疑わない怒りは俺の・・・忘れようとしていたあの時の怒りを僅かに想起させた・・・あー、ダメだ・・・コレは思い出しちゃダメなヤツだ・・・
「・・・飯にしようぜ!!飯!!」
「天城さん・・・いくら何でも死体の前でそれは・・・」
思い出したくない事を思い出しそうになって、それを紛らわせるための突飛な提案・・・さすがに無理があったかな・・・
「そう言えばそこの部屋にこんなものがあったんだけど・・・何かなコレ・・・爆弾?」
日輪ちゃんが何か容器の様なものを取り出す――――
「カップ麺・・・竜胆さんまでこんなところで・・・」
「カップ・・・メン?」
「直志・・・底層区画にはカップ麺もなければお湯だってめったなものだぞ。」
底層区画に保存食は無意味・・・誰もが飢えていて食料は保存する間もなく消費するし、保存したとしても、それはただ、他者に奪われるリスクでしかない・・・誰が保存なんてするだろうか。お湯だってそうだ。飲み水に困っているのにどうしてそれを温められようか・・・。
「そういえば、そうでした・・・竜胆さん、それは確かに食料なんですが・・・お湯がないと食べられないんですよ。」
「お湯なら俺が持ってるよ。」
「そんなことだろうと思ってました!!」
なんか手元にあったから差し出したのに、直志に呆れられた様にツッコミを入れられてしまう・・・。
「延命のスキルを解いて場所を変えればいいんじゃないの・・・?」
「・・・・・・それは・・・コイツにはもう少し苦痛で苦しんでもらわないと・・・」
「直志・・・集団行動を円滑に進めるには各自の妥協だと思うけどな。」
「う・・・」
鉄の臭いで満たされた紅の空間で俺達三人はカップ麺を啜った。
「んー!!こんなにおいしいモノがあったんだ!!しかもあったかいっ!!」
「カップ麺を食べて世界を知る少女・・・こんな光景を見ることになるとは・・・」
「しかも殺人現場で」
「あー、うん。私もこんな食卓を囲むとは思わなかったですよ。」
「アチチ・・・フー・・・フー・・・チュルッ・・・んー!!・・・口の中が幸せっ!!」
「食レポ上手いなぁ・・・」
「というか、可愛ければなんでも美味しそうに見えるよな。」
「天城さん、それは色眼鏡って言うんですよ。」
「・・・ナニソレ・・・?」
「・・・はぁ・・・あなた達には色々教えないといけないみたいですね・・・」
「・・・・・・でもいいのかな・・・」
「何がです?」
「んー・・・一度良いものを知ってしまうと、悪いものが日常だった日輪ちゃんは自分が・・・不幸だったということを自覚しちゃうじゃん・・・」
「でも、無知以上の不幸はないよ。」
俺は直志に言ったが、それに即答したのは日輪ちゃんだった。
「私は・・・知らない方が幸せなことがあるとは思わないわ。だから私は――――――」
「テメェら・・・よくもやってくれたなぁ・・・!!」
「・・・えっ!?」
日輪ちゃんの言葉を―――――――稲葉空海が遮った。
どーも、ユーキ生物です。
私が書いた話を読み返していて「一話短けー」と思いました。大体3000文字という目安で書いてますが、それがいけなかったですね。次に作るプロットからはもう少し長くしようと画策してます。というか長くします。前後編とかになるかもしれないですね。まだまだ未定ですが。
次回投稿は6月22日を予定してます。




