表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/12

第一章 6 『僕もあんな学生生活を送りたい』

数分が秒のように過ぎていく中、ひかるおばさんが口にする言葉の一つひとつに、僕の心臓はますます高鳴っていった。


彼女は、その学校で過ごした三年間、乗り越えなければならなかった数々の困難について、僕に語り続けてくれた。


どうやって、一人ひとり、友達と呼べる人たちと知り合っていったのか。


彼らと共に経験した、あらゆる出来事。


それは、僕には到底想像もつかないような学生生活だった。


生徒と教師が互いに交流し合う学校。


APAが存在しない国。


それを想像しようとするたびに、胸の奥が締め付けられるような感覚に襲われた。


それは単なる感動ではなかった。


むしろ、好奇心と羨望、そして抑えきれないほど膨らんでいく願望が奇妙に混ざり合ったような感覚だった。


「そうね、実。リンカーのメモリに写真をたくさん保存しているの。取りに行って見せてあげるわ。すぐ戻るから」


そう言うと、叔母は席から立ち上がり、バッグが置いてあるリビングへと向かった。


叔母が遠ざかっていくのを見送りながら、僕はその場にじっと座り続けていた。


なぜかは分からないが、「写真」という言葉を聞いただけで、体が少しこわばった。


それまでは、叔母が話してくれたことはすべて、どこか遠い話のように感じられ、まるで僕が生きている世界とは別の物語のようだった。


だが、写真が存在するのなら、それは現実なのだ。


数秒後、叔母はリンカーを装着して席に戻ってきた。


「準備はいい?」


「は、はい!」


僕の返事は、思ったより少し緊張した声になってしまった。


すると、ボタンを一つ押すだけで、あの特徴的な音と共に、一枚一枚の写真が僕のリンカーに送られてきた。


ピッ――


一枚ずつ、まるで静かに横切る流れ星のように、画像が僕の目の前に現れ始めた。


そこには四人の人物が写っていた。男性二人と女性二人。その中には叔母もいた。


最初は、ただじっと見つめることしかできなかった。


それらの写真には、叔母が友達と様々な場面で過ごしている様子が写っていた。


教室で、休み時間の終了を告げるベルの音を待ちながら、机を寄せ合って話している姿。


学校の屋上で、広大な青空の下、昼食を分かち合っている姿。


廊下を偶然歩いていた先生と、笑い合っている姿。


放課後の時間を過ごし、誰も帰ろうとする気配を見せない様子。


そして、他にもたくさんの場面があった。


一枚一枚の写真は異なっていたが、すべてに共通点があった。


どの写真でも、叔母は僕が今まで見たことのないような笑顔を浮かべていた。


それは、僕を元気づけるために見せていた大げさな笑顔ではなかった。


また、叔母が遊びに来るたびに、僕たちの家に入ってくる時に見せていた、エネルギーに満ちた表情でもなかった。


それは、もっと自然な笑顔だった。もっと軽やかな笑顔だった。まるで、その瞬間、幸せそうに見せるために無理をする必要がなかったかのように。


僕の指は、メガネの縁の上で動かなくなった。


その写真を見つめれば見つめるほど、まばたきをするのが難しくなっていった。


写し出された瞬間があまりにも多く、僕の体のあらゆる部分が、同じことを叫びたがっているようだった。


「僕もあんな学生生活を送りたい!」


その思いが僕の心の中にあまりにも強く湧き上がり、まるで声に出して言ったかのような感覚さえ覚えた。


それまでは、自分の学生生活は退屈で、単調で、孤独なものだとしか思っていなかった。


周りの誰もがそれを当然のこととして受け入れているように見えたから、自分には変えられないことだと。


しかし、あの写真を見た後、その言い訳はあまりにも薄っぺらに感じられるようになった。


そして、叔母が歩んできたのと同じ道を歩みたいという願いに駆られ、僕は尋ねた。


「僕だって、あの同じ学校に通えると思う……!?」


ひかるおばさんは、僕の質問に不意を突かれたかのように、何度かまばたきをした。


そして、その表情が少しだけ真剣なものになった。


「残念ながら、海外留学のための奨学金は、とっくに廃止されてしまったのよ」


ひかるおばさんは、さっきより低い声でそう言った。


僕の夢を打ち砕こうとしているようには聞こえなかった。むしろ、僕がすでに知っているはずなのに、ほんの数秒間だけ無視していたかったことを、無理やり伝えようとしているようだった。


