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第25話「果たすべき復讐」


 〈メタ〉の背後に人影が現れる。


 その正体はロゼッタ・マリィだ。


 ロゼッタが短剣を持ち、攻撃を仕掛けようとしている。その刃は今にも〈メタ〉に届きそうな勢いだ。


「――ッ! 貴様ァ!」


 〈メタ〉は左手に光の槍を生成すると、ロゼッタの腹部を貫いた。


「――グフッ」


 腹部を貫かれると同時にロゼッタは口から血が溢れ出す。


 しかし、それを無視するように短剣を〈メタ〉に突き刺した。


「――おのれ! 【No.1】の出来損ないの娘が!」


 ロゼッタはそのまま光の槍ごと吹き飛ばされる。


 吹き飛ばされ、壁に打ち付けられるロゼッタ。


「ロゼッタァ!」


「ロゼッタ、大丈夫?!」


「わ、ワタシは……大丈夫……《神位》で、すぐ治るから」


「小賢しいことをして」


 払うかのように刺さっているロゼッタの短剣を抜く〈メタ〉。


 再度こちらへ向き直り、光の剣を振り上げる。


 迫り来る光の刃。


 ――刹那。


 光の剣を振り上げたまま硬直する〈メタ〉。


「――ッ! 動けない……だと……!?」


「……効いた……ワタシの《神位》の……能力は、《麻痺》……」


 ロゼッタは苦しそうに自らの《神位》の能力を告げる。


「――出来損ないの娘が! さっさと殺しておくべきだった!」


「ルシア! 助けに来たよ!」


 シルは慎重に光の槍を1本ずつ抜いていく。


「…………ありがとう、シル」


「どういたしまして!」


「――小賢しい!」


 〈メタ〉は一喝すると、《麻痺》による硬直が解けたようで光の剣を再度生成し、こちらに歩き出してくる。


「シル! 逃げろ!」


 シルに逃げるように言う。


「ごめん! 邪魔にならないように引くよ!」


 邪魔にならないように待避をするシル。


 退避するシルを横目に、自身の傷の状況を確認する。

 四肢の傷は治りかけているが、未だ完治はしていない。


 いま攻撃をされると防げるか怪しい状況。


「――今度こそ終わりだ」


 再度光の剣を振り上げ、こちらの命を刈り取ろうとする。


 ――瞬間。

 

 俺の後方より光の槍が飛んでくる。


 それを光の剣で弾く〈メタ〉。


「誰だ、邪魔をするのは!」


「〈メタ〉様、申し訳ございません。アタシ、その人に貸しがあるんで、返さないといけないんですよー」


 入口に立ち、気怠げな口調で告げる人物。ファルだ。


「【No.2】、裏切るというのか!」


「いやー、裏切るというより、この世界に嫌気が差して来てるだけですねー」


 頭をぽりぽりと掻きつつ、気怠げに喋るファル。


「この反逆者め……!」


「心外ですねー」


「ファル!? 戻ってきたの!?」


 シルは驚いたようにファルを見やる。


「まぁ、貸しがあるんで、これでチャラですよね」


 アハハと気怠げに笑うファル。


 俺はファルが作り上げてくれた隙を見逃さなかった。


 大剣を下段より振り上げる。


 〈メタ〉は光の剣を生成するが、それを破り、綺麗な軌跡を辿る剣先は〈メタ〉の身体を斬りつけた。


 切り口からは復讐の黒炎が溢れ出している。


「――クゥッ!」

 

 〈メタ〉は顔が歪みつつ、その場で膝をついた。


 初めて〈メタ〉は膝をついた。


 形成が逆転する。


 俺は〈メタ〉に対して大剣を突きつける。


「お前の終わりだ。〈メタ〉」


「……我の終わり? ふざけたことを……終わってたまるものか。我の正義が貴様らになぞに負けてたまるか!」


 その瞬間、〈メタ〉は立ち上がり、周囲に光の槍と剣を無数に生成し始めた。


 その生成される殺意は、意志を持つように俺の方へ向かって放たれた。


 大剣と手斧で防いで行くが、全ては防ぎきれず何本か弾けず、次々と身体に刺さっていく。


「――ゴフッ!」


 俺の身体には何本もの光の槍や、剣が突き刺さっている。


 その中の1本の槍が俺の心臓を貫いていた。


「ルシア……くん……!」


 ロゼッタの声が聞こえるが、やけに遠くに聞こえる。


 大丈夫。


 そう伝えたいが、声が上手く出ない。


 ――『嗚呼……待ちたまえ……何か困ったことがあれば、これを使うといい……!』


 そう言っていた〈ペタ〉の言葉を走馬灯のように頭に浮かぶ。


 確か《神位》を強化する薬だったか。


 胡散臭い、信ぴょう性のない薬だ。だが、それにでも縋りたいほどの状況。


 俺はいま出せる力を振り絞って、薬の瓶を開け、中の液体を口に放り込む。


 ――ドクン。


 心臓の高鳴りを感じる。

 身体の底から力がみなぎってくる。


 俺はそのまま刺さっている槍や、剣を引き抜く。


 普段とは比にならない程の《神位》の回復力の向上を感じる。


 いまなら誰にでも負けないという全能感に包まれる。


「――貴様、まだ我に立ち向かってくるか!」


「――いまならお前を切り刻むこともできそうだ」


 俺は両の手に大剣と、手斧を生成し、黒炎を纏わせる。


 放流世界は〈メタ〉の世界をどんどんと侵食していく。


「――死ね」


「――ッ!」


 俺は一言つぶやき、剣を振るう。


 ――ボトッ。


 気づけば〈メタ〉の身体は真っ二つに両断されていた。


 〈メタ〉の上半身は床に落ちた。


「……我は〈ゼロ〉の使者なんぞに敗れてしまうのか。我の正義とは……理想とは……なんだったのか……」


「お前はあまりにも人を殺しすぎた。その報いを受けるときだ」

 

「フッ、貴様に……忠告してやろう……〈ゼロ〉に気をつけろ……」


 そう言い残すと〈メタ〉は絶命した。


 〈メタ〉の死体は砂になり、さらさらと空中に散っていく。


 復讐を果たしたからか、俺の心臓の鼓動が早くなっていくのを感じ、謎の高揚感に襲われる。


 湧き上がるように高揚感は止まらず、全能感すら感じる。


 なんだ、なんなんだ。何かがおかしい。だがすべてが気持ちいい。全てが俺のものだ。


 ――刹那。


 背後からの刃物による刺突。


 胸からは激しく血飛沫をあげ、綺麗な華を咲かせている。


「ルシア、ごめんね」


「シ……ル……?」


 背後を見やるとシルの謝罪の声と共に、シルはそこにいた。


 俺はその場に倒れる。


 シルがなぜ……?


 なぜシルが俺の胸を刺した。


「ヌボー、ルシアを連れて行ってくれ」


 扉からは芥徒に殺されたはずのヌボーが現れた。


「……」


「さぁ、行こうかルシア。〈ペタ〉様のところに」


 いつも通りの爽やかな笑顔を浮かべるシルが最後に視界にうつっていた。


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