第一章 9 『私、その人になりたかった』
僕は数分間、ペアワークに関することをすべて気にしないことにした。
その瞬間、そのメールに書かれていた言葉が頭から離れなかった。
何事もなかったかのように、ノートパソコンの画面を見ようとした。
しかし、メールの言葉がまるで画面を何度も覆い隠すかのように、僕の目の前に浮かび続けていた。
そのメールは開いていなかったのに、それでも文字が見えていた。
数分間、そのことを考え続けていたが、ふと周囲を見回すと、他の学生たちは皆、すでにそれぞれのパートナーと並んで座っていたことに気づいた。
気づかないうちに、教室は整然としていた。
机は隣り合わせに並べられ、APAたちは向かい合って、スリープモードに入っていた。
その時、僕のペアの相手がまだ話しかけに来ていないことに気づいた。
僕はしばらく、机に手を置いてじっと立ち止まり、彼女が単に遅れているだけなのか、それともいつものように、他人と協力するという単純なことを僕だけが深刻に受け止めすぎているのか、見極めようとした。
もう一度教室を見渡すと、ちょうど真ん中に、たった一台のAPAが見えた。
その向かいには誰も座っていなかった。
ただそこに、じっと動かないで、誰かが近づいてくるのを待っているかのように。
あれが僕のペアの相手のAPAに違いない、と僕は結論づけた。
そして、両手で机を支えながら、その方向へと歩いていった。
APAの頭上に浮かぶホログラムに「星野アイ」という名前が表示されているのを見て、僕は喉を鳴らし、声をかけた。
「あの……アイさん? 僕は、この授業で割り当てられた課題を一緒に進めるパートナーに選ばれた者です。二人でペアワークをするのは、これが初めてですよね?」
緊張からか、あるいは落ち着きからか、雰囲気を重くしないよう、僕はほのかな笑みを浮かべた。
彼女のAPAからは何の反応もなかった。
数秒間待ってみた。
彼女が向こう側で僕の声を聞いているのか、それとも単にAPAに接続したまま気に留めていないだけなのか、僕にはわからなかった。
とはいえ、ただそこに立ち尽くして何もせずにいると、空気に漂い始めたあの気まずい雰囲気がさらに悪化するだけだった。
数秒間呼びかけ続けても彼女からの返答がなかったので、これ以上時間を無駄にしたくなく、自分の机を彼女の机の隣に寄せた。
「もう10分くらい前に課題を始めていたはずなんだけど……質問はどう分担しようか?」
僕は少し笑みを浮かべて尋ねた。
彼女のAPAは答えてくれなかった。
「どの問題なら答えやすい?」
彼女のAPAは黙り込んだ。
課題のファイルは僕の画面に開いたまま、誰かが何かを書くのを待っていた。
問題たちはそこに、まるで時間が僕たちに不利に流れていないかのように、一つずつ並んでいた。
「僕が1番から8番まで、それに15番と16番を担当して、残りの質問はあなたが担当するのはどう?」
僕は再びAPAの顔を見たが、その表情から何かを読み取ろうとしても無駄だと分かっていた。
「ア、アイさん……聞いてる?」
『りょ、了解……』
やっとだ!
辛かったけれど、彼女はようやく僕に答えてくれたのだ。
「パ、パーフェクト!」
僕の声は、実際の気分よりも活気のあるものになっていた。
そう答えなければ、場の空気がさらに気まずくなってしまったからかもしれない。
役割分担が決まると、アイさんと僕は教室の静寂に溶け込んでいった。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ペアワークを始めてからこの瞬間まで、経過した時間はせいぜい20分ほどだった。
脳の半分は自分の担当部分を終わらせることに集中しようとしていたが、もう半分はあのメールに関することを考えずにはいられなかった。
質問を読み、
メールに戻り、
一文を書き、
またメールに戻り、
書いたものを消した。それが意味をなしているかどうかも確信が持てなかったからだ。
指をキーボードの上に置いたが、どのキーも押さなかった。
一瞬、ノートパソコンの画面をただ見つめていた。まるで、十分に長い間黙っていれば、答えが自ずと現れるかのように。
そして、アイさんのAPAの顔の方へ視線を上げた。
驚いたことに、そのAPAは僕を見つめていた。
「な、何か悪いことでもあったの、アイさん……!?」
『え、えっ? な、何でもないよ! ただ……なんでそんな心配そうな顔でパソコンの画面を見てるのか不思議で……』
その言葉に僕は不意を突かれた。
自分の考えに深く没頭しすぎていたせいで、自分の表情に気づいてさえいなかったのだ。
どうやら、僕の心配そうな様子は、自分が思っていた以上に明らかだったようだ。
まるで悪いことをしているところを見つかったかのように、僕はすぐに背筋を伸ばし、ぎこちなく画面から視線を外した。
「あっ……! す、すみません! ちょっと考え事に夢中になってしまって……」
僕は気まずそうに笑った。
「気にしないで。僕は自分の分の作業を続けるから!」
僕は反射的にそう口走った。
しかし、言葉を終えるやいなや、自分の返事が意図したほど落ち着いて聞こえなかったことに気づいた。
再び、僕たちは二人とも沈黙してしまった。
しかし、最も驚いたのは、彼女がまだAPAに接続したままで、スリープモードに入っていなかったことだ。
一体何が起きているんだ?
