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第一章 10 『本当の私を見せてあげる』

授業は16時10分に終わった。

 

僕はまだ自分の机に座ったまま、教室を見渡し、クラスメイトたちのAPAを一つずつ確認しながら、すべての電源が切れていることを確かめていた。

 

あのメールを書いた人物が僕のクラスの生徒だと仮定すれば、待ち合わせ場所へ向かうために、その人物のAPAはいずれ起動するはずだ。

 

少なくとも、そうなることを僕は期待していた。

 

もう一度、周囲を素早く見回した。

 

教室に残っているAPAのうち、不審なものは一つもなかった。

 

どれも微動だにせず、光も音も発しておらず、まるであのメールなど存在しなかったかのように、僕だけがそれを必要以上に大げさに捉えているかのようだった。

 

それでも、僕はあと数分、座ったまま待つことにした。

 

もしかすると、そのメッセージを送った人物は、みんなが帰ってしまうのを待っているのかもしれない。

 

あるいは、僕の直後に外へ出る姿を誰にも見られたくなかったのかもしれない。

 

考えられる説明はたくさんあり、そうした可能性が残っている限り、これが単なる冗談だと考える理由はなかった。

 

少なくとも、そう自分に言い聞かせようとしていた。

 

時間は刻々と過ぎていった。

 

時折、APAの方を振り返り、どこかのランプが点灯したり、立ち上がる際の金属音が聞こえたりしないか耳を澄ませた。

 

しかし、教室は相変わらず静まり返っていた。

 

時計が16時35分を指したとき、どれ一つとして音を立てることはないのだと悟った。

 

僕は机から立ち上がり、カバンを肩にかけると、歩き始めた。

 

1階へと続く階段を降りると、僕は学校の人気のない廊下を歩いていった。

 

廊下の突き当たりを曲がると、メインの中庭に通じる出口にたどり着き、僕はしばらく立ち止まった。

 

僕が今出てきた校舎は、僕と同じ2年生用のものだった。

 

3年生の校舎は僕の左側にあり、1年生の校舎は右側にあった。

 

待ち合わせ場所は、僕の目の前、校舎本館の裏手にある。

 

あの距離からは、誰かが待っているかどうかは見えなかった。

 

そこにAPAがいるかもしれないと想像しただけで、僕の足取りは重くなった。

 

胸には奇妙な圧迫感があった。それは緊張と、認めたくない希望が入り混じったような感覚だった。

 

何しろ、誰がメッセージを送ってきたのか、また、なぜ僕を呼び出したのか、その意図はまだ分からなかったのだ。

 

重要なことかもしれない。

 

あるいは、単なる冗談かもしれない。

 

僕は緊張を抑えようと、ゆっくりと数回深呼吸をし、足取りをしっかりと保ちながら歩き続け、ようやくその場所にたどり着いた。

 

最初に目に入ったのは、本館の壁のそばに立つ巨大な木だった。

 

その樹冠は建物のほぼ半分まで届いており、その真下には、青緑色やライラック色の花々に囲まれた長い銀色のベンチがあった。

 

葉はゆっくりと揺れながら舞い落ち、暖かい日差しの下で輝く芝生の上に降り積もっていた。

 

それは信じられないほど美しい光景だった。

 

悪趣味な冗談を仕掛けるには、あまりにも美しい場所だった。

 

しかし、すでに16時41分になっていたにもかかわらず、そこには誰もいなかった。

 

僕は数秒間じっと立ち止まり、木の後ろや建物の両脇を見つめた。まるで、視線を外した瞬間に、待ち合わせの相手が現れるかのように。

 

何もない。

 

僕は歩き続け、その巨大な木の前にたどり着いた。

 

それからベンチに座り、バッグを隣に置くと、待ちながら葉がゆっくりと舞い落ちる様子を眺めた。

 

最初は、どんな物音にも気を取られてしまった。

 

枝の軋む音、風が花を揺らす音、あるいは建物の方から聞こえてくるかすかな物音に、すぐに顔を上げてしまった。

 

だが、誰も現れなかった。

 

時間は刻々と過ぎていったが、僕はあまり時計を見ないようにしていた。そこにどれくらいいるかを数え始めると、その人はおそらく来ないだろうという事実を受け入れざるを得なくなるような気がしたからだ。

 

だから、待ち続けた。

 

待った。

 

太陽がようやく学校の本館の陰に隠れるまで待った。



 

※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 

僕はまだ、あの大きな木の下に座っていた。

 

待ち合わせ場所に到着してから、1時間と少しが過ぎていた。

 

先ほどまで芝生を照らしていた光は消え始め、空気は最初よりもずっと冷たく感じられた。

 

