第一話 不発
――――一年程前、世界を揺るがす大規模テロ事件が起こった。
後に義務教育の社会科で取り上げられることとなる社会的にも重大なテロ事件
テロリストが政治中枢機関に立て籠もった事件
その事件が社会的に大きく影響した点は数多く存在する。
一つ、国を動かす議員およびその警備含め、計1000人以上を殺害した凶悪度の高さ
一つ、それを許してしまった国の警備レベルの低さ
一つ、立て籠もった討議場以外の国家運営機関の同時爆破というテロの規模
一つ、首謀および実行犯はたった一人の男という驚異的な能力
一つ、その首謀者は事件当時17歳だったという若き犯行
一つ、首謀者は底層区画出身
一つ、事件の凶悪度と出身を加味し、彼の刑罰に少年法が摘要されなかった差別の象徴
――――――この事件は、最も生命の価値の低い人間が、最も生命の価値が高い人間を大量に殺害するという特徴を取って「窮鼠獅子狩り事件」と名付けられた。
Desire Game -2nd players-
太陽の章
――――――何を欲する――――――
「人類全てを・・・根絶やしにっ!!」
第一話
不発
「・・・・・・。」
コンクリートに囲まれた部屋で目を覚ました俺は、いつの間にか手にあった蒲鉾板みたいな画面と睨めっこをしている。なんか押せそうな部分があったので押すと、画面に「プレイヤー情報」「アプリ」「ポイント交換」という文字が浮かび出た。
「ふふっ・・・」
文字が読めることの喜びを感じて思わず笑いが漏れちまった。
―――――タン
デジタル蒲鉾板の使い方はわからないが、さっき押したボタンをもう一度押しても何も起きないから、画面の「プレイヤー情報」という部分を指先で叩くと―――――
名前 :天城 純夜
星座 :蠍座
願い :滅亡
経歴 :テロリスト
スキル :視線での殺害(100)
ミッション :プレイヤー全員の連絡先の取得
残りポイント:0
これは・・・俺の名前が・・・このスキル・・・もし本当にできるのなら、確かに俺の願った能力を与えられたことになる・・・あ・・・あー、そういうこと。何か望みを訊かれた記憶が微かに残ってるな・・・スキルを与える代わりにミッションをクリアしろと・・・他にも俺みたいなプレイヤーがいると・・・合点がいったぜ・・・
そう言えば、デジタル蒲鉾板にケーブルみたいなのがあったな・・・これで連絡先を取得するんかな・・・?
―――――コツ、コツ・・・
――――足音っ!?
俺は昔の癖で身構える・・・・・・けど、俺は他のプレイヤー全員から連絡先をもらわないといけないんだったことを思い出し――――
「ヘイ彼女、今ちょっといい?」
「・・・・・・は?」
扉を開けて足音の人物・・・ちょっと冷めた視線を送る女性に話かけていた。
「・・・なんですか?」
眼鏡の奥にある瞳から冷めた視線を送られて心が折れそう・・・
「あ、その・・・俺のミッションに協力して欲しいんですけど・・・」
さっきのテンションはどこへ行ったのやら・・・心を強くしたいぜ・・・
「・・・僕がキミに協力するかはやることの内容次第ですね。」
「あ、あの、俺も初めてするんでよくはわかんないんですけど、このケーブルであなたのコレと俺のコレを繋げて欲しいんだけど・・・」
蒲鉾板っぽいけど、決して蒲鉾板ではないのでコレ呼ばわりで何とか伝えようと試みてみた・・・
「・・・いいわ、あなたのスマホを貸して。」
「え、あ、ありがとう・・・」
そう言って俺はこの眼鏡の女性にデジタル蒲鉾板・・・ス、スマホつってたっけ?スマホを渡す・・・
「・・・・・・キミ・・・」
「ん?」
眼鏡の女性が俺のスマホを見て何かを言おうとこちらに目を向け―――――
「終わったわ・・・それと、キミ、このスマホはそうホイホイ他人に渡さない方がいいわよ。」
そう警告をして彼女はスマホを俺に手渡し、踵を返して歩き出してしまいます――――
スマホを渡さない方がいい・・・?どういうことだ・・・?
