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悪役令嬢に転生したので、ヒロインを殺します――私は“悪”だから  作者: フーマ


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攻略再編

「…………」


 私は小さく息を吐く。


「とにかく疲れたわ」


 今日は色々ありすぎた。

パーティの掃除。急に光る魔法。


 そして――ジョミナー。


「帰りましょう」


「はーい」


 アンラはいつもの調子で返事をした。

私たちはそのまま、寮へ戻った。


 ◇


 寮の部屋へ戻る。


「ふぁああ……」


 扉を閉めた瞬間。

アンラが大きく欠伸をした。


「疲れたー」


「あなた、ほとんど寝ていたでしょう」


「でも疲れるものは疲れるよ」


「…………」


 相変わらずだ。

アンラは鞄を適当に置くと、そのままベッドへ向かった。


「じゃあ、私は寝るねー」


「早すぎない?」


「眠いから」


「…………」


 アンラは布団へ潜り込む。


「おやすみー」


「はいはい。おやすみ」


 数秒後。


「……ぐぅ」


「…………」


 本当に寝た。


「早っ……」


 私は呆れながら自分の机へ向かった。

本当なら私もベッドへ倒れ込みたい。


 今日は掃除もした。ジョミナーとも揉めた。

正直、もう何も考えたくない。


 けれど――。


「…………」


 私は椅子に座った。

机の上にノートを広げる。


「……今のうちに整理しておきましょう」


 今日のことを。


 そして――。

これからのことを。私はペンを握った。


「まずは……」


 ノートの一番上に書く。


『シャンデリアの事件で起こったこと』


 そこから、今日の出来事を順番に書いていく。

ロインがシャンデリアの下にいた。

私は、それを確認した。


 そして――。


 ノイズ。


『――ザザッ。』


 次の瞬間。

ロインではなく、フレンが倒れていた。


「…………」


 ペンが止まる。

私は、その部分をじっと見つめた。


『ノイズが発生した直後、結果が変化した』


 そこまで書いて、少し考える。


『現時点では、ノイズが世界の状態を修正するような働きをしている可能性がある』


「…………」


 まだ仮説だ。確証はない。


 けれど――。


『私がこの世界へ来た時』


『ロインを刺した時』


『カリバー学園へ入学した時』


『そして、シャンデリア落下』


 どれも。このゲームとロインに関係している。

偶然だとは思えない。


「……だったら」


 私は小さく呟く。


「このノイズは……」


 何かを正そうとしている?この世界を。


 『恋する姫と終わらない奇跡』というゲームを。


 ゲーム本来の形へ戻そうとしている?