その頃には、物音がしてももう顔を上げることさえなかった。

 

「間違いない……これは単なる悪趣味な冗談に過ぎなかったんだ……」

 

僕はそう呟きながら、視線を地面に落とし、両手を膝の間に置いていた。

 

もちろん、その結論にはもう30分近く前に達していた。

 

それより前だったかもしれない。それでも、心の片隅では、誰かが今にも現れるのを待ち続けていた。

 

もしかすると、走ってやってきて、遅れたことを謝るかもしれない。もしかすると、その子のAPAに何か問題があったのかもしれない。あるいは、僕の前に現れるだけの勇気を振り絞るのに時間がかかっただけなのかもしれない。

 

僕が立ち上がってその場を去りたくなかったからこそ、そういった可能性をすべてでっち上げていたのだ。

 

だが、もう自分を欺き続ける意味はなかった。

 

それはかなりあからさまな冗談だったし、学校に本当に僕と話したいと思っている人が一人でもいると期待した僕が、愚かだったのだ。

 

僕はゆっくりと息を吐き出し、立ち上がった。カバンを肩にしっかりとかけ直し、背後に残されたベンチを二度と見ないようにしながら、出口へと歩き始めた。

 

すると、本館の右側の最初の角を曲がったところで、何か金属製の物体に激しくぶつかってしまった。

 

その衝撃で、僕は一歩後ずさった。

 

「あっ……!」

 

何にぶつかったのか確認しようと、すぐに顔を上げた。

 

それは女性のAPAだった。

 

一瞬、僕はその場に立ち尽くしてしまった。それから、自分の全身で彼女にぶつかってしまったことを思い出し、軽く前かがみになった。

 

『す、すみません! 大丈夫……?』

 

「えっ?」

 

APAから再生された声を聞いて、その音が少し歪んでいて、奇妙に聞こえることに気づいた。

 

僕はその頭頂部を見上げ、そこに投影されているユーザー名を探した。

 

何もなかった。

 

待ち時間に溜まっていた疲れが、一気に消え去るのを感じた。

 

「だ、大丈夫。あれくらいじゃ全然平気だよ! 君が僕にメールを送ってくれた人……だよね?」

 

APAは微動だにしなかった。

 

数秒間、何の返事もなかった。

 

名前がなく、声も歪んでいたため、相手が誰なのかは分からなかったが、会ったばかりなのに無理に詰め寄るのも気が引けた。

 

やがて、彼女は答えた。

 

『うん……』

 

その一言だけで、僕の心臓は高鳴った。

 

本当に来てくれたのだ。

 

冗談のために1時間以上も待っていたわけではなかった。少なくとも、そう信じたいと思った。

 

その短いやり取りの後、僕たちは二人で大きな木の真下まで歩いた。僕はさっきまで待っていた場所に戻り、彼女の前に立ち止まった。

 

二人とも座らなかった。

 

僕たちは向かい合ったまま立ち尽くし、どう切り出せばいいのか分からなかった。

 

……

 

……

 

その場に漂う沈黙は、学校の中で僕が慣れ親しんでいたものとは違っていた。

 

クラスメートが、僕が話しかけようとしても無視してしまう時に生まれる、あの空虚な沈黙とは違っていた。

 

この沈黙は居心地が悪く、もどかしいものだった。まるで、互いに相手が先に勇気を振り絞って何かを言うのを待っているかのようだった。

 

さあ! 話さなきゃ!

 

こんなに長く待ったのに、まさかこのチャンスを逃すつもりなのか? いつものように、学校の他のクラスメートと話すのと同じように、彼女と会話すればいいだけのことだ。

 

いつもと違う必要なんてなかった。

 

でも、なぜか、違うような気がしていた。

 

口を開く前に、僕は唾を飲み込んだ。

 

「あ、あの……聞きたいんだけど……どうしてあのメールを送って、ここに呼び出したの?」

 

僕がようやく話しかけたことに気づくと、彼女はほぼ即座に答えた。

 

『わ、私……ずいぶん前から……あなたのことをずっと見ていたの……』

 

顔に熱が一気に上ってくるのを感じた。

 

ほぼ本能的に視線をそらし、ベンチを取り囲む花々へと向けた。

 

あの言葉をどう解釈すべきか分からなかったが、僕の心はすでに勝手に解釈を始めていた。

 

再び、僕たちの間に沈黙が降りた。

 

今度は、どちらからもその沈黙を破る術が見当たらないようだった。

 

『市川さん……』

 

自分の名字を聞いて、僕は少し視線を上げた。

 

その少女のAPAは、歪んだ声で恥ずかしそうに話し続けた。

 