「もう知っていると思うけど、日本の国境は他国に対して閉鎖されているの。出入国するには、特別な許可が必要よ」


「そうだったね……」


僕は意気消沈しながら、叔母にそう言った。


ほんの数秒前まで感じていた高揚感は、まるで誰かが僕の心の中で起きていることすべての音量を下げたかのように、少しずつ消え始めていった。


叔母はメガネを外し、うつむいた。


そして、懐かしさに満ちた表情で、首から下げたペンダントをそっと撫で始めた。


「ねえ、実……あの三年間を経て日本に戻った時、私はもう『先生になるために勉強しよう』と決めていたのよ」


ひかるおばさんは、首から下げたペンダントをゆっくりと撫でながらそう言った。


彼女の視線は少し下を向いていた。まるで、昔の決断だけでなく、当時の夢や希望までも思い返しているかのようだった。


「大学に入学してからは、海外で友達と一緒に過ごしたあの素敵な体験を、すべて再現したかったの」


それを聞いて、僕は黙り込んでしまった。


それまで、僕はあの三年間が彼女にとってどれほど素晴らしいものだったかということしか考えていなかった。しかし、叔母にとって、その経験は帰国した時点で終わっていたわけではなかった。少なくとも、心の中では。


「でも、乗り越えるのがとても難しい問題に直面してしまったの……」


「問題?」


「つまり、その問題はAPAだったの」


それを聞いて、一瞬、息が止まったような気がした。


「一年間、クラスメートに何度も何度も近づこうと試みたけど、ついに諦めてしまったの。そして、ここ日本では教師が生徒に対して果たす役割に気づいたとき、私は教師になるための勉強をやめることにした」


その時、僕は気づいた。


それはかなり当たり前のことだったが、その瞬間になって初めて、本当に理解できたのだ。


叔母がクラスメートに近づけなかった理由は、彼らもまたAPAを使っていたからかもしれない。


僕と同じように。


日本においてAPAが存在し、人々がそれを利用し続ける限り、叔母が僕に見せてくれた写真の数々は、僕にとって現実のものにはならないだろう。


机を寄せ合った教室。


青空の下の屋上。


廊下での笑い声。


放課後の会話。


それらはすべて、僕には手の届かない世界のもののようだった。


それでも、僕はそれを受け入れたくなかった。


あの写真を見た後では、なおさらだ。


「ひかるおばさんの言う通りかもしれない……」


僕は胸に手を軽く当てた。


「でも、おばさんが話してくれたあの話や、見せてくれたあの写真の数々……どんな生徒だって、あんな生活を送りたいと思うはずだよ!」


「実……」


「だからこそ……!」


「実!?」


その瞬間、僕の中に湧き上がった決意が、僕を席から勢いよく立ち上がらせた。椅子が乾いた音を立てて後ろにずれたが、気にも留めなかった。


右手を胸に当てた。まるで、今にも口をついて出そうとしている言葉を、その場所にしっかりと留めておかなければならないかのように。


それが馬鹿げた考えなのかどうかは分からなかった。


しかし、初めて、何もしないまま学生生活が終わるのを座って待っているだけにはなりたくない、と感じた。


そこで、心の底からこう言った。


「僕が学生生活を変える! 海外の学校に通うんじゃなくて……ここ、日本で! そうすれば、今度は僕が、友達との写真をおばさんに見せてあげられるよ」


その言葉を聞いた叔母は、たちまち呆気にとられた。


二人の間に沈黙が流れた後、ひかるおばさんはこう言った。


「それが君のやりたいことなら、応援するよ」


そう言ってくれた時、なぜかひかるおばさんの笑顔は、どこか引きつっているように見えた。


それは奇妙な表情で、当時の僕には理解しがたいものだった。


まるで、彼女の一部は僕の言葉を信じたいと願っている一方で、もう一方はそれを実現するのがどれほど難しいか、すでに悟っているかのようだった。


その笑顔は、今日に至るまで、僕の頭から離れない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