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第27話「シルファ・ストームベルト」


 シルファ・ストームベルトにはたった一人の家族である妹『サラ・ストームベルト』がいた。


 肩より少し長い白髪のセミロングで、さらさらとしたその髪の毛は絹のように滑らかであった。

 透明感のある落ち着いたブルーの瞳をした彼女は誰もが目を奪われた。


 そんな妹と共にペタ領で生まれたシルファは妹を大事に、とても大事に育てた。それはもう心配しすぎなくらいに。


 ある日、平和に暮らしていた兄妹は〈ペタ〉に招待を受けた。


「お兄様! わたくしたち〈ペタ〉様に招待されたわ! これって名誉なことよね!」


「あぁ、そうだねサラ」


 なんの疑いもなく城に向かうふたり。


「やぁ、やぁ! よく来てくれたねぇ! 君たちを私は歓迎するよ! さぁ、さぁ、座りたまえ……君たちにご馳走を用意させてもらったよ……」


 城内にて〈ペタ〉は大層に、そして大袈裟に両手を上げて、2人をもてなしてくれた。


 その晩に食べた食事は今まで食べたことがないくらい美味なものであった。


 ふたりは普段子供ふたりで暮らしているため、稼ぎが少なく贅沢はできない都合で、質素な食事をしていたのだ。


 舌が唸るほど美味な食事を取ると、夜も更けてきたため泊まっていくよう促され、寝室に通された。


 自分たちがここまでのもてなしを受けていいものか疑問に思う部分もあったが、猛烈な眠気に襲われたふたりはふかふかのベッドにてぐっすりと眠りに着いた。


 深夜、シルファはふと目を覚ました。

 隣に寝ていたはずの妹がいないことに気づく。


「……! サラ?」


 ベッドから這い出て、サラを探し始めるシルファ。

 いくら城内を探しても見つからない。


 しかしひとつだけ異様な雰囲気を漂わせている場所を発見した。


 地下。


 ゴクリと息を飲むシルファ。


 そこには近づいてはいけないという気を感じていたが、シルファは意を決して入ることにした。


 ギィ、と不安を煽る音を上げて扉は開け放たれる。


 その先にはランタンの微かな光と、(いざ)うようなな漆黒の闇がどこまでも広がっていた。


 微かな光だけを頼りに恐る恐る進むシルファ。


 ――ガシャン。


 前方から響く金属音。何かの気配。


「お、ニぃ……ちゃン……」


 サラの声が静寂の中に微かに響く。


「サラ! サラどこだ!」


 シルファは声を張り上げ叫ぶ。


「こ、こ……」


 シルファは声のする方へ視線を向けると、暗闇の中に微かに見える、檻の中に『何か』がいた。


「ちャん……ォにぃ……」

 

『何か』は微かに妹の声でシルファを呼ぶ。


「サ、ラ……?」


 サラは異様な『何か』に変貌していた。


「おやおやおやおやおや! 見られてしまいましたか! ようこそ私の実験場へ! しかし君は幸運だ」


 後方より〈ペタ〉の大層な声が響き渡る。


「〈ペタ〉様! サラが!」


 すると〈ペタ〉はシルファの言葉を無視し、頭をとてつもない力で鷲掴みされる。


「う……ぁ……」


「君の妹さんは偉大な実験の被験者に選ばれました! 次は君にも《神位》を授けよう!」


「か、む……い?」


 ――瞬間


 頭を通じて身体に力がみなぎるような感覚が流れ込んでくる。いままで味わったことがない感覚に襲われた。


 しばらくすると手は頭から離される。


 力がみなぎってくるシルファは自身の手に翠色の剣が握られていることに気づいた。


 シルファは知らないが、シルファの《神位》はすでに開放段階にまで至っていた。


 シルファは〈ペタ〉にその剣を向けた。明確な殺意を持って。なぜならサラをこんな風にしたのは、こいつだとシルファは思ったからだ。


「おやおや、私に剣を向けますか。……気が変わりました。君は私の〈神子〉になりなさい。断れば妹の命はどうなるかわかりますね?」


 シルファ・ストームベルトはこの時より〈ペタ〉の〈神子〉に選ばれた。妹だった『何か』を身代わりに取られて。


 

 ――――――



 ――荒野にて


 ロゼッタ・マリィは焦っていた。


 大切な、失うことの許されないルシアが〈ペタ〉の手に渡ったからだ。


 シルファ・ストームベルトの裏切りは全くの予想外であった。


 ルシアくんを守れなかったのは私の失態。


「許さない。ワタシのルシアくんに手を出すなんて」


 しかしペタ領へ徒歩へ向かうが、〈メタ〉が死んでしまった今、《神位》がいつまで使用できるかわからない。


 《麻痺》能力は使えてあと2回といったところだろう。


 不幸中の幸いで身体能力強化は健在だ。


 馬車に比べればやや時間が掛かるが、このまま走り込めばすぐペタ領へは辿り着くだろう。


「待ってて、ルシアくん。必ずワタシが助けるから」


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