『実は……今まで、誰に対してもこんな気持ちになったことはなかったの。あなたを見るたびに、胸が痛むような気がして、心臓が激しく鼓動し続けてしまうの』

 

僕は口を開いたが、言葉は出てこなかった。

 

突然、背後から強い風が吹き荒れた。

 

大きな木の枝が揺れ、その葉がまるで雨粒のように僕たちの周りに舞い落ち始めた。

 

それと同時に、本館の側面から月明かりが差し込み、その少女のAPAを美しく包み込んだ。

 

数秒の間、僕は機械を見ていることを忘れてしまった。

 

月明かり、落ち葉、そして木の下でじっと佇む彼女の姿――それはまるで映画の一場面のようだった。

 

何が起きているのか完全に理解する間もなく、その光景は僕の目に焼き付いた。

 

彼女の本当の顔は知らなかったが、その瞬間、僕はすっかり魅了されてしまった。

 

『あなたがクラスメートたちや、私にまで話しかけようと近づいてくる姿を初めて見た日から、あなたのことが気になっていました……それが、学校中であなただけがAPAを使っていないからなのか、それとも、いつも優しい笑顔を絶やさずに他人に接するあなたの態度のせいなのか、私には分かりません』

 

耳に届いた言葉が信じられなかった。

 

その言葉の一つひとつが、彼女のAPAの歪んだ声を通じて僕に届いていた。それでも、その言葉の向こうには、僕が思っていたよりもずっと長い間、僕を見ていた誰かがいるのだと感じた。

 

誰かが、僕が他人に近づこうとする姿に気づいてくれていたのだ。

 

誰かが、僕が拒絶された数々の場面をすべて見ていて、僕を厄介者や変わり者だと見なすのではなく、僕の中に称賛すべき何かを見出していたのだ。

 

そのことに、これは本当に起きているのかと何度も自問せずにはいられなかった。

 

『あるいは、いつも他人に拒絶されながらも、決して諦めずに挑戦し続けているからかもしれない。だからこそ……私はそう思うんだけど……』

 

彼女の声は途切れた。

 

彼女のAPAの金属製の指が、ゆっくりと内側へ握り込まれた。同時に、彼女の声にかすかにあった震えが一瞬消え、声は完全に平板で、読み取りにくいものになった。

 

それはほんの一瞬のことだった。

 

あまりにも一瞬だったので、僕はそれが単に歪みのまた別の影響に過ぎないのだと思った。

 

風は僕たちの周りの葉を揺らし続けていたが、僕の鼓動の音にかき消されて、その音はほとんど聞こえなかった。

 

今、この場所で、本当に誰かが……

 

『あなたのことが好きです』

 

「……!」

 

誰かが、僕への想いを告白したばかりだった。

 

僕はどうすればいいのか分からず、ただ彼女を見つめていた。

 

誰かにそんなことを言われるのはどんな感じだろうと、何度も想像していた。

 

叔母のヒカルも、木の下や、誰もいない教室、あるいは夕暮れ時の告白について話してくれたことがあった。

 

でも、まさか自分にもそんなことが起こるなんて思ってもみなかった。

 

胸の奥に広がるこの奇妙な感覚は何だろう?

 

彼女のAPAから流れてきた最後の言葉を聞き終えると、僕は右手を胸に強く押し当てた。

 

心臓が激しく鼓動していて、隠そうとしても隠せないほどだった。

 

どう反応すべきか、まったく考えがまとまらなかった。彼女に返事をするための適切な言葉も見つからなかった。

 

頭の中は完全に真っ白になっていた。

 

その時、ヒカル叔母がよく話してくれた数ある物語の一つが、ふと脳裏をよぎった。

 

その物語では、二人が勇気を振り絞って想いを伝え合い、一瞬だけ、孤独から抜け出していた。

 

気づく間もなく、小さな涙が僕の右の頬を伝い始めた。

 

その少女のAPAは即座に反応した。

 

『大丈夫!? 何か言っちゃった!?』

 

「……え?」

 

僕は頬に手を当て、指先に湿り気を感じた。泣いていることさえ気づいていなかった。

 

「ち、違う! むしろ……信じられないくらい幸せなんだ」

 

『そ、それってつまり……』

 

彼女の声に込められた期待に、僕は視線を伏せた。

 

彼女に返事をしなければならなかった。僕をここに呼び出し、想いを打ち明けるために、あれほど勇気を振り絞ってくれたのだから、黙ってはいられない。

 

しかし、彼女がきっと聞きたがっているであろう言葉も、口にすることはできなかった。

 

落ち葉で覆われた芝生を見つめながら、数秒間、思考を整理した。

 

深く息を吸い込み、それからゆっくりと息を吐き出した。

 