頭の中はごちゃごちゃだった。
あの謎のメールに続き、今度はこれだ。
考えを整理しようとしていると、ある疑問がほぼ瞬時に頭をよぎった。
「アイさんにも、もう一度誘ってみるべきだろうか……?」
以前にも何度か誘ったことがあるのは、ほぼ間違いなかった。
実際、はっきりと思い出せるものではなかった。何度も断られたせいで、その時の記憶が頭の中でごちゃ混ぜになってしまっていたからだ。
しかし……
「カナエさんにしたように、もう一度聞いてみたら、彼女は不快に思うだろうか……?」
そう想像しただけで、胸が締め付けられるような不安感が押し寄せてきた。
彼女を困らせたくはなかったが、黙って見過ごすこともできなかった。
そして、その矛盾こそが、おそらく自分が最も嫌っている自分の一面だった。
だが、もう何も気にしていられなかった。
「アイさん、その……」
声は思ったより小さくなってしまった。
一瞬、パソコンのキーボードに指を少し強く押し当てた。
「この授業が終わった後、二回目の休み時間に、少し時間ある?」
彼女のAPAの目をじっと見ようとしたが、すぐに視線を横へそらしてしまった。
しつこく聞こえたくなかった。
ほんの数分だけでもいいから、彼女と話したかっただけだ。
「二人きりで、ほんの少しだけでもいいから、話せたらいいんだけど……」
「もうあなたにはうんざりよ」
ふと、カナエさんが僕に言った言葉を思い出した。
まるでその光景が目の前で再び繰り広げられているかのように、不快なほど鮮明に思い出した。
言い終える前に、僕の声は力なく消えてしまった。
一瞬、黙ってしまおうかと思った。
アイさんに同じような返事をされる前に、ここで切り上げたほうが良かったのかもしれない。
それでも、僕は言葉を続けた。
「もう分かってるはずだけど……」
僕は少しぎこちない、小さな笑みを浮かべた。
「クラスのみんなにいつも聞いてるんだけど……」
声に出して言ってみると、それがどれほど情けない響きになるか気づいた。
まるで、隠しておきたかったことを認めてしまったかのようだった。
だから、沈黙があまりにも気まずくなる前に、急いで別の選択肢を付け加えた。
「ひ、ひょっとしたら、お昼の時間の方が都合がいいかな?」
そう言うと、僕は唇を強く噛みしめた。
言いたくなかった。
というか、それがどれほど相手を煩わせることになるか、自分でも分かっていることを認めたくなかったのだ。
だって、たとえ普通の誘いをしているふりをしようとしても、心の奥底ではそうではないと分かっていたから。
僕にとって、その言葉にはいつも何か別の意味が込められていた。
ある種の切実な願い。
何度断られても、何度も何度も繰り返される、小さくて馬鹿げた希望。
だから、アイさんが答える前に、僕は続けた。
「以前にもこういう誘いをしたことはよく分かっているし、たぶん、いつも同じことを聞かされてうんざりしているだろう……もし、ペアワークが終わった後に、もう話しかけないでほしいというなら、それは十分に理解するよ……」
そう言うと、僕は少し視線を落とした。
口にしたくなかった言葉だった。
だが、なぜか、そうしなければならない気がした。
最初から彼女に選択肢を残しておいたほうがよかったのだ。
適切な言葉を探す手間をかけずに、僕を断るための簡単な方法として。
もし僕自身がその可能性を提示しておけば、いざその時が来たときの衝撃は少し和らぐかもしれない。
そう信じたいと思った。
『ずっと疑問に思っていたんだけど……あなたがあんなにいろいろやっている理由は何なの? なぜわざわざ私たち一人ひとりに話しかけてくれるの? いつも断られているのに、なぜ何度も何度も誘い続けてくれるの? 何があなたをそこまで突き動かしているの……?』
アイさんの言葉に、僕はどう反応していいかわからなくなった。
これまでに、クラスメートが立ち止まって、そんなことを尋ねてきたことは一度もなかった。
普通なら、断られたり、無視されたり、あるいは義務感からか、短い言葉で返されるのが常だった。
中には、そんな手間すらかけない者もいた。
