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第一章 2  『もう……あなたにはうんざりよ』

カナエとミノルの間には、完全な沈黙が流れていた。


ミノルはノートパソコンから顔を上げ、向かいに座っているカナエのAPAを見つめた。


普段は黄色く輝いているAPAの瞳は、スリープモードに入ると、昔のコンピュータが使われていない時のように、濃い灰色に変わる。つまり、カナエはこのAPAをスタンバイモードのままにして、自宅で作業をしているということだった。


ミノルは嫌そうな顔で教室を見回した。


他のクラスメートたちのAPAも、先生のものも含めて、すべて同じ状態だった。


すると彼は天井を見上げながら、両手で髪をかきむしり、髪をぐしゃぐしゃにした。


—これって、一体どうやって『ペアワーク』って呼べるんだ?


彼は独り言のようにつぶやいた。


教室の誰も、パートナーと話そうとすらしていなかった。


ミノルはため息をつきながら、再びカナエのAPAに視線を戻した。


(まあ……僕たちだって、そんなに話してるわけじゃないけど……)


作業を始めてから30分以上が経っていたが、まだカナエとは一言も言葉を交わしていなかった。


ミノルは腕を組んで、無表情なAPAをじっと見つめた。


(……話しかけてみるべきかな?)


この1年間、カナエに何度断られたかを思い出すだけで、心臓の鼓動が少し速くなった。おそらく答えは「ノー」だろうと、すでに覚悟していたからだ。


それでも、このチャンスを逃すわけにはいかなかった。


ミノルは首を振り、小さく咳払いをした。


そしてようやく、口を開く決心を固めた。


—あの……カナエさん。


数秒後、「ピッ」という音が鳴り、APAがスリープモードから解除され、その瞳が再び黄色に変わった。再生された声を聞いて、ミノルはすぐに笑顔になった。


[どうしたの……? 作業のほうで何か問題でも?]


—えっ……いや、それとは全然関係ない!


[じゃあ、どうして私の邪魔をしたの? 作業に関係ない用事なら、話しかけないでほしいわ。]


そこには、いつもの冷たく無関心な声が響いていた。


カナエは、まるで仕方なくそうしているかのようにミノルに話しかけていた。それも驚くことではなかった。数ヶ月間同じ教室で過ごしてきたが、クラスメートのほとんどが彼に対して同じ態度をとっていたからだ。


—え、えっと……その……


彼の声は途切れ途切れになった。


—その……ちょっと作業の手を止めて、少し話せないかなと思って……


沈黙が訪れた。


一言も、ビープ音ひとつもない。30秒の間、カナエからはただ静寂だけが流れていた。


—カ……カナエさん……?


ミノルの声は震えていた。


カナエのAPAは黄色い目を向けたまま、何の声も再生しなかった。ただ、ミノルを無視しているだけだった。


ミノルは、この状況からどう抜け出せばいいのかと必死に考えた。唾を飲み込み、気力を振り絞った。


そして、この数ヶ月の間に何度もカナエに伝えてきたのと同じ言葉を繰り返した。


—も、もう何度も聞いたかもしれないけど……この機会に、君と話したいんだ。君の友達になりたいんだ。


カナエのAPAは、苛立ったため息を再生した。


[またなの……まあ、驚くことでもないけど……いい? はっきり言っておくわ。君の言っていることなんて、完全に時間の無駄よ。]


ミノルの胸が締め付けられた。これは、これまで何度も繰り返されてきた拒絶の一つに過ぎなかった。


しかし、たとえもう選択肢がなくなっていたとしても、そこで諦めるわけにはいかなかった。


—時間の無駄なんかじゃない。


彼はためらうことなく、穏やかに答えた。


—これを、学校での日常や責任からのちょっとした休憩だと思ってくれ。君という人間を、本当に知りたいんだ。君がどんな人なのか、心から知りたいんだ!


[……32回目ね。]


ミノルは戸惑いながらその言葉を聞いた。


[今年に入って、君と私は同じような会話を32回もしてきたわ。いつから数え始めたのかは分からないけど……そのたびに断ったことは、はっきり覚えているわ。どうして今回は違うと思うの?]


ミノルの口元が歪んだ。


もう、何を言えばいいのか、何をすればいいのか。


心臓が激しく鼓動する中、彼はすべてを変えるかもしれない、あるいはカナエに永遠に無視されてしまうかもしれないという決断を下した。


深く息を吸い込み、拳を握りしめ、APAをじっと見つめた。


—カナエさん。


彼は力強い声で切り出した。


—君と僕は2年近くクラスメートだけど、君について知っているのは、名前と名字、そして学級委員長だということだけだ。僕が自分のAPAを使わずに授業に出ているから、君は僕のことをもう少し知っているかもしれないけど……でも、何かがおかしいと思うんだ。


ミノルは少し身を乗り出した。


—毎日8時間以上も一緒に過ごしている二人が、お互いのことをこれほど知らないなんて、おかしくないかな? 君はただ来て……接続して……誰とも話さずに切断するだけ。退屈だと思わない? 僕たちは青春を無駄にしていると思わない? この学校での時間はもう残り少ないのに、大切な思い出すら作れていない……『友達』と呼べる人さえいないんだ。


彼の声は決意を込めて高まった。


—僕が望んでいるのは、君の本当の姿を知るチャンスをくれってことだけなんだ!


静寂が再び二人を包み込み、ミノルは息を呑んだ。


[ミノルさん……]


ついにカナエが口を開いた。


[もう……あなたにはうんざりよ。]


その言葉は、まるで誰かがミノルの心臓を踏み潰したかのように、彼を打ちのめした。

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