準備ができたと感じたとき、僕は少し顔を上げ、最も誠実な答えを彼女に伝えた。

 

「あれだけ話してくれたあとで、こんなことを言うのは少し自分勝手かもしれない。でも、今はまだ、君の気持ちに応えることはできない」

 

『な、なぜ……?』

 

彼女の問いかけはあまりにも突然で、胸に軽い圧迫感を覚えた。

 

彼女を拒絶したくはなかった。ましてや、誰かが僕のためにそんな想いを抱いてくれたと知った後ではなおさらだ。

 

だが、彼女のことを何も知らないまま受け入れるのも、正しいことではない。

 

「僕は本当の君を知らないんだ……」

 

僕の言葉を聞いて、彼女は完全に黙り込んでしまった。

 

「なぜ名前を隠しているのか、僕には分からない。この場所で僕に会おうと勇気を振り絞り、心を開いてくれたというのに、わざわざ声まで変えているなんて」

 

そう話しながら、僕はAPAの無表情な顔を見つめた。

 

そこには何の表情も見えなかった。

 

その姿の向こうにいる少女が、悲しんでいるのか、恥ずかしがっているのか、それとも名乗り出たことを後悔しているのか、僕には分からなかった。

 

それこそが、僕が彼女に返事をできない理由だった。

 

僕は視線を広大な夜空へと向けた。

 

「この二年間、僕はこの国の人々も、彼らがAPAに抱く執着も理解できない。APAを使うことで、みんなは人生で多くの素晴らしい瞬間を体験する機会を自ら奪ってしまっている……それは、APAを使っていない時にしか味わえない瞬間なんだ」

 

僕は再び、その少女のAPAの顔へと素早く視線を向けた。

 

僕の言葉が、断固とした拒絶のように聞こえてほしくなかった。もし彼女が本当に長い間、僕を観察していたのなら、僕も彼女を知る機会を持ちたかった。

 

でも、あの金属の像を通してではない。

 

僕はできる限り誠実な笑顔を見せ、決意を込めて彼女に向かって手を差し伸べた。

 

「APAを脇に置いて、友達になろう! もっとお互いのことを知ろう! 君が一番好きなもの、一番嫌いなもの、趣味や好きなことが何なのか知りたい……一緒に青春を過ごしたいんだ! そうして、そのとき初めて……君の気持ちに、はっきり答えられるんだ」

 

僕は手を差し出したまま、彼女の反応を待った。

 

彼女は手を握り返してくれるかもしれないと思った。あるいは、彼女のAPAがうなずいたり、少し照れくさそうに返事をしたりするかもしれない。僕が大げさに話しすぎてしまったことに、彼女が笑ってしまうかもしれないとさえ想像した。

 

しかし、そんなことは何も起こらなかった。

 

激しい風が収まった。

 

大きな木の葉が舞い落ちるのも止まり、月明かりが徐々に薄れていった。

 

僕の目に焼き付いていたあの光景は、まるで最初から存在しなかったかのように、あっという間に消え去った。

 

『……わ、私、もうどうすればいいのか分からない……彼女を助けられるのは、あなただけなの』

 

「えっ?」

 

僕の手は、二人の間に差し出したままだった。

 

突然、息が喉につかえた。

 

あの少女の声は相変わらず歪んでいたが、一言一言が震えているのが感じられた。

 

それは、想いを打ち明けた直後に予想外の返答を受けた人の声には聞こえなかった。

 

まるで、APAの向こう側にいる人が、今にも崩れ落ちそうになっているかのようだった。

 

それに、彼女は「彼女を助ける」と言った。

 

「僕を助ける」ではない。

 

どういう意味なのか尋ねようとしたが、そうする間もなく、彼女のAPAが最後の言葉を再生した。

 

『今週の土曜日、学校の正門で、正午ちょうど! そこで、本当の私を見せてあげるわ』

 

その言葉を再生した直後、そのAPAは接続を切った。

 

動作を示すランプが消え、その金属製の体は一瞬、動かなくなった。

 

その後、APAは踵を返し、学校の本館の陰に消えるまで遠ざかっていった。

 

僕はそれを止めようとはしなかった。

 

僕は木の下に立ち尽くし、まだ手を前に伸ばしたまま、今何が起きたのか理解できずにいた。

 

その場は再び完全な静寂に包まれた。

 

それは、僕が到着したとき、誰も待っていなかった場所で感じたのと同じ静寂だった。しかし、今は何かが違うように感じられた。

 

もっと重苦しい。

 

なぜなら、今回は確かに誰かが現れたからだ。

 

それでもなお、彼女の言葉を聞いた後、僕は以前よりもずっと何も分かっていないような気がした。

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