疑問に思い俺はスマホを見ると――――
「ぁ・・・あ・・・あっ!!」
その画面には俺が元テロリスト天城純夜であり、視線だけで人を殺すスキルを与えられたことが堂々と表示されていて――――
――――マズい・・・ここは過去の経験に沿って口封じを・・・折角、人類を根絶やしにする能力をもらったことだし、試し撃ちってことで―――――
―――――ギンッ!!
俺は殺意を持った視線を彼女に向け――――
――――――カツ、カツ、カツ・・・・
彼女は何事もなかったかのように歩き去って行き―――――
「・・・・・・あれ?」
誰もいなくなった孤独な空間に俺の気の抜けた声だけが響いた・・・
「・・・・・・ま、そう都合よくいかんか・・・」
視線だけで人が殺せたら苦労しないよな・・・
―――――カツ・・・カツ・・カツ・・・
さっきの眼鏡の女性が去った方とは逆方向から足音が聞こえてきたな・・・さっきと同じようにミッションだけでも達成しとこうか・・・
「へい、彼女・・・俺とカブトムs・・・」
そこには妙に背が高く、肩幅がややあって、髪の長い女性・・・女性・・・?
「お前、男じゃねぇかっ!?」
「どうしてわかったんですか!?」
女装男子がそこにはいた。
「いやー、まさかこんなに早くバレるとは・・・最初にあった人が女好きだったのが運の尽きでしたね・・・」
いけしゃあしゃあとこの女装男子、宮内直志は言ってのける。
「勝手に俺に変な設定つけるなよ。」
「いやぁ、すいません。・・・でも、よくわかりましたね。」
「いやいや、わかるわ。本当の女の子はお前みたく肩幅はないし背も低い、それに・・・こんな風にふにふにしてるんだよ。」
―――――ふにふに・・・
そう言って俺は手元にいる小さな本当の女の子の頬を揉む・・・
「・・・・・・え?どちら様?というか、どこから出したのこの子!?」
「あの・・・どこのどなたか存じませんが、出合ってすぐに女性のほっぺを揉むのは失礼じゃないですか・・・?」
なんかキレ気味の小さな女の子・・・柔らかさと共に頭に浮かんだ言葉を俺も口にする。
「えっと、お嬢ちゃん、誰?」
「お前も知らないんかいっ!!」
女装男子にツッコミを入れらた。
「り・・・りゅう・・・」
「竜胆です。」
「そ、そうそう、り、竜胆・・・にち・・・ひ、ひわ・・・」
「ひ・の・わ!!・・・もうっ・・・私は竜胆日輪です。」
「読みにくい名前だな・・・」
「そんな人の名前にケチつけられても・・・」
俺が日輪ちゃんと戯れていると、スマホを弄っていた直志が口を開く――――
「・・・終わりましたよ、私と竜胆さんとの連絡先の交換・・・それにしても天城さん・・・あなた・・・」
「ん?ああ・・・スキルか・・・お前に会う前に一回試しに使ったんだけど、なんともなかったぞ。そらそうだよな、視線で人が殺せたら世話ないわ。」
「ん?・・・んんっ?」
どうにも疑問を持っている様な直志だったが、使えないもんは使えない・・・直志と日輪ちゃんにもスキルなんて無いと教えとくべきだろうか・・・
「スキルが・・・ない・・・?」
「何か、条件とか、かな?」
「もう一回試しってことで直志に・・・」
「ちょっとっ!!試しで殺さないで下さいよ。」
「そうよ。私が殺せる人が減るじゃない!!」
・・・殺せる人が、減る・・・? どういうことだ・・・?