ただ黙り込むだけで、僕はその沈黙を答えだと受け止めていた。
しかし、アイさんはそうしなかった。
すぐに僕を拒絶しなかった。
距離を置く代わりに、理由を尋ねてきた。
そして、なぜかその単純な問いかけは、どんな拒絶よりも僕を無防備な気持ちにさせた。
「なんだか変な気分だ……学校で、誰かにそんな質問をされたのはこれが初めてなんだ」
僕は右の頬をかきながら、アイさんにそう言った。
笑顔を添えようとしたが、思い通りに見えたかどうかは自信がなかった。
声に出して言うのは恥ずかしかった。
言葉にすると、自分の願いはあまりにも単純で、まるで子供じみているように思えた。
だから、少し深呼吸をしてから、話を続けた。
「学生生活って、ちょっと退屈じゃない……? 毎朝起きて、APAを接続して学校に出席するだけ。授業中は、担当の先生が説明する内容を聞くだけで、その後はたいてい個人で課題に取り組む。その日の授業が終わると、APAの接続を切って、学生生活の間ずっと同じことを繰り返している。ここでは、たとえ全員が同じ教室を共有していても、誰も他の人と話すことに興味を持っていない」
そう話しながら、僕は一瞬、周囲を見回した。
みんなそこにいた。
それなのに、まるで誰も本当にそこにいないかのようだった。
互いの目を見る必要のない生徒たちで埋め尽くされた教室。
それから、僕の話を聞いた彼女がどんな反応を示すか少し不安ではあったが、僕は彼女に満面の笑みを見せた。
「僕が望んでいるのは、たくさんの人と話をして、たくさんの友達を作る機会を得て、その人たちと一緒に素敵な思い出を作ることだけなんだ。そうすれば、この退屈な学生生活を根本から変えられるはずだ。そうじゃないかな?」
僕が彼女の顔を見つめ続けている間、アイさんのAPAは沈黙を保っていた。
向こう側で彼女がどんな表情をしているのか、僕にはわからなかった。
それが、APAを通じて話すことの最大の難点だった。
彼女の声は聞こえるし、目の前に人影も見えているのに、自分の言葉が本当に彼女に届いているのかどうかは分からなかった。
彼女が僕を笑っているのかも分からなかった。
気まずがっているのかも。
あるいは、単にどう返事をすればいいのか分からないだけなのかも。
『今なら、あなたが毎日あんな風に振る舞う理由が、もっとよく分かる気がする……本当に心優しい人なんだね、市川くん。そう思うと、すごく安心するわ』
その瞬間、僕の体は凍りついた。
どう説明すればいいのかわからなかったが、彼女のAPAの顔には何の表情も浮かんでいなかったにもかかわらず、あの言葉を口にしたとき、アイさんが向こう側で微笑んでいるような気がしたのだ。
それは奇妙な感覚だった。
久しぶりに、誰かが僕を厄介者扱いしていないように見えた。
胸のつかえが少し和らいだ。
でも、あまり期待しすぎてはいけないと分かってはいたけれど、その小さな希望が再び芽生えるには十分だった。
『私、その人になりたかった。でも、私には無理みたい……』
「え?」
考えるより先に、その言葉が口をついて出てしまった。
理解できなかった。
アイさんの言葉は優しいものだった。
今まで受けたどんな返事よりも、ずっと優しいものだった。
だが、それゆえに、その衝撃が襲ってくるまでには少し時間がかかった。
まず、戸惑いが訪れた。
そして、空虚感が。
『これからも自分の分の作業は続けるわ』
「ちょっと待って!」
ピッ――
僕が何かを言い加える前に、切断音が空気を切り裂いた。
僕はアイさんのAPAを見つめ続けた。
それはまだそこにあった。
でも、彼女はいなくなっていた。
数秒の間、僕は手も、視線も、体さえも動かさなかった。
ただ、その動かぬAPAの前に座り込み、まだ何か言わなければならないことがあるような気がしながらも、それが何なのかは分からなかった。
授業の残りの間、アイさんは一度もAPAに接続し直さなかった。
ペアワークの提出まであと10分となったとき、彼女は学校の内部チャットを通じて自分の分を僕に送ってきた。
それだけだった。
説明も何もない。
別れの言葉もない。
僕を釘付けにしたあの言葉の続きさえもなかった。