「…………」


 ペン先が止まる。


『仮説』


 その文字を付け足した。


『ノイズは、この世界の“ズレ”を修正するために発生している可能性』


「…………」


 もし、それが正しいのなら。

私がロインを殺そうとするたびにノイズが発生するのも説明できる。


 ゲームのヒロインであるロインが死ぬ。それは、本来のゲームには存在しない。


 だから――。


 世界が、それを許さない。


「…………」


 私は眉をひそめた。


『ノイズがある限り、ロインを殺すことは不可能なのか?』


 そこまで書いて。少し考える。


『結論を出すのはまだ早い』


 すぐ下に書き足した。


『ただし、不可能に近い可能性が高い』


「…………」


 だったら。どうする?私はペンを指で回す。


「……うーむ」


 けれど。

今回、完全に何も得られなかったわけではない。


 私はノートへ視線を戻す。


『今回、フレンが重傷を負った』


 そして。


『ロインは精神的なダメージを受けている』


「…………」


 ロインは泣いていた。あの時の顔を思い出す。

自分が狙われたわけではない。


 けれど。

自分の目の前で、大切な人が傷ついた。


 それだけでも。

十分にロインの心を追い詰めることができる。


「……これは重要ね」


 私は書き足した。


『ロインを直接殺せなくても、精神的に追い詰めることはできる』


 そして――。


 もう一つ。


「……ジョミナー」


 私は名前を書いた。


『フレンが負傷したことで、ジョミナーがロインの近くにいる時間が増える可能性』


「…………」


 これは厄介だ。かなり。


『ジョミナーは私を疑っている』


『そして、ロインを守ろうとしている』


『今の状態でロインの近くにジョミナーがいるのは危険』


 私はペンを止めた。


「……正直」


 私は小さく呟く。


「打つ手がないかもしれない」


 ジョミナーをどうにかしなければ。

ロインへ近づくことすら難しくなる。


 しかも。


 あの男は――。

私が何かを企んでいると、本気で疑っている。


「…………」


 さらに。頭に浮かぶ顔があった。


「……アンラ」


 私は隣のベッドを見る。


「…………」


「ぐぅ……ぐぅ……」


 完全に寝ている。私はノートへ視線を戻した。


『アンラ』


『魔法の知識・技術ともに非常に高い』


『こちらが何か隠していることにも、時々鋭いところを見せる』


「…………」


 今日もそうだった。

あの子は、私が何かを隠していることに気づきかけていた。


 今のところ。

私を疑っているわけではない。


 けれど――。


『警戒は必要』


 そう書く。そして、少しだけ考える。


『信頼関係を作っておくか?』


「…………」


 私はアンラを見る。


「…………」


「ぐぅ……」


 寝ている。


「…………」


 私は少し考えて。ペンを動かした。


『やめておこう』


 その下に続ける。


『今は、ただの同居人程度でいい』


 アンラとの信頼関係を作るのは、おそらく難しくない。

魔法に興味があると言えば。たぶん、簡単に食いついてくる。


「…………」


 ただ。


『面倒なことにも付き合わされそう』


 それは間違いない。魔法について話し始めたら。

朝まで延々と聞かされる可能性すらある。


「…………」


 私は小さく息を吐いた。


 そして。ノートの最後に、大きく書く。


『現状の問題』


『一、ノイズ』


『二、ロイン』


『三、ジョミナー』


『四、アンラ』


「…………」


 そして――。


 その中でも、一番気になる名前を見つめる。


『ジョミナー』


「……今は、こいつね」


 私はペンを置いた。


「どうしたものかしら……」


 しばらく考えていたけれど。もう限界だった。


「…………疲れた」


 私は椅子から立ち上がる。ノートを閉じる。

今日はここまで。


「続きは……明日考えましょう」


 そう呟いて。

私はベッドへ向かった。


 そして――。


 深く考えることをやめた。

今は眠る。明日になれば。

また何か思いつくかもしれない。


 そうして私は――。


 ゆっくりと目を閉じた。


 そして――。


 次の日。私の日常が戻ってきた。

教室へ向かい。授業を受ける。


 いつも通りの一日。


「…………」


 教室に入ると。

隣の席では、アンラが机に突っ伏していた。


「…………」


 相変わらず。いつ来たのか、まったく分からない。

私は自分の席に座る。


 そして――。


 授業を受けながら、昨日のことを考えていた。


「…………」


 次のイベント。これについて考えていた。

私がイベントを気にしているのには理由がある。


 今の私の星は――一つ。


 ロインは二つ。


 ここが重要だ。


 ゲームでは。


 主人公が二つ星になると、自然とフレンとジョミナーも二つ星へ上がってくる。


 そして。


 セレブスは――永久に三つ星。

攻略対象としての立ち位置が、最初から決まっている。


「…………」


 そして。

隣でぐっすり眠っているアンラ。


 この子は――永久に一つ星。


「……本当に寝てるわね」


「……すぅ……」


 聞こえていない。私は小さく息を吐く。


 そろそろ。

私自身も二つ星へ上がることを考えないといけない。


 ゲーム通りなら。二つ星になれば、次のイベントが増える。


 ロインとの関わりも。ジョミナーとの関わりも。


 自然と増えていく。


 けれど――。


「…………」


 やっぱり。

ジョミナーの存在が気になる。

あの警戒心。あれは厄介だ。

私が何かをしようとすれば。

あいつは、すぐに気づくかもしれない。


「…………」


 次のイベントは――。

ゲーム通りなら、しばらく大きなものはない。


 能力を上げる期間。

そういう時期だったはず。


「…………」


 うーん。どうしたものか。私は頬杖をつきながら考える。


 ゲームの知識。ノイズ。


 ロイン。ジョミナー。


 考えることが多すぎる。

そんなことを考えているうちに――。


 気づけば。昼になっていた。


「…………」


 私は席を立つ。

今日も一人で食堂へ行こうとしていた。


 そう思った時だった。


「……あれ?」


 私は隣を見る。

そこにいるはずのアンラが――。


「いない」


 机が空いている。


「…………」


 別に。誘おうと思ったわけではない。いつもなら。

昼になっても机で寝ている。


 だから――。


「……珍しいわね」


 私は少しだけ気になった。けれど。

それ以上は考えず、一階の食堂へ向かった。


 ◇


 食堂へ着く。

昼休みということもあって、多くの生徒で賑わっている。

私は適当に昼食を取る場所を探して――。


「…………」


 ふと。視界の端に見覚えのある黒髪が入った。


「…………?」


 私は足を止める。


 そして。そちらを見る。


「…………」


 いた。アンラだ。


「…………」


 なぜか。食堂で普通に昼食を食べていた。


「…………」


 私はしばらく、その姿を見つめた。

いつもなら。寝ているはずなのに。


「…………」


 どうして――。

今日は、ここにいるのだろう。

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