「・・・日輪さん、今のってどういう意味でしょうか?」
「もちろん、牡羊座の私のミッションです。『三人の殺害』が私のミッションですから、現状で私以外のプレイヤーが三人以下になったら私のゲームクリアはなくなってしまいますから。殺さないといけないプレイヤーとかがいたら私に譲ってくれないかな、なんて思ってます。」
「殺害のミッション・・・こんな小さな子に・・・」
「・・・俺達は殺さないのか?」
当然の疑問だろう。
「殺さない・・・とは言いませんけど、お二人はいい人みたいですから、殺さなきゃ私が死ぬ、っていう状況になったらですかね。」
「・・・俺はいい人なんかじゃねぇけどな。」
・・・まぁ、悪い人になろうなんて思ったこともねぇけど。
「生命に優劣をつけると?」
直志が日輪ちゃんに突っかかる。
「・・・それが、何か?」
「君くらいの歳だと『生命は平等』っていうものじゃないのかと・・・」
「・・・そうなんですか?」
日輪ちゃんが俺に問いかける。なんて答えるべきか・・・
「・・・さぁ、俺の育ちも普通じゃねぇからな・・・」
「そうですか・・・」
底層区画出身が普通の教育なんて受けられるわけがない。
「まぁ、誰がどんな思考を持つかはわかんねぇけど、生命は平等じゃない、これはハッキリ言える。そして、平等じゃない生命を平等に扱おうとするのが世界だということも・・・その結果も一応知っているつもりだ。」
「・・・・・・。」
直志が何かを言いたそうに俺を見る――――
「まぁ、とにかく私は殺すべきだと思った人を殺してミッションをクリアしようと思ってるんで、お気になさらず・・・」
てへへ、と恥ずかしそうに言う日輪ちゃん・・・可愛い・・・
「・・・・・・君達は・・・」
直志が何か呟いていた。
Another View
宮内 直志
―――――テクテク・・・
―――――スタスタ・・・
私の前を歩く二人――――天城純夜君と竜胆日輪さん・・・その背中と一緒に手元のスマホを見る――――
私のアプリの一つで各星座の経歴・・・どんな罪を犯したかを知ることができる。
牡羊座の日輪さんは「脱走犯」・・・どこから脱走したのだろうか・・・心当たりはあると言えばありますが・・・
蠍座の純夜君は、さっき彼のスマホでも見た「テロリスト」・・・このゲームに参加させられる一年くらい前に起こったテロ・・・逮捕された犯人・・・少年法そっちのけで公開された名が確か、アマギジュンヤだったはず・・・そして、視線で殺すスキル・・・加えて先程の――――
「―――――まぁ、誰がどんな思考を持つかはわかんねぇけど、生命は平等じゃない、これはハッキリ言える。そして、平等じゃない生命を平等に扱おうとするのが世界だということも・・・その結果も一応知っているつもりだ。」
そう言う彼のことが気になって仕方がなかった。
彼は一体どんな境遇で、彼に何があって、あんな事件を起こし・・・そして何を願ったのか・・・
それを知りたいという欲求でいっぱいになってしまった私は、危険極まりない『火薬庫』の様な二人と行動を共にすることにした・・・
―――――世界に振り回されたあなたへ―――――
どーも、ユーキ生物です。
投降三日前に章タイトルを変更しました。「2nd」の第四章は「太陽の章」でいきます。
憶えていたらどこかで没になった章タイトルを公開できたらとか考えてます。
ちなみにゴールデンウィークになんかやりたいとか何話か前の後書きで書きましたが、作成中です。イベントを書いていたらこの第一話が遅れそうになったので中断して本編を書くことにしたので、イベントの公開はまだ先になりそうですが・・・今しばらくお待ちください。
スキル最大ポイントの純夜と最小ポイントの日輪、そして直志の物語です。シリーズ前作で出ていた「アップデート」を前「存在の章」で出したと思ったら、今度は「底層区画」ですよ。この二つの章を公開したいのを我慢するのは中々焦れましたね。
そんな「太陽の章」もよろしくお願いします。
次回は5月25日投降予定